【ラグジュアリー戦略】マーケティング逆張りの法則:ラグジュアリーは売らずに売れてしまうシーンをつくる
売ってはならないというこの考え方は、傲慢という考え方ではなく、ラグジュアリー戦略とはまったくの正反対という事で、要は大量販売戦略を行うなという事である。
通常のブランドであれば、体系的に価格を上げるという戦略を遂行する事は少なく、売上高や顧客を失う恐怖からなかなか踏み込む事ができない戦略でもある。
ほとんどのブランドはあえてそんな危険な事はせずに、一度掴んだ顧客を逃がさないようにはかるのであって、どちらかというと値下げ圧力の方が高まりやすい。
それはもはや、ラグジュアリーブランドの話ではなく、大量消費を前提にした通常どこにでもある企業の取っている当たり前の事象なのである。
大量生産・大量消費をする事でかなり利益を上げている企業もあり、その方法も悪い話ではないが、ラグジュアリーを目指している場合は、してはいけないことなのである。
ライセンスやアウトレットの数を売るための誘惑は常に避ける
ラグジュアリーでは、無理強いして売らないようにすることこそ、顧客との関係性を保つ上で重要な原理なのである。
顧客には、その製品にまつわる物語や事実を話すにしても、その場で購入するように顧客に圧力を掛けてはならない。
また違った方式で販売する場合にも注意が必要である。
【LVMH:ライセンスと自前主義との関係】では、高級ブランドであったいくつかのブランドが、ライセンスに手を染める事で、大量消費の方向性を打ち出し、安売りブランドになった事は、多くの人々の知る事実である。
また昨今では、かつてはラグジュアリー戦略を取っていたブランドが、アウトレットを積極的に行うようになり、自らの価値を落としに行っているが、本体の売上は大きく伸びている事であろう。
こうした戦略の変更は時に、大きな利益をもたらすが、同時にいままで築き上げてきたブランドの価値を大きく歪める事となるのである。
ラグジュアリーは自然に売れてしまうシーンをつくる必要がある
売りたい圧力はどの企業でも当然あるが、売らないように見せて「売れてしまう」という洗練された戦略が、ラグジュアリーブランドには必要である。
定番のモデルは、市場に投入すれば、ある程度のファンである顧客が購入していく。自然に売れてしまうシーンをつくる為に、多額の広告費用とプロモーションは覚悟する必要があるだろう。
ただ多額の費用を掛けても、売りたい気持ちや予算を掛けているように見せない洗練さもラグジュアリーには必要なのである。
参照:ラグジュアリー戦略―真のラグジュアリーブランドをいかに構築しマネジメントするか