【ラグジュアリー戦略】マーケティング逆張りの法則:創業した本拠地以外の製造工場に移転してはならない
大量消費市場においては、原価を削減するのは不可欠であり、そのために工場を移転することが必要になることがある。
ラグジュアリーマネジメントでは、こういった戦略を適用しない。誰もがラグジュアリー品目を買うときに、文化やお国柄が浸み込んだ製品を買おうとしているのである。その地域に根ざしている事が、ラグジュアリー品目の知覚価値を高める。
ブランドを本国内で製造する意味を知らなければラグジュアリーとは言えない
BMW の入門シリーズである3シリーズを除いて全部のクルマをドイツで造っている。ミニは英国で製造し、その他主力車種やエンジンをドイツで生産し続けている。
なぜならブランドアイデンティティの心臓部はドイツ製でなければならないからだ。どの BMW を選ぶ場合も、基本的にはドイツ製を選びたいのが真の顧客である。
BMW 3シリーズも含め下のクラスも工場は米国になり、3シリーズの幾車種は、タイや別の国でも生産されている。これらの現地生産車種は、もはや本当のラグジュアリー製品ではなくむしろ手が届く製品としての役割を果たしている。
個人的に言うと、3シリーズは欲しいクルマであって、若い時には良く憧れた最後の世代であろう。ショールームまで試乗した思い出が懐かしい。
3 シリーズは、入門編のクラスであるが、やはり同じく並んでいる 5シリーズをみると、5シリーズを欲しくなってしまう。ここからが本物の BMW なるのかとその違いを痛感した。
高価格のついた東南アジア・中国製を高品質であろうと欲しいとは思わないのが顧客心理である
ラグジュアリーブランドというのは、本国の製造コストが上昇しようが、生産にはさほど苦労はせずに、その分の追加コストを顧客に転嫁することに何の困難もないのである。私自身も、ラグジュアリーブランドが値上げされていたとしても、憧れや夢の部分が消えない限り、さほど気にならないと思わせられた。
読んでいる方も考えてもらいたいが、もし普通の企業や飲食店などの定番のメニューが何百円かの値上げされただけでも、ここからサービスを受けるのは損になる気がすると思わないだろうか。
もしあなたが欲しくて欲しくてたまらない好きなブランドが、何万も値上げをされても、さほど気にならないあたりが、ラグジュアリーの凄みが分かるわけである。
もし欧州系のラグジュアリーブランドの定番モデルが、生産拠点を東南アジアや中国に移した場合、あなたならそのブランドを購入するだろうか。分かりやすく言うと、メイド・イン・インドネシアやメイド・イン・チャイナのヴィトンのモデルを買いたいかと思うかである。
せいぜい隣国のメイド・イン・スペインあたりが限界であろう。その国のイメージは非常に重要なファクターとなり、工場を移転させないということは、生産と同じくらい、創造性に大きく関わる問題である。
創業地のそばに製造現場を持たなくなるようでは、素材やそれをラグジュアリー製品に昇華させる事ができる作業方法に目が届かなくなり創造性は暴落してしまう。
チャイニーズの工場労働者と欧州の伝統のマイスターが創る製品では、どちらに高付加価値を見出すか結果は自ずと明らかなのである。
参照:ラグジュアリー戦略―真のラグジュアリーブランドをいかに構築しマネジメントするか