企業と働く私たちは時代の流れと将来をいかに読むかが問われる
最近の株高は、政治状況が作り出した官製的な相場に近く、世界の情勢と政府の対応次第で大きく乱下降する恐れのある不安定な相場である。私たちが働く企業は、それらに翻弄される場合が多く、大きなうねりで浮き沈みが年々激しさを増す状況が増えている。
企業の危険な兆候は、大きな業界ほど見えにくく、業界の人間でも、悪い流れに飲み込まれる事も考えられる。リストラ・事業整理・倒産など私たちが考えなれない状況がすぐ目の前で起こる事が多くなり、明日は我が身である事は、働く私たちが一番理解している事である。
そんな状況を素早く判断できる指標が自社もしくは取引先などの決算書である。各業界ごとの決算の急所を見ながら、全体的にこの企業及び業界自体が危ういかを判断し、その働き方を柔軟に変化する必要がある。今回は代表的な10のセクターを通じて、どの面に危険な兆候があらわれ、どのように悪くなるかを簡単にまとめてみた。
抜本的な景気回復はまだ遠いですが、少しでもお役に立てればと考え、まとめを作成した次第である。
業種別 危険な兆候を見抜く決算書のポイント10のセクター
自社開発や他社買収を中止すれば研究開発費が大幅に減り、その分だけの利益は確実に跳ね上がるが、研究開発費は将来”売上高の先行指標”であり、製薬会社の生命線。将来会社の浮沈が掛かっている重要項目であるという。
銀行セクターの本来の実力は貸出業務たる”薄利多売”のビジネスモデル
預貸利鞘”1%”の銀行が100万円を取りはぐれた場合、帳簿上は100万円の損失が計上される。ただし、100万円の損失を貸出業務の利益によって1年間で取り戻そうとすれば、1億円の融資契約を獲得する必要が出てくる。
構造的に負債の多い企業の安定性を測るインタレストカバレッジレシオ(利息カバー率)が有効。毎期の収益範囲内で利払いが完了し元本返済時に相応な現金がある場合、銀行は何度でも融資契約を更新してくる。
一度成功した店舗で、フランチャイズを行い店舗数を急拡大させ増やし、規模で圧倒しても悪い評判が立てばあっという間にひっくり返るリスキーな面も持ち合わせる。低価格メニュー・フランチャイズなどで急成長した企業には注意が必要になるだろう。
百貨店セクターは構造的問題から軍資金を効率良く使えない息詰まりの業界
百貨店業界は典型的な衰退セクターであり、様々な百貨店は閉鎖や閉店などの廃業、M&Aによる買収や、グループ内の統廃合を経て超大手しか生き残れなかったわけである。デパートで買物をするありがたみは年々薄れてきている。
コンビニセクターは身近な買場でありながら飽和買収合併、熾烈な競争に陥っている
加盟店を増やす事は非常に重要なファクター。自社コンビニが地方を独占する事ほど安心はなく加盟店同士は競争していても本部には一定の営業総収入が上がってくる。加盟店からのカネを増やし続ける事で成否を決めてしまう。
ゼネコンセクターは特需と海外と在庫の回転率が成否を決める下り坂業界
建設業では着工した案件が完成工事高(売上高)として計上されるまでの速さを示す。建物の受注から引渡しまでの期間が短く、サクサクと売上を計上できれば棚卸資産回転率は高まる。儲けと効率性を重視する建設物とは何かと考えると一番効率が高いと思われるのが「高層マンション」である。
出版・新聞セクターは紙の新しい価値創出が出来ない典型的な下り坂業界
業界は長く新規参入が少なく、宅配制に守られ黒字経営が当たり前。黒字が当然の業界で、赤字転落となれば様子は違う。新聞広告はバブル期の89年にピークを迎え、1兆3000億円規模まで膨らみ、全国紙に1面ブチ抜き広告を掲載するには、1000万円でも足りなかった時代であった。
総合電機セクターは何でも手を出すという業態がアダとなり時代に逆行し退化する巨大組織
総合電機メーカー企業は長く多くの分野の事業を持つ事で、リスクヘッジを行い圧倒的な競争力を確保しながら、他社を寄せ付けない戦略で長く繁栄を謳歌してきた。現在「何でも手を出す総合電機という業態」はその巨大さゆえ衰退を招く事になった。
信販企業セクターは国内市場は頭打ち海外展開次第の綱渡りセクター
個人ローンについては、規制強化真っ最中である。若干の景気回復局面でカードの取扱高は伸びているが、国内は人口減などで成長余力はあまり望めない。目下積極的な業界再編が行われているが、独立系企業は少なくなり、銀行が信販会社を飲み込み、その業種を増やす動きが見られる。
参照文献:倒産した会社・倒産しない会社の決算書