【ラグジュアリー戦略】マーケティング逆張りの法則:ポジショニングは忘れラグジュアリーは比較級ではない
通常のマーケティングにおいて、ブランド戦略において重要なのは、ポジショニングであり、そのブランド独自で人を納得させる競争優位に立つことである。
自分たちのポジショニングを明確にし、製品・サービス・価格・流通チャネル・コミュニケーションを通じそれらを伝えながら、効果的に売上に反映させる事で企業は成長する。
ポジショニングとは、ブランドの顧客が求める嗜好を創るための差異であり、ブランドが行おうとしているビジネスの源として、標的である顧客を明確にできるという。
企業は、これらに基づき、自社の位置を客観的に分析し、同業他社を比較し、他社がしていない領域を突き、新しい市場をつくるか、他社に競合するモノやサービスで対抗するか、または、全社的にターゲットユーザーに新しいポジションを明確して、全体的なブランドイメージ戦略を打って、同業他社のシェアを奪いに掛かるか。
何れにしても、同業他社の同行を見つつ比較の上で戦略を決めて実践していることが、通常の企業には求められる事である。
通常の企業は昔から変わらず同業他社の比較で企業間の競争をしている

本書ではペプシコーラとコカ・コーラの戦争を例に挙げている。コカ・コーラはホンモノであったのに対し、1930年代に市場に投入されたペプシコーラの方は若者の飲料だというイメージを打ち出したコピーは、コカ・コーラは親だけが飲む製品というイメージを抱かせ、コカ・コーラとの拳闘に勝利したという。
通常のブランドは、市場の流れ・競合相手・到達すべき狙いの消費者の期待を鑑みながら、鍵となる切り口により自らを定義しようとするという。
これについても、同業他社といかに戦い勝利するかという概念でお互いのシェアをいかに奪い売上を増やすかというポジションから未だに変わっていない。
一方、ラグジュアリーほど、このアプローチが相容れないものはないという。ラグジュアリーの場合、重要なのは独自である事であり、競合相手の比較ではない。
ラグジュアリーは好み、創造的なアイデンティティ内から湧き出るクリエイターの情熱を表現したものである。
通常企業が取るポジショニングが示唆するような何かに合わせてではないのである。多くのラグジュアリーブランドが、ポジショニングをまったく重視していない事は明らかである。
最近、シャネル・ヘッドデザイナーであるカール・ラガーフェルド率いるシャネル制作の現場のドキュメントである【サイン・シャネル カール・ラガーフェルドのアトリエ [DVD]】を観たが、ラグジュアリーが同業他社など問題とせず、ポジショニングを無視して、比較から程遠い事がより理解できるであろう。
ラグジュアリーはポジショニングではなくアイデンティティに忠実である
シャネルはアイデンティティを持っているが、メーカー的なポジショニングではない。アイデンティティというのは、分割できるものではなく、交渉できるものでもない。単純にそのもの自体である。
ラグジュアリーというのは最上級であり比較級ではない。競合相手との間合いの中での立ち位置に気にするよりむしろ、アイデンティティに忠実である事を好むという。
大量生産されるブランドは、非差異化、つまり平凡化 (多くの商品と同じと思われる事) を恐れるものである。一方、ラグジュアリーが恐れるものは、模写されることである。
例えば、ルイ・ヴィトンの偽物が多く出回る事は、企業側を大いに悩ませる。また購入を予定する者や購入した者の多くの人々が、自分が持とうとするもしくは、すでに持っているモノが偽物であっては困るのである。
私のブログで多くの人が訪れるのは、大半はラグジュアリーが最も弱点とする、ホンモノか偽物かどうかを見極める方法である。
そのような人々の多くは、偽物を掴まされる事なく、できる限り安く保有したいとそのコスト意識からであろうが、真贋方法を先に学ぶのではなく、先に学び行うべきことは、本店から直接購入し、ホンモノに多く触れる事である。
ホンモノをブランドが出店している直営店から多く購入し多く触れる事で、瞬時にニセかホンモノかの真贋はすぐに分かるものである。
ここからも分かるように、ラグジュアリーは比較ではなく、アイデンティティを重視されている事が、実際の数字で私自身が理解した貴重な経験なのである。
参照:ラグジュアリー戦略―真のラグジュアリーブランドをいかに構築しマネジメントするか