少子高齢化・人口減少化の日本で増大する遊休スペースを活用すること
現在の日本では、少子高齢化・人口減少により、従来起こるはずもない数々の問題があらゆる分野で影響を与えることになるのだが、そんななかで無駄となっていたり、遊んでいたり、有効活用できていない分野が多数存在している。
分かりやすい例として「 活用できていない放置された空間 (スペース) 」が無数に存在している。スペースの問題について言えば、現在の日本では、多くの場合有効活用できていない。
都心部の人気エリアの一部は、地価が高騰しながらも、少し離れたエリアでは、極端なほど下落が見られる。このような現象は、少子高齢化と人口減少が影響していると考えられる。
また物流面での問題は、都心部へのモノの量は多いのに、モノの置き場の格差が増大している。ガラガラの倉庫やオフィスがある一方、モノでパンパンな倉庫やモノに溢れた人員過大なオフィスや商業施設などが他方で存在する。
今後、首都圏や地方都市で、人気の場所と不人気の場所で、コストの格差が増大していくことが考えられるが、その格差を埋めるシェアビジネスが多数生まれている。
今回は、遊休スペースの有効活用をテーマに、シェアビジネスを行っている 3 つの企業を取り上げてみたいと思う。
カタルスペース:地方製品を都市圏店舗の遊休スペースを活用し宣伝
都市圏で遊休スペースを持つ店舗 と 地方で作られた製品を「展示スペース」でマッチングするサービスが「カタルスペース」である。
製造業者並びに職人と店舗をつなぐプラットフォームとして、2月中旬あたりから本格的なサービスを開始したようである。同サービスは、店舗の空きスペース や 商品棚 に、地方の製造業者がつくった製品を展示する。
展示する製品の説明文 並びに QR コード、NFCチップを貼り付けた端末が設置され、来店客は、スマホを使って 製品情報 並びに 任意のECサイトなどに誘導できる。
店舗側は、仕入れをせずに、遊休スペースの活用ができ、新しい製品を置くことで、副収入と顧客とのコミュニケーションを取ることができる。小さな零細店などは、バリエーションを増やすことができて良いかもしれない。
この取り組みはなかなか素晴らしい。地方で伝統工芸品などをつくっている個人や零細企業は、とにかく人が多く集まる「PRする場所や売り場」は欲しいと望む。
多くの個人や零細の製造業者は、店舗を持たず、工房や工場しかなく、いくつかの店舗で展示スペースを借りることで、多店舗展開を安価な費用で実現できる。
従来であれば、伝統工芸品や個人がつくるオリジナル製品は、自身で営業し、店舗を開拓することで、卸売などで展示スペースを確保する必要があったが、それは高いハードルであり、店舗側に高いリスクが存在していた。
仮に、大きな企業 (百貨店などの大規模店舗) に卸売りをしても、零細企業は下請けとなりやすく、大手販売側が価格を下げてでも販売しようとし、さらにコストへの要求は厳しくなる。
また、展示会や百貨店の催事など、短期間の展示販売は、その費用の割に「当たり外れ」が大きく、多くの出店業者と寄り合い所帯となり、多くの来場者が訪れるが、対応がお粗末になりやすく、正確な顧客情報を取得することも難しい。
従来の販促活動 (セールスプロモーション) は、比較的大企業であれば、それでも良いかもしれないが、個人や零細企業は、都市へ出ていくコスト や 展示会や催事は、高額な予算を掛ける必要があり、コスト面で難しい。
同サービスの費用は、レギュラープランで月額 14,800 円 となっており、大手企業や自治体は、個別で見積もりされるということである。
個人や零細にとっては、長期間での利用は、負担は大きいかもしれないが、展示会や催事などに比べて安く、しっかりと期間を決めて展示スペースを確保するのには良いであろう。
製品の宣伝に対する問題が山積する限り、個人や零細はモノづくりへの注力は難しいが、比較的低コストで、遊休スペースを借り、製品の宣伝がができることは、非常に良い取り組みである。
よじげんスペース:飲食店の荷物置き場問題の解決、冷蔵・冷凍庫の シェア
冷蔵・冷凍庫の遊休スペースのある店舗と仕入れ材料などのストック置き場の確保に悩んでいる飲食店を結び有効活用するサービスが「よじげんフリーザ」である。
例えば、季節型の材料 (氷雪販売業など) については、繁忙期には冷蔵・冷凍庫は一杯になるが、売れる季節が終われば空になる。そのギャップを解決する。
対象は、東京23区の飲食店並びに居酒屋等の店舗運営者。登録数が一定以上確保されると順次エリアが拡大されるようだ。
ホストとゲストは、登録並びにマッチングは、LINEを通じて実施され、利用料は常温で、畳一畳 5,000円、冷蔵・冷凍で、50リットルで 5,000円 程度となっている。冷凍庫を貸す店舗側は、手数料20%を差し引いた額が支払われる。
店舗側のメリットとしては、スペースの権利をシェアするという点。倉庫業法に基づいた登録を行うことなく利用できるようである。
店舗の運営者であれば分かるが、多くの空き店舗や倉庫がある一方で、運営している店舗によっては、狭いスペースで限界ギリギリで運営している店舗も多数存在しており、そのギャップを埋め、遊休スペースを有効活用する良い取り組みである。
そのほか、宅配業者によるクール便 や 一般便などの都市圏での拠点の確保 や 今後増える可能性が高いオフィスの空き物件への有効活用など、きめ細かくサービスを拡充すれば、遊休スペースが有効活用されていくだろう。
はじまったばかりのサービスであり、サービス内容も臨機応変に変化していくことが予想されるが、今後どう成長するのか期待したい。
モノオク:使っていない部屋や押入れ等遊休スペースを活用する
今は使用していない部屋や押入れ、物置のシェアサービスを展開しているのが「モノオク」である。当初、登録拠点数が増えるかどうか見ていたが、一定以上確保が成功、その目途が立ちサービスを開始している。
比較的、遊休スペースが「空いている側」の方が多くなりがちなサービスなので、ユーザー(預ける側) を多く集める (マーケティングする) ことが、このビジネスの鍵となるだろう。
今後日本は、少子高齢化と人口減少により、モノの置き場となる「空き家や空き物件」が増大。モノを保有せずに共有する流れとなり、断捨離はさらに加速し、保有するモノは減り続ける一方となるだろう。
時代と逆ザヤの流れにあえて挑戦する「モノオク」は、上手に経営すれば、高い成長性が考えられ、参入企業が少ない現在、最大手になる可能性を秘めている。
ユーザー側のメリットは、自宅以外の物置の確保や、引っ越しの一時的な荷物の保管、季節型のレジャー用具をオフシーズン中に預けておくことが可能である。
地方では「モノオク」と競合する可能性があるトランクルームが幅を利かせているが、トランクルームよりも安価で、簡単に預けることが出来るかどうかである。
一方ホスト側は、遊休スペースを貸し出すことで、副収入を得られ、上記の内容で困っている人々に貢献できる。
この手サービスは、顧客を逃さないように、いかにシームレスに柔軟にサービスを提供できるかが鍵となっており、モノオクも含め企業は、様々な企業との協働や資本業務提携を矢継ぎ早に締結している。
シェアサービス「モノオク」、 レンタルトラックサービス「レントラ便」と協業
イーソーコ、シェアリングサービス「モノオク」と、資本・業務提携
シェアサービス「モノオク」、日本初のアパートメントサービス「OYO LIFE」と提携
より安く引っ越しを。トラックや物置のシェア事業を行う2社が提携を発表
また、「モノオク」は個人の投資家等に資金調達がされたようなので、さらに、ベンチャーキャピタルなどから資金を調達し、上場を目指しますなんてことを言うかもしれない。
利用料金は、ビジネスが進むごとに、1 畳あたりの月額費用は下げる必要があるため、ハッキリとは決まっていないが、約 3,000~5,000円前後であろう。
これ以上高ければ、トランクルームを借りれば良いし、実際、モノオクよりも大幅に安く自分も借りており、近くに拠点すらない。
土地代が安い田舎の広い家 や トランクルームのある地方都市では、今のところメリットがとくに見られない。
今後は、さらに拠点数の拡大とサービスの質の向上と多様化、低価格化が実施されれば、地方都市 や 田舎 でも利用者は増えていくであろう。どのようにサービスが成長し、展開されるか楽しみである。
過去、大量に生産された耐久消費財の活用が、これからの日本の課題
過去日本は、耐久消費財 (クルマや家電や建設物) を大量に生産することで、経済発展してきたわけだが、成熟した社会では、過剰に生産される財の維持が問題になる。
耐久消費財だけではなく、張り巡らされた道路や箱もの公共物など、あらゆるインフラの維持が問題となり、造ることより、維持管理し、老朽化すれば改修し、使うことがなければ、適切に産廃として処分する社会となる。
当たり前のことであるが、実のところ私たち国民には見えずらいが、適切に処分できていない実態が明らかになってきている。
ちょうど記事を執筆中に、日本のプラスチックごみの問題【世界基準からズレた日本の「プラごみリサイクル率84%」】の実態が取り上げられている。
また最近では、日本並びに、米国、英国、オーストラリア、中国、サウジアラビア、バングラデシュ、オランダ、シンガポールからのゴミが、マレーシアに大量に送り込まれ、私たちの国にも、ゴミが送り返されるという。
「不法輸入」ごみ 450 トン、日米などに返送 マレーシア マレーシア・クラン港(CNN)マレーシアの首都クアラルンプール西郊に位置するクラン港で 28 日までに、日米など 9 カ国から不法輸入されたプラスチックごみ計 450 トンが見つかった。同国はごみを輸出した国にすべて送り返す方針を示した。ヨー・ビーイン環境相によると、クラン港で見つかったのは米国、英国、オーストラリア、日本、中国、サウジアラビア、バングラデシュ、オランダ、シンガポールからのコンテナ。リサイクルごみの表示を偽り、家庭ごみや電子ごみが混入していた。
やはり、企業による「過度な大量生産問題」がゴミ問題となって深刻化しており、ついに中国がゴミの受け入れを禁止した。
今後、マレーシアのように、発展途上国が相次いでゴミの受け入れを禁止した場合、日本国内の処分費用の高騰と、環境の悪化が懸念される。
そうならない為にも、現在の資産を有効活用する「シェアリングエコノミー」の仕組みが重要であり、多くの業界で、ゴミが発生する商品を作り過ぎない「シェア」の文化を急速に広げていく必要に迫られるであろう。
プラスチック製品をあまり使わないちょっとした心がけを持つ事でも、かなり重要である。
私は個人的ではあるが、飲料会社から大量に生産される「ペットボトル」を購入しておらず、保温性のある水筒をいつも携帯している。
簡易に手に入る「ペットボトル」買わず、家や会社で飲料 (自分で作る) を補充することで、もう何年もペットボトルを使用していない。
水筒は、洗えば何度でも使え、一度購入すれば何十年 ( 現在 6 年目 ) も使用でき、環境にも配慮できる。意識的にだが、自分からプラスチック製品は、極力使わないようにしている。
日本は、少子高齢化と人口減少により「空き家問題」や「シャッター通り問題」を抱えている。人が住まなくなれば、住宅は巨大な産廃となり、商店街の閉鎖が続けば、それらも同様に商店街全体が産廃と化してしまう。
これからの日本は、耐久消費財による大量のゴミ問題がさらに増大し、処分すら出来なくなり、ゴミは大量に放置される結果となる。
空き家が老朽化して、すでに巨大な産業廃棄物のようなケースも出てきている。
すでに、自動車や自転車などシェアの文化がある程度進んでいるが、未だに新車や新築、新商品、新店舗しか使わないの人々も多く、活用されていない店舗や住宅の空き家の再利用やシェアはまだまだこれからである。
今後増大する「遊休スペース」となる資産の有効活用は至上命題であり、今ある耐久消費財の維持のために「シェアビジネス」を取り組む人々の登場に期待したい。
参照:老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 (講談社現代新書)
内容紹介より
私たちは、「人口減少社会」なのに「住宅過剰社会」という不思議な国に住んでいます。住宅過剰社会とは、世帯数を大幅に超えた住宅がすでにあり、空き家が右肩上がりに増えているにもかかわらず、将来世代への深刻な影響を見過ごし、居住地を焼畑的に広げながら、住宅を大量につくり続ける社会のことです。空き家が右肩上がりに増え続け、15年後には3戸に1戸が空き家になってしまうにもかかわらず、都市部では相変わらず超高層マンションが林立し、郊外では無秩序に戸建て住宅地の開発が続いています。多くつくられ過ぎた分譲マンションは、入居者が減ってしまうと、管理が杜撰になってゆき、スラム化などの治安の悪化を呼びかねません。戸建ての空き家もまた害虫などが住みつき、周りの住環境を悪化させてしまうでしょう。かたや、住宅地が無秩序に広がると、それだけ新しい水道などのインフラや公共施設が必要になり、そのために多額の税金が費やされます。このままでは私たちが「まち」に支払う税金の負担がかさむ一方で、住環境は悪化の一途をたどるという末路が待ちうけるのです。
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