【ラグジュアリー戦略】マーケティング逆張りの法則:広告の役割は売ることではなく夢を見せ常に再創造され持続する姿を見せる

例えばタグ・ホイヤーの広告はどのようなものだろうか?女性か男性の写真と時計の機種の写真が載っている。
この時計についての論評もなければ、宣伝文句もない。売り込みの口上も載っていない場合が多い。秘密めいたいくつかの文言があるだけである。ラグジュアリーでは、夢が最初に来る。販売員の説明は理屈でわかる話であり、二の次なのである。
従来型マーケティングでは、最初になされるべきことは、販売すべき理屈で分かる提案を提供することである。ところが、タグ・ホイヤーの店舗に行けば、本と同じサイズの分厚い冊子を手渡されるという。
ブランドの起源、精巧に調整される工程、独自のデザイン哲学など、タグ・ホイヤーのすべてがわかるようになっている。そのあとに、様々な機種一つ一つについて話が進んでいく。
他のブランドも同様で、ブランドの過去の栄光や神話を散々聞かされた後、その二の次である理屈で分かる信頼性などが説明される。
あなたの周りになくてはならない道具として高い演出や芸術性をもって提供するように努める
例えば上記BMWのブランドが広告を打つ意味を問えば、BMWの夢の操舵性などの機能におけるその他最新装備は、補助的なものに過ぎないということである。
広告を打つことで、ブランドは対象となる顧客と共に持続するという夢の提供であり、神話や神秘性、魔法のような仕掛け、レースでの栄光など顧客が保有する事で成功のイメージを重ね合わせ、顧客に寄り添う、背景・小道具として「なくてはならない」ように映る必要があり、高い演出や芸術性を提供するように努める。
これらは、いかなるラグジュアリーブランドでも極めて重要な要素なのである。
ラグジュアリーは常に夢を再創造させ持続されなければいけない
夢は、常に再創造させ持続されなければいけないという。夢は現実にかき消されていくものだからである。仮にあなたがラグジュアリーを手にいれた場合、夢から現実のものとなる。
保有する事で、夢から徐々に覚めていくのだが、それは保有している現段階のモデルにおいてである。
一般的なマーケティングされた製品は、市場の先頭走者であること、優勢な市場占有率を確保する事であり、大勢の目に触れている事が有利なのだが、ラグジュアリーはこれとは逆である。
つまり、稀少性を打ち出す必要があり、占有率よりも大きな利益率の方が重要であり、夢の再創造における新しいモデルは、前回の夢を引き継ぎながらも、それを上回る夢の生産をして、さらに高値で投入し続ける必要があるのだ。
少ない数ながらも、夢から現実を手に入れた人によって、夢のブランドが公の目に明らかになるが、それを通じて通俗化し、他の憧れる人々に夢を再生産する事ができるのがラグジュアリーである。
数字的に分かりやすくいえば、人の使った中古品でも、大金を積んででも、ブランドの夢の欠片を手に入れたいかと思う事も非常に重要である。
なぜなら過去の夢自体に、高い経済的価値がなければ、現在の新しい夢に、高い対価が付けられていた場合、顧客はその夢を追わなくなるだろう。
なので、ラグジュアリーの広告というのは、見る人すべての人の為に、夢のビジョンを共有化させる為に存在し、決してセールスだけの為に使ってはならないのである。
参照:ラグジュアリー戦略―真のラグジュアリーブランドをいかに構築しマネジメントするか