【ラグジュアリー戦略】マーケティング逆張りの法則:製品ラインの平均価格を上げ続け理想のモデルを提示する
従来のマーケティング戦略では、スキミングプライスで市場に投入し、初期段階では高価格に設定、早い段階から利益確保を行い、市場に投入したモデルに競合もしくは販売量が低下した段階で価格を徐々に落としていく戦略が取られている。
ラグジュアリーではまさに正反対の事を行う必要がある。手が届く新製品を市場に投入する以外に、販売量や収益性を増やす事ができないのがラグジュアリーブランドである。
つまり価格を引き上げを行っても、値引きや価格を下げる事は基本的には行わないのが原則である。
上流階級の顧客獲得を至上命題として投入されたマイバッハブランド
書籍ラグジュアリー戦略で取り上げられる例として、メルセデスが超ハイエンド車を別ブランド名マイバッハで市場に投入した事実を取り上げており、その戦略の変更を教えてくれる。
メルセデスは、普通車やプレミアム車のメーカーの事実上のトップブランドのひとつであるが、最上流のラグジュアリー階級の顧客創造を意図的にマイバッハ・ブランドで作り出そうとしていた事は事実である。当初はメルセデス名を使っていなかった。
このことは、新しい顧客がお買い得だと思うような入門製品をいくつか持つ事も必要だが、同時にラグジュアリーブランドは理想像のギアを恒久的に入れ換える事が重要である事を意味する。
メルセデスの業績が伸びたのは、富裕層から下のランクの層の顧客に狙いを定めたからでなく、多くのニューリッチや超富裕層を生み出したグローバル経済成長の波にうまく乗ったからだという。
製品ラインの平均価格を上げ続ける事は重要な経営戦略である
上記について言うと、半分正解で半分間違っていると考えている。下のクラスと言えば、当初はメルセデス・ベンツ・Cクラスであり、メルセデス・ベンツ・Cクラスは当たったわけだが、後に全体的モデルの製品の質が低下したと避難された。
最近ではメルセデス・ベンツ・Aクラス、メルセデス・ベンツ・Bクラスを投入して、若い新規顧客を獲得したいという野心的なモデルを投入しており、どちらかと言うと製品の平均価格は下落基調である。
また、冒頭に上がったマイバッハであるが、メルセデス・ベンツSクラスの中のモデルに鞍替え「メルセデス・マイバッハ」としている事から、上流階級へのセールスにはどうやら失敗したようである。
しかも値段も安くなっている。製品を通じて自分へのご褒美をしたいと思う富裕層は、Sクラスよりも上には気に入られず、それより下の富裕層に線引きをした格好となっているが、少なくともメルセデスを選ぶ事ができる富裕層はその会員制クラブに入りたいと思っているのには違いはない。
製品価格を上げ続ける事は必要であるが、メルセデスでさえ苦労し失敗しているというわけであり、このことから分かるように、価格戦略は、失敗が許されない重大な経営戦略なのである。
参照:ラグジュアリー戦略―真のラグジュアリーブランドをいかに構築しマネジメントするか