【推理小説作法】あなたも簡単に導入できる 松本清張、推理小説 5 つの発想法

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推理小説作法、江戸川乱歩と松本清張が編者を務めた古典の名著

 

【推理小説作法】あなたも簡単に導入できる 松本清張、推理小説 5 つの発想法
Reference:Pixabay

 

今回取り上げる本は、日本ミステリー界を代表する大御所、江戸川乱歩松本清張が編者を務めた古典の名著である。

実のところ、あまり存在を知られていない本書であるが、いわばミステリーの分野に関わる人たちのマジックのネタ(トリック)を公開しているノウハウ集である。

推理小説に興味がある人や作品を愛読する読者にむけて、書き方の作法などを多角的な観点から平易に指南している。

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普段から推理モノをドラマや映画を鑑賞する際に、成り立ちや構成ポイントを知っていると、より深く楽しめるであろう。多くの話を観たり、読んだりするのも大事だが、手法を理解しておく方がより重要である。

個人的に、松本清張氏の作品を愛読しており、小説と言えば松本清張氏の作品しか読んでいないと言っても過言ではない。今回は、本書「推理小説作法―あなたもきっと書きたくなる」に掲載されている松本清張氏が語った「推理小説の発想」を自分なりに分かりやすくまとめてみた。

その他、中島河太郎「推理小説の歴史」植草甚一「推理小説とスリラー映画」など論考も収録しており、日本の推理小説を紐解く上で参考になる一冊である。

特に、松本清張氏の「私の創作ノート」が地味に凄く、私の中で一番のお気に入りで、非常に稀少価値が高いブランド力のある一冊となっている。それでは清張氏が語った言葉を参照に、5つの発想法をまとめていきたい。

 

推理小説の発想 松本清張

 

【推理小説作法】あなたも簡単に導入できる 松本清張、推理小説 5 つの発想法
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よく人から、あなたは推理小説を書くとき、どういう風にして作りますか。と聞かれますが、発想は机の前に座って呻吟しても浮かぶものではない。むしろ、トリックとかアイディアというものは、風呂の中とか、夜、 寝床に入ってぼんやりしているような時に、ポツンと浮かんでくるもので、こればかりはいくら考えてもそう理詰めに答えの出るものではないのです。そのちょっと思い浮かんだアイデアというのも、やはり、実は自分が見ていた他人の生活の中から浮かぶヒントが大部分であります。つまり、ある人間の生活の中からひとつの心理を引き出してそれを帰納してゆく方法です。

 

個人的にもブログを書く際に、どのような記事を書こうかと考えるとき、多くの場合、朝風呂に入っているときが、最も良いアイデアが浮かぶことが多い。このブログの場合、どちらかと言うと、関わったブランドの回想録形式の記事が多いが、どの順番でどう記載しているを考える際に役に立ちます。

小説を書こうと思ったのも、夜寝る前に、雑誌やビジネス書を読んでいた時、フッと自分自身の仕事に関わる奇妙な日常を創作を入れて描いてみたいとおもったからである。まさに、松本清張氏の言う、自分が見ていた他人の生活から、自分の奇妙な体験を組み合わせてみてはどうかと思ったわけです。

 

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私は、何によらず、動機というものはすべての人間の犯す罪において、一番大事な点ではないかと思っています。動機のない犯罪というものはありません。そして、動機のある犯罪は、人間が最も究極の立場に置かれた時の性格の現れではないかと思います。従って、動機を追求するということは、すなわち性格を描くことであり、人間を描くことに通じるのではないかと言う考えを持っているのであります。

 

人間の動機の追及については、非常に共感できるところで、松本清張氏が描く人間は、時に欲望のままに、人間の臭みを出すのが大変上手い人だなと思う。

ただ、時代背景的に少し古典的な人間像を感じるし、それが逆に現在では新鮮であったりする。ひと昔、いやそれよりもっと前、戦中から戦後を経験した日本人は、もっとギラギラしている感を受ける。

それだけ、戦争を体験し、高度成長期を経て、ハングリーに豊かになろうとするエネルギーに溢れる人間が多かったのであろうと思う。

松本清張氏の作品は、そんな昭和の空気感を感じることが出来るし、それよりも前をとらえた歴史小説に関しても、現代社会にもあてはまる「人間の根源的動機」を追及している清張流の流儀を作品全体から感じる。あの文体が何とも言えないのである。

 

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社会的な方面に目を開いてきますと、まだまだ推理小説の分野は、いくらでもあると思われます。むろん、前に述べたように、人間関係でも、金銭関係でも、自己防衛でも書けるけれども、それは散々書きふるされた手であって、もっと社会的な、現在の複雑怪奇な様相を書くには、推理小説の方法はある程度有効ではないかと、私は思います。

 

この解説の後に、松本清張氏の作品にある政治がらみの実話の話はとくに面白い。これほど奇妙な事件が実際にあった場合、どのように描いていくかなと自分なりに考えさせられた。

現在のように社会の機構が複雑にかつしっかりと組み合わされていると、個人が機構の外にはみ出されたとき、現在社会ほど孤絶した状態はないと清張は言う。

たしかにそのとおりで、社会的組織からはみ出た時、推理小説的な手法を用いることで、はじめて本当の意味での不気味さ、恐ろしさが描けると松本清張氏は考えるように、このあたりの孤絶した人間の動機を描くことで、その話は特異でユニークな作品になるのであろう。

そしてそれは、これからの日本の社会問題のひとつとして、多くの人が経験することになるだろう。とくに「おひとりさま」なんていうのは、市民権を持ちつつあるが、自ら孤絶したいと言っているようなもので、とても自分では受け入れられないが、それ自体を良しとする奇妙な人間も、現在の日本では存在するのである。

 

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というのは、一人の男、あるいは女が、自分の周囲の環境から全然切り離された、孤立した状態に陥るのは、我々の日常生活にしばしば起こり得ることであります。一週間も二週間もいないということはないにしても、私なども、時には二、三日家から離れて暮らすこともある。その場合に、家のものは、どうせ仕事の都合からであろうと想像し、どこかにいるものと思って、安心しています。しかし、この間の行動というものは、当人である私だけしか 知らないわけで、まあ一種の真空状態とも言えます。

 

この真空状態を楽しめる人も中には存在するが、ひとりが好きだと言っている人に限って、真空状態に耐えかねて、SNSなどで世界中に報告する人もいるので、現在では真の真空状態は少なくなってきているのではないか思う次第である。

松本清張氏は、この真空状態を作り出すのが好きな人だなと思うが、個人的にも人間の真空状態には非常に興味がある。現在では、ただの一般人がブログやSNSで簡単に、訪問先などの居場所を伝えてしまうが、逆の状態が、いまの日本では新鮮に映ることを考えると、アイデアを引き出しやすい。

つまり、ハイテクを使いこなせない環境もしくは、元々使いこなせない人にフォーカスすることで、意図的に真空状態を作り出し、ローテクを存分に活かすことは意外と使えるということである。スマートフォンやパソコン、など通信機器を遮断したところに面白さがある。

 

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こんなことも、普通の生活では案外多いものです。偶然、現場を目撃したが、それを言えば、自分の秘密をさらけ出さなくてはならない。事件と自分とは、本来、何の関わりもない。まず自分の立場を防衛することが大切だと考えるのは、人情の常だと言いましょう。 私たちは、いつ何時、そのような微妙な立場に立たされるのかわからないのです。よく考えてみれば、そこで扱われているような事件は、いつ私たち自身の上にも起こるか分からないわけです。今日が無事だからといって、明日も無事だとは限りません。

 

いくら日常的に善人でも、自分の行った行動で、自分の立場が窮地となり、他人に責任や罪をおしつけ、自己防衛するというのは日常的に行われていることである。

会社でも、自分の責任で行った業務のことで、窮地に陥る場合もあれば、夫婦生活や恋愛ごとで、付き合っている人以外との現場を目撃され、本命の人に詰め寄られるなんてことも日常でも起こりうることである。

そのような微妙な立場を描くことを得意としている松本清張氏の作品では、人間の動機と立場の防衛を表現するのが上手いと感じる。現場の目撃者をどのように扱うかで、物語が出来てしまうということを松本清張氏は語ってくれている。

 

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今まで、推理小説と申しますと、大抵、我々の日常生活にはまず無縁なことが書かれております。ところが、そういう荒っぽい、怖がらせを眼目したような小説は、実は本来から言うと、ちっとも怖くない。それよりも、生活に密着した、我々自身がいつ巻き込まれるかわからないような現実的な恐ろしさを描いた方が、どんなにそれが淡々と静かな文章で書かれていても、ずっと大きな戦慄を感じさせることになるのではないかと思います。

 

たしかに、アカデミックな犯罪を描いた作品は、派手で面白そうに見えるのであるが、実のところライバルの多いレッドオーシャンの市場であり、長く楽しめるものは少ない。

たしかに、非現実的であればあるほど、恐怖というのは一時的なものであって、いわゆる怖いでしょうという事だけが「作品の売り」となっており、それでは、ただのホラー要素の強い作品となってしまう。

その分野が好きな人にとっては、良いかもしれないが、静かな文章で淡々と描かれている方が好感が持てると思う。謎を大きく残したままでも、賢明な読者であれば、自分なりの考え、推理を働かせ、結論を出すのを期待した方が個人的に良いと思う。

 

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この考え方を発展させてゆきますと、将来の推理小説というものは、個人的な動機のみならず、社会的な組織の矛盾を衝くことによって、もっともっと押し広げられ、もっともっと大人の鑑賞に耐え得る文学にまで高められ得ると私は考えております。

 

個人的な動機に基づく現実的な恐ろしさは、私たちが巻き込まれやすく、実は非常に曖昧で、分かりにくく、ずっとモヤモヤした状態が続く。見た目の分かりやすさや物々しさに騙されないように心掛けると、あなたがつくる創作物は、色々と面白くなってくる。

社会的な組織の矛盾を衝くことによって、物議を醸す「小さなひだ」を随所に散りばめる方が時代の感覚と合うと思う。一方で、なんやこれわからんと聞こえてくれば、それは「しめたもの」であると思う。

個人の考え方は千差万別、置かれている立場や考え方などで大きく見方が変わる。分からん矛盾していると言われる方が、一流のプロが破綻のないように作る創作物よりも荒削りの面白さを楽しめる。

アカデミックな創作物は、松本清張氏のような一流の作家に任せ、自身での荒削りの面白さを追求すれば、筆も進めやすく、その不完全さを楽しめる賢明でコアな読者を生み出すひとつのキッカケとなるだろう。

 

松本清張、推理小説 5 つの発想法を通じわかってきたこと

 

【推理小説作法】あなたも簡単に導入できる 松本清張、推理小説 5 つの発想法

 

私は、他人の作品はあまり観ないが、この手のプロの作家が、手法を公開している「ハウツーコンテンツ」は好きでよく観たり読んだりする。

漫画・アニメ、映画監督やその他技術者が指南する仕事のやり方やアーティストを追った舞台裏などは特に好きで、出された大半の作品は知らないが、クリエイターの創作プロセスの方をよく知っているぐらいである。

推理作家松本清張氏が語った内容をまとめていくと以下の 5 つの内容となる。

 

● 人の生活から深層心理をつかみ、リラックスしているときにアイデアを出す
● 人間の動機を追及し、性格を描き、最終的に人間を描く
● 社会に目を向け、複雑怪奇な実際の事件からアイデアをみつける
● 自分や他人が経験した真空状態を探し出し大胆に作品につなげる
● 当事者となるイメージを持ち、生活に密着した現実的な恐怖を取り上げる

 

今回は、推理小説の作法を書いた書籍を取り上げたが、物書きという立場で考えれば、どの分野にも通用する発想法であることが分かってくる。

時代を経ても普遍的で、創造に関わる者からみて、人間技である限り、その神髄はあまり変わらないのである。

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要は、誰が伝えるかが重要であり、作家の場合、作品で有名になった人が発言することで、影響力とその説得力が増すのである。多くの場合、有名になるより、無名のままで終わることが多いが、仮に有名になった場合、松本清張氏のように、あとが大変である。

松本清張氏が活躍した一昔前であれば、小説を書き、新人賞をとり、自身の作品の知名度を上げて、マスマーケットで部数 (セールス) を上げることで、出版社の依頼を通じて、次の作品を書くことが、唯一作品を公に公開する手法であった。

現在では、ブログもあれば、SNSもあり、また販売するプラットフォームまで整備されており、誰でも小説や好きな作品を発表することができる。ブログはまさに、誰もが作家になるためのプラットフォームでもあるのだ。

従来の方法では、出版社が自社のセールスを上げるため、作家に対して厳しいプロの目でチェックし、出版物を出すのは狭き門であったが、これだけ自由なプラットフォームがある現在では、あなたの自由な発想で、気兼ねなく書くことができ、さらに自分で販売することも出来る。

このように自由なプラットフォームを使えば、内容が良いのは当然として、その著者による本質的な発想法で、作られた作品を味わいたい人の一部のなかに、作品の技巧よりも、その人間の創作物であれば、何でも触れたいと思うようになる。

その語られる内容が、当たり前の内容でも、この人の発言であれば、大きな間違いはないという信用が、本当のファンを生み、ブランド力につながる。そのブランドを構築するもっとも重要な ”秘伝のタレ” をつくるひとつのスパイスに、本書「推理小説作法」は優れた書籍なのである。



About PG編集:道長

食べる事と寝る事に一生懸命な旅人。 世界は感染症や戦争で混沌としておりますが、平和になったら平和な国を旅をしたいと準備しております。 先代の管理者様より、サイト管理・記事制作を委任しております。 ※現在は写真提供をして頂いております。

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