新型コロナ流行中の現在、薬の成り立ちはどのようになっているのかという疑問
新型コロナウイルス が、世界的に流行している現在、世界の秩序は大きく変わろうとしている。
世界では過去にも大きな疫病が流行し、そのたびに人類は疫病を克服してきた。
私たちは現在 (2020.07) 新型コロナウイルスに対するワクチンもない状態で、世界は早くも経済活動を始め、世界各国で日々感染者が出続けている。
日本の首都である東京では、感染者が再び増え続けており、流行の第二波がすでに始まっているのではと思われる。
東京都 新たに131人の感染確認 100人以上は3日連続 新型コロナ | NHKニュース
日本国内で、国民の多くが爆発的に感染し、死者が出てからでは手遅れになるが、その前に早期に緊急事態宣言を発出する方が良いと思う。
ただ国家財政を圧迫し、これ以上補償を出したくないと思われ、また経済活動を止めたくない政府の本音が再び見られることになった。
前回の自粛期間中に、感染症関連 並びに 薬害関連の書籍 や 今回紹介する薬学の歴史書籍、【世界史を変えた薬 / 佐藤 健太郎 (著) 】などを読んでみた。
人類は長きに渡り、疫病を治療する薬の存在で、歴史が大きく動いたという興味から本書を手に取ったのである。
【概要】
筆者はかつて、医薬品企業の研究所で新薬の研究に携わり、医薬の可能性と危険性について考える日々を送ってきた。もしこの薬があの時代にあったら、あの薬があの人物を救っていなければ、と考えるのは、歴史の愛好者として必然であった。もしコロンブスがビタミンCを知っていたなら、もし特殊アオカビの胞子が、ロンドンの病院のあるシャーレに飛び込んでいなかったら、間違いなく、現在の世界地図は大きく変わっていたはずだ。医薬品というものは、どうにも不思議な代物だ。口から飲み込んだ小さな錠剤が、どのようにして患部に届いて痛みや炎症を鎮めるのか、簡単にでも説明できる人は相当に少ないだろう。Reference:Amazon 世界史を変えた薬
【著者プロフィール】
佐藤 健太郎:一九七〇年、兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。医薬品メーカーの研究職、東京大学大学院理学系研究科広報担当特任助教等を経て、現在はサイエンスライター。二〇一〇年、『医薬品クライシス』(新潮新書) で科学ジャーナリスト賞。二〇一一年、化学コミュニケーション賞。
立体構造式に若干難があるが、薬学から歴史的教養に結び付ける優れた良書
世界史を変えた薬として取り上げられているのは、全部で 10 種類である。
ビタミンC 、キニーネ、モルヒネ、麻酔薬、消毒薬、サルバルサン、サルファ剤、ペニシリン、アスピリン、エイズ治療薬 である。
そのうち、麻酔薬とエイズ治療に興味があったので、その章を中心に読み進め、時間を見ては各章をあたっていく読書法をとった。
まず、麻酔に関して何も知らないままで、麻酔を用いた手術(抜歯)などを受けたことがあり、なぜあんなにすぐに意識がなくなるのか不思議で仕方がなかった。
人類が麻酔を使い苦痛をコントロールできるようになったのは、19世紀になってからであり、それまでは、患者は激痛と闘いながら手術を受けるしかなかったのである。
それを考えると、私たちは良い時代に生まれてきていると言え、先人の努力には頭が上がらないのである。
第 5 章 麻酔薬 痛みとの果てしなき闘い を読んでいくと、名医 華佗 の「 麻沸散 」を再現した 医聖・華岡青洲 の母と妻の命を掛け「 通仙散 」を完成させた話 は初めて知る話で興味深かった。
「誰が麻酔を見つけたかというイギリスやアメリカでの話」や キング・オブ・ポップ 「マイケル・ジャクソンの死の話」まで興味深く読み進めることができた。
ただ現在でも、多くの医療現場で麻酔が使われているのにも関わらず、人類は未だに麻酔の原理が分からず「麻酔の謎は解けていない」のが意外であった。
動画も観て一応上げているが、その原理がまったく分からない。
また、エイズ ( 後天性免疫不全症候群:通称 AIDS ) の衝撃に関しては、今回の新型コロナのように、初期の感染の恐怖は、世界中で大々的に報道され、日本でも連日メディアが取り上げ大騒ぎになったのは記憶に新しい。
エイズへのイメージが、初期の感染への恐怖と偏見が未だに続いており、治療薬が登場したことで、現在ではほとんど話題になることがない。
研究者による病原ウイルス発見をめぐる暗闘は、法廷論争まで発展し、検査試薬の特許料などの莫大な利益に結びつく事から、騒動はこじれることになった話は興味深い。
エイズを発症させる( ヒト免疫不全ウイルス: HIV ) ウイルスは、実に精妙な仕組みをしており、人類の弱点を巧みに付くウイルスであることが分かってきたのである。「実によくできた病気」とある研究者は表現している。
難題が多く、細菌感染症の治療薬よりも格段に難しいとする「エイズ治療薬」を最初に創出し、世界の危機を救った「満屋裕明」博士の功績も取り上げられている。
あまり知られていないが、エイズの治療薬を世に送り出したのは、私たちと同じ日本人なのである。
数年前に「エイズ治療薬を発見した男 満屋裕明」という書籍を読んだのだが、さらに詳しく取り上げられている。
途中、欧米企業 ( バローズ・ウェルカム:ジドブジン ) の伏兵 ( 満屋に無断で特許を取得 ) に苦戦しながらも、博士はさらに研究を進め、見事に新薬の創出に成功する。
エイズという死の病からひとまず回避できたわけだが、新型コロナウイルスのように、変異が起こり「新型エイズが出現」した場合、新型コロナウイルス同様、世界は再び感染の恐怖を経験することになるのである。
現在でも、エイズ (HIV) ウイルスとの闘いは続いており、まだ終わりが見えてない。
世界史を変えた薬 佐藤 健太郎 / まとめ
立体構造式に若干難があり、科学の正確性を欠くページが何か所か見られる意見があるが、薬学から歴史的教養に結び付ける優れた良書である。
個人的な希望としては、何人かの専門家を入れて、読者から問題を指摘されている箇所を訂正して、様々な参照資料などを付けるなどエビデンスが欲しいところである。
そのためのページの増量や価格に反映されるのは致し方ないし、科学の正確性を追求しても良いと思う。
私のような専門外の初学者には、情報の正確性が欲しかったわけだが、読書が趣味の私にとって興味深く、価格も手ごろで、面白い企画で楽しんで読むことができた。
世界史を変えた薬 (講談社現代新書)
佐藤 健太郎 (著)
新書: 192ページ
出版社: 講談社
発売日: 2015/10/16
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