起業したい知人と喫茶店で話した内容について
少し前に知人と話していたときのこと。その知人は、近い将来「起業したい」という野心溢れる人で、事業のネタを探しているらしい。
事業のネタを探すものではないと思うが、あれでもないこれでもないと、私の前でアイデアを出しては、意見を求めることが多く、半分聞き流しながら頷いていた。
知人曰く「最近、サブスクリプションビジネスとかシェアビジネスなんか流行っているけど、例えるとどんなの?」と簡単に聞いてくる。
ちょっとは勉強してこいよと思いながらも、当ブログで取り上げた「自分が使っているサービス」を例にビジネスモデルも合わせて話をした。
畳み掛けるように知人はこう聞いてきた「今後、大きく成長が起こりそうな分野を教えてほしい」とのこと。
大きな成長が見込まれる分野などは、多くの賢い人々がすでに研究済みで、あらかた予想は出ていて、今回取り上げる事例などは「当たり前じゃないか」と思われる賢明な人も多いだろう。
そう。今回は、知人に話した内容を軽くメモした程度なので、若干散漫な面があり、その場のノリで話した内容である。
個人的に言うと、目の前にある「当たり前の事柄」をいかに捉えるかが重要であり、今回は備忘録感覚でブログを書いている。
私の着眼点は簡単で、誰もが当たり前のように、毎日大量に生み出し消費する際 (時間や空間やお金やスキルも含め) に、その一部または全部が余り、処理出来ずにネックになっている所を有効活用することである。
人間の性とは、何かを生み出す事であり、さらに効率性を求め、それが過剰になって、大量に余らす (時間や空間やお金やスキルも含め) ものである。その面を探すと取り組みやすくなる。
質問の内容としては、今後、サブスクリプション 並びに シェアビジネスで「急成長が見込まれる分野」を教えてほしいという事なので、その面にフォーカスした「 3 つの領域」として話した内容を簡単に取り上げたい。
1. 毎日大量に生み出される デジタルデータ
スマートフォン並びに SNS の隆盛に伴い、誰でも情報発信者となれる時代が到来し、誰も彼もが、スマートフォン片手に写真を撮り続けている。
ネット通販を使い、クレジットカードで買い物をしたり、アプリで様々な用事をこなし、LINE や その他チャットサービスで、友人や知人などに連絡を取り合う。また企業では、仕事においてデジタルでデータを作り、毎日大量に生み出され、使用し保管される。
このように個人や企業が生み出す大量のデジタルデータを有効活用することで、新しい商機を生み出し、今後急成長が見込まれる分野でもある。
ビックデータを企業で活用する動きは目覚ましく、データを有効に活用しているわけだが、データの活用方法の大半が限定的な活用である。
また古くから、オンラインストレージ分野は、乱立状態となっており、Dropbox、Microsoft OneDrive、Google ドライブなど多数のサービスがある。ただこれらのサービスは「データの保管」が主としてあり、容量 (倉庫の大きさ) を長年競ってきた。
多くのIT系企業は、ユーザーがデータを生み出す事を前提に、ビジネスを推進している面があり、少子高齢化・人口減少の二正面問題を抱える日本では、デジタルデータを「特殊な取り扱い方」をもって、サービスを考えることで、高い成長性が得られる分野となる可能性を秘めている。
デジタル遺品については、今後、生産人口年齢層の人々が、老齢世代になった場合、深刻な社会問題を抱え、そのトラブルを解決するサービスが求められる。
例えば、デジタル遺品整理を専門に行う「マレリーク」では、デジタルエンディングノート「編みノート」というサービスを展開している。
「編みノート」では、大切な方に「伝えたいこと」や「知っておいてほしいこと」を残したり、「自分が死んでしまったあとに知られたくないこと」を誰にも気づかれることなく自動的に抹消することが可能という。
持主が亡くなることで、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器に保存されたデータは大量に行き場を失う。
最近のデジタル遺品では、取引先、知人、友人などの連絡先、仕事 や プライベートの予定表 や メモ、クレジットカード や ネットバングの情報 や ネット通販の利用履歴、様々なサイト や アプリなどのID・パスワードなど多岐にわたる。
各種 SNS では、所有者が死亡した場合、アカウントの凍結や削除ができるが、「マレリーク」のようなデジタル遺品整理を完全に行えるサービスが、グーグルはじめ、巨大IT企業から出てこないのが不思議である。
今後、毎日生み出される膨大なデジタルデータ や デジタル遺品を有効活用する「新しいアイデア」を生み出す企業に成長があると考えていて、情報銀行などの制度 や キャッシュレス社会に対応したビジネスモデルにも、今後大きな成長が見込まれると考えられる。
2. 誰も見向きもしなかった 本物の個人の体験や経験
上記のデジタルデータもそうだが、そのデジタルデータとなった個人の体験や経験を SNS などにあげて、シェアするなどの動きが取られているが、今後「本物の個人の体験や経験」を多くの人にシェアする分野は高い成長性が期待できる。
所詮、SNSでシェアしたところで、本物の個人の体験や経験をしているのはアカウント所有者本人とその周辺のみであり、多くのフォロワーなどには、本物の個人の体験や経験をすることはできないのである。
例えば、京都府長岡京市の柳谷観音楊谷寺では、アジサイを手水舎に浮かべた「花手水」が人気であり、この時期だけ多くの参拝者が訪れる。
参照:【浮かぶアジサイ この時季だけの「花手水」、人気で渋滞発生】 青や紫のアジサイが浮かべられた手水舎は「@yanagidanikannon」などを通じて広く情報が発信されている事から、寺の周りでは大渋滞が起こり、通常のキャパシティーを超えた参拝客を集めている。
もはや、近隣に迷惑を掛けているレベルにまで達しており、今後寺側は対応を考える必要があるだろう。
多くの参拝客は、紫陽花目当てであり、写真を撮り SNS で上げたいという承認欲求は、今後もビジネスや宗教で利用されていくであろう。
また、現在の御朱印帳ブームは、明らかに加熱気味であり、多くの寺社が流行にあの手この手で便乗しようと、中には「商売欲」が出てきている寺社も見られる。
参照:【御朱印ガールブーム、ネットでは批判殺到も、寺社は歓迎「女性が興味を持ってくれれば」】
記事では、本来の意味 ( 納経 ) から外れ、もはや寺社はテーマパーク化しており、「神や仏を信ずる事とは何か」を忘れた人々をツールを利用して集客することを、歓迎するようであり、他の人々の信仰心に対しての配慮よりも、女性参拝者を増やしたいと思っているようである。
この場合も、多くの参拝客の目的は、コンプリートした御朱印帳の写真を撮り SNS で上げたいという承認欲求 と 単純に集めたいという収集欲、御朱印帳を他人に転売する金銭欲を満たす為に来ている。
個人的には、寺社仏閣の建築が好きなので、純粋に参拝する目的で行っていたが、昨今の外国人観光客と御朱印帳目当ての客の影響で足が遠のいた。
あの静かな神々しい雰囲気が好きだったが、多くの寺社では、テーマパークとなってしまい、ラグジュアリーブランドのような霊的なブランド価値をすでに感じない。
多くの寺社仏閣は自らの手で、ブランドを大衆化していく方向に向かっている様なので、これも時代の流れなのだろう。
このように、様々な業界では、自分自身の体験や経験をしておきたいという潜在的ニーズがあり、誰も見向きもしなかった体験や経験が突如ブームとなり、大きな市場となる可能性を秘めているのである。
3. 大企業が目先の利益で生み出す余剰在庫や廃棄物
大企業が、大量生産・大量販売を止めない限り、大きな成長が見込まれるのが、余剰在庫や廃棄物における分野である。
少子高齢化・人口減少の二正面の問題を抱えている日本では「たくさん作って販売する」というシンプルなビジネスルールは、今後通用しなくなると考えられる。
大企業は総じて動きが遅く、一度決めた方略の変更を行うことが出来ずに、多くの在庫と廃棄品を生み出し続けるであろう。
ここにビジネスチャンスがあるのだが、この大手が作り出した「大量の余剰在庫 並びに 廃棄物」を有効活用することで、ビジネスを成長させることが可能である。
例えば、日本国内の薬剤は、年間 約 100 億円分が廃棄され、デットストックが出ていると言われているが、この調剤薬局業界の歪な商習慣と法規制を突いた優れたビジネスモデルを展開するのが、カバヤ薬局 の関連企業が運営する「リバイバルドラッグ」というサイトである。
同サイトは、医療用医薬品の過剰在庫品を販売している。会員は、おそらく薬局が大半と考えられ、売り手と買い手を繋げるビジネスを上手く行っている。
売り手は、自分の店舗で余った薬を同社に送り、同社が検品し、販売できる薬を出品。売り手と買い手との取引が成立した後に、販売手数料を得るシステムであり、売り手は、手数料を引かれた金額を受け取ることができる。
大手製薬会社の商慣習が変わらない限り、薬局の余剰在庫が増え、使われなくなった薬は廃棄されている現状がある。
このように、歪な構造を抱えている業界は多数存在し、大手企業が目先の利益の為に「大量生産・大量販売」でしかビジネスを維持できない限り、余剰在庫や廃棄物は増え続ける。
住宅、衣料、食品、医薬品など「大企業が大量に作り在庫が余り密かに廃棄されている」点に注目すると、サブスクリプション 並びに シェアビジネスを上手に取り入れることで、手堅い経営ができるのである。
共有経済が進むにつれ人々の意識や生活の変化に注目する
以上、3 つの領域であったが、誰もが当たり前のように生み出し消費している分野に注目することで、起業するキッカケになると良いと思い、話をしてみた。
SNSの隆盛を見ていると分かりやすく、シェアすることが当たり前になりつつあり、すべての分野で共有経済の流れが進みつつある。
彼は、話を聞いて感心しているようだったが、話を聞いただけでは何にもならないのであって、行動に移して初めて、聞いた内容の価値が得られるのである。
考えていくと様々な場面で「解決すべき問題」はいくつもあり、数が多過ぎてここでは紹介しきれないが、様々な社会的問題を解決するサービスを見ていくとヒントは無数にある。
日本で起こっている諸問題において「自分ならこうする」と考えられる分野からアプローチすると、若い知人もきっと起業できると信じている。
参照:リーン・スタートアップムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす
内容紹介
世界を変えるサービスが次々と生まれるシリコンバレーで、多くのスタートアップから大企業まで採用しているのが、著者エリック・リース氏が提供する「リーン・スタートアップ」。顧客から学び、ムダを省き、圧倒的スピードですばらしい成果を出すメソドロジーで、世界各地で「リーン・スタートアップ」ムーブメントが巻き起こっています。本書はそのリーン・スタートアップについて、エリック・リース自らが解説。リース自身の起業体験も含めて、わかりやすく体系的に紹介しています。
著者略歴
エリック・リース (Eric Ries):アントレプレナーとして「スタートアップの教訓 (Startup Lessons Learned) 」というブログを執筆。New Context 社ゼネラルパートナー。彼にとって3社目の起業であるIMVUには、共同創業者として、CTO (最高技術責任者) として参画した。最近はビジネス関連のイベントで講演することが多く、さまざまなスタートアップや大企業、ベンチャーキャピタルに事業戦略や製品戦略のアドバイスを提供している。ハーバード・ビジネス・スクールのアントレプレナー・イン・レジデンスでもある。
■ Reference Image :Pixabay