共有経済は、少子高齢化、人口減少問題を抱える日本で必要な取り組みである
シェアリングエコノミー。アタマでは分かっているが、世間ではなかなか浸透しない社会的な仕組みである。まだまだ、新品の方がいいという社会的風潮もあり、一部の分野でしか、シェア文化は認められていない。
この手のシェアリングサービスは、範囲が狭く、なかなか地方や田舎までもインフラが整っているとはいえず、どのようなシェアビジネスが、今後成長していきそうかという尺度で見ている。
個人的に言うと、カーシェアリング や レンタサイクル など、登場した当初から利用していたりと、自分が住んでいる地域に、シェアリングサービスが拡大したときに、利用している。
ここ1.2年で、様々な新しいシェアサービスが登場しており、事業のライフサイクルで見れば、時代はまさに、シェアビジネスのイノベーターたちが活躍する導入期なのである。
また同時に、既存の大手ブランド買取 や 総合リサイクル企業の 成熟期 であり、業界で再編が進み、淘汰が始まっており、衰退期手前という状況なのである。
既存の大手買取店が行っている事と言えば、海外市場への展開か、ECへの注力か、フランチャイズ展開か、事業再編 (M&A) か、既存サービスのアプリへの注力か、それらすべてかであり、自分たちが変化しないで成長することを考えている。
私自身、たまにブランド品を購入するので、オールドビジネスになりつつある大手の買取店などに世話になっているが、現在の買取店は、買い取って転売するだけであり、買取品の奪い合いを展開し続ける限り、残念ながら未来への成長余力が基本的にはない。
近い将来、少子高齢化、人口減少問題を抱える日本で生きている限り、上記の古いサービスよりも、新サービスを提供する企業の世話になる可能性の方が大きい。
そこで、何回かに渡り、約 20 年に渡るリサイクルマニアの私が、独断と偏見で「コレはいいサービスなのでは」という 今後、成長する可能性の高い シェアリング・エコノミー を行う ベンチャービジネス 注目企業 3 選を紹介しておきたい。
カメカリ:プロ並みの機材をレンタルできる 個人間カメラのレンタル
2018年の夏前後に登場した「カメカリ」は、カメラのレンタルプラットフォームである。カメラの個人間レンタルは、今まで見たことがなく、なぜカメラを商売にしている人々からこのビジネスが登場しなかったのか不思議である。
おそらく、大手企業は、市場が小さいと思われているのか、新しい顧客がいると認識していないのか、盗難や故障などの保証の仕組みを作ることができないのか、それとも単に、手間が掛かり過ぎて、儲からないから始めないのか、それらすべてなのかもしれない。
このサービスは、オーナーが貸し出す機材の価格や状態など設定。ユーザーから、その機材のレンタル依頼があった場合、個人間のやり取りで、合意すれば、レンタルを始められるというもの。
プラットフォームなので、仲介手数料を取られる仕組みであり、オーナー 15 %、ユーザーは 10 %の手数料を払い、決済するというもの。
機材においてはトラブルがつきものであるが、盗難や破損などの修理費は保証される仕組みも用意されている。個人的にも、一部写真で生計を立てている面もあり、大いに興味がある。
サイトの設計から推測するに、ターゲットの設定は、機材にこだわるアマチュアを狙っているようなので、インスタグラムで集客し、趣味や実益にしているカメラマンなどにも良いのかもしれない。
個人的にもインスタグラムをしているが、ハイエンド機材を使いプロ顔負けの撮影をしている人々も多くいるという事がわかった。
ただ、サイト運営を経験している関係上、商品の人気機材にレンタルが集中するのではないかと思われる。これらの個人間プラットフォームでは、人気になると、その人や商品サービスばかり使われることになる。
まあそれでも、プロカメラマンや 個人でも、遊休時間を多く持て余している高額な機材が世の中に多く流通している。
それらを有効活用することで、高額で手が出ない層に向けて、購入することもなく、レンタルで利用できることで、顧客の立場を考えた経済的に優しい仕組みは、今後注目したいところである。
FOOD PASSPORT:月額費用で飲食店の余剰食材を使ったメニューを食べれる
フードパスポートは、2018年10月頃に、大阪で始まった新しいサービスであり、月額 2,980 円で余剰食材をシェアするというスタイルで登場。
2019年4月末頃より、月額 980 円で月10回まで食べられる新ラインを発表していることから、さらに使いやすくった。
関西を中心として、登録された飲食店の食材ロス削減と集客目的のツールとしてアプリが用意されている。
この取り組みは素晴らしい。日本では食材ロス問題が深刻であり、コンビニや飲食系フランチャイズなどの大企業を中心に、作り過ぎの問題は、私たちが日頃から目にしている光景であるからだ。
全国津々浦々、店舗網を張り巡らせたコンビニや大手飲食系フランチャイズチェーンなどが率先して、社会貢献になるサービスを導入するかと思っていたが、今までまったくその動きはなかった。
同サービスは、飲食店側が作り過ぎた料理 や 客のキャンセルなどで余った料理 を撮影。 数量や時間帯を設定してからアプリに出品し、登録したユーザーからの申し込みで、出品された料理を1 日 1 回限定で堪能することが出来る。
サービスメニューの平均単価は、約 500~1,000 円が想定され、客は店舗で 1 ドリンクを注文することが条件であることから、必ず飲食店の売り上げが立てられるようになっている。そこから、関連のメニューを頼むこともあり、単価を引き上げるのは、店側の工夫次第であろう。
店側の取り分は、月額料金の 30% を来店人数に応じて分配する。さらに、その 2 %を食糧支援を行う団体に寄付されるようである。
この取り組みは、集客や仕入れで苦労する個人店や小規模事業者にとっては、良いサービスと思う。それらは、飲食店にとっては生命線であるからだ。
また同時に、広告費と食材原価率を抑制することができ、上手く活用すれば、手堅い経営ができる。
LEBER:医師の空き時間を活用し、患者が医療相談をすることができる
遠隔地にいても、医療相談ができるシェアリングサービスが「リーバー」である。ユーザーである患者が、登録を済ませた医師たちの空いている時間を活用し、寄せられた相談ができるというもの。
目下日本では、少子高齢化と人口減少の二正面の問題を抱えており、深刻な医師不足と高齢者の増加で、医療費高騰が予想されることから、その解決を図るひとつの方法としてサービスが登場した。
政府においても、内閣府が「近未来技術等社会実装事業」に採択するなど、注目度は高く、個人的にも、成長しなければならない事業として見ている。
この企業は、在宅医療事業を行っている心臓外科医が創業者であり、成長分野にいち早く参入し、山師のような儲け主義に走るビジネス優先の経営者ではないところに、現在のところ好感が持てる。
様々な症状である相談件数は増えており、内科や皮膚科を中心に、約 20 種類前後の診療科専門医が登録しているようである。
相談者は、アプリを使い症状と部位を選択。チャットでの対話で問診表を作成し、数分程度で医師からの回答を得られる。
少額を払い、病名が告げられる場合や「自宅安静や病院受診」など様々な助言が得られ、近隣の医療機関、ドラッグストアの案内や薬の処方などの情報もついてくる。
個人的にも執筆中であるが、若干の歯痛があり、歯医者から市販薬を渡され治しているが、ちょっとした相談を痛みがある際に、頻繁に受けることが出来れば、非常にありがたい。
現在の医療機関では、多くの場合、自主的に診察を前提とした治療の予約 や 緊急の治療を要する場合の連絡の際に相談をすることになるからだ。
そこまで行かなくても、ちょっとした腹痛や風邪の諸症状、頭痛や吐き気、ハウスダストなどの喘息 や 使い過ぎによる関節の傷みや腰痛、目の疲れや肩こりなど、医者にかかるままでもないが、軽い不健康状態は、誰にでもある。
近い将来、子供が減り、高齢者が増える日本では、インフラとして必要なサービスとして考えられる。
ただ、同サービスで唯一の弱点として考えられるのが、操作に不慣れな高齢者 や そもそもガラケーなどスマホを持っていないユーザーへの対応がどうかと言う点である。
アプリのサービスに手慣れた人しか使えない点はどうするのかという壁もある。
私のように「必要な時に必要な分だけ医療を受けたい」という潜在的なニーズはかなりあると考えている。
同サービスが、世間に広く認知されれば、爆発的な成長力が予想され、日本市場のみならず、グローバルに対応できる可能性を秘めた素晴らしい取り組みでもある。
シェアリングエコノミーは社会を変革する力がある
今回は、高額機材・食品・医療 など多岐にわたる内容を紹介した。これらの成熟した業界で、ボトルネックとなっている問題点を見つけ、そこにシェアビジネスを組み合わせることで、新しい市場が生み出され、新しい顧客を開拓できてしまうのである。
ちょうどこの記事を執筆中に、食品ロス削減推進法案 が参院委で可決したようである。今回取り上げたベンチャーのなかで、飲食店の食品ロスを減らす企業が登場したことでも分かるように、多くの企業では、目先の利益のために「作り過ぎる問題」が深刻な状況となっている。
自身の企業を維持するために、大量につくり大量に販売し、売上のみを追求し、そこで起こる様々な問題を覆い隠してきたことで、見せかけの成長を演出する企業が多く存在している。
企業は今後、そのような問題と真摯に向き合う時期に来ており、人口が減少している国で、人件費を抑え、数を捌くという仕組みだけでは、とても企業を維持できないのである。
また同時に、現在企業に勤務している方々であれば、高く売ろうとブランド力を磨くというのは良い考えである。
ただ、高くなるということは、人件費を大きく引き上げ、サービスの質を引き上げる必要があり、シェアやリサイクルというビジネスの台頭を許すということもアタマの中に入れておく必要がある。
これら以外にも、ここ数年で、新しいシェアサービスが多く登場しており、リサイクルマニアの私としても、約 20 年前から思っていた時代の流れになってきており、当ブログでも新しいサービスを順次紹介してきたい。
シェアリングエコノミーは、現在当たり前と考えていたことをあっという間にひっくり返すインパクトのある仕組みであり、社会を変革できるビジネスの登場を期待している。
下記は、シェアリングエコノミーがよくわかる書籍であり、大胆な将来予想であり、様々な財やサービスの限界費用は限りなくゼロに近づき、過去に作り出された財やサービスは無料になる。
代わって台頭してくるのが、共有型経済。シェアリングエコノミーが台頭することで、財やサービスが、様々なプラットフォームにより、私たち顧客に届けられるというもの。
参照:限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭
内容「BOOK」データベースより
いま、経済パラダイムの大転換が進行しつつある。その原動力になっているのが IoT (モノのインターネット) だ。IoT はコミュニケーション、エネルギー、輸送の“インテリジェント・インフラ”を形成し、効率性や生産性を極限まで高める。それによりモノやサービスを1つ追加で生み出すコスト (限界費用) は限りなくゼロに近づき、将来モノやサービスは無料になり、企業の利益は消失して、資本主義は衰退を免れないという。代わりに台頭してくるのが、共有型経済だ。人々が協働でモノやサービスを生産し、共有し、管理する新しい社会が21世紀に実現する。世界的な文明評論家が、3Dプリンターや大規模オンライン講座 MOOC などの事例をもとにこの大変革のメカニズムを説き、確かな未来展望を描く。21世紀の経済と社会の潮流がわかる、大注目の書
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