オリンパス OM は コンパクト一眼レフという画期的なコンセプトで大ヒットする
今回は、オリンパス OLYMPUS OM-2 AUTO-S 1:1.8 f=50mm について、簡単にではあるが取り上げていきたいと思う。
中古のオリンパスに関しては、ブランドモデルのその大半が、マスマーケットを狙った大衆向けモデルが多く、ヴィンテージカメラ市場でも、ジャンク品を中心に投げ売り同然のモデルも多く、現在でも市場価値のあるモデルは少ない。
いつものように倉庫を整理している最中に、カメラの山の中から、いくつかの稀少モデルと今回紹介する「オリンパス OM-2」が出てきたのである。
同モデルは、書籍やサイトでしか見たことがなかったが、こんな近場で出会えるとは思わなかった。
1970年代早期に「35mm一眼レフカメラ」の認知度とシェアがちょうど広がる黎明期に、プロ用として、ニコンF、キャノンF、ライカフレックス、ツァイス・イコンと競合がひしめく中、オリンパスが「コンパクト一眼レフという画期的なコンセプト」をもって市場に投入し大ヒットしたモデルである。
当時ライバル企業の「35mm一眼レフカメラ」は重くかさばるモノばかりであり、競合と争わず差別化を行いヒットした。
ライカ・ニコン・キャノンとブランドの数は多いが、稀少性のあるカメラブランドは数えるしかない。
それを丹念に調べていくと、ゴミだと思われていたモデルの多くが、オークション市場でも高値を付けていることが分かったのである。
今回のモデルは、軽くレストアして、買取査定を出したところ、思いのほか良い値段が付いたので、現在でもブランド価値のあるモデルと言うことが改めて分かった次第である。
二次相場は、整備済やシリーズのまとめ売りのモデルなどが高値で取引されている
では、さっそく「オークファン」で約 10 年間の落札額をみていこう。
整備済の美品で、約 41,000円ほどの落札が記録されている。平均価格が、約 36,000円前後と考えられる。
同カテゴリーは、最近までは、あまり高騰しているわけではなかったが、現在なぜか同モデルの高騰が見られ微増だが取引が記録されている。
また同モデルが出されても、ジャンク品レベルのモノが多かった事から、整備されたモデルを中心に高騰している。ジャンク品を購入してレストアする業者も影響しているのだろう。
デジタル全盛で、最近ではスマートフォンで事足りる時代に、約 40 年以上前のカメラに、約 30,000 円以上払って新たに不便を買おうとうする動きは嫌いではなく、面白い傾向である。
本体の状態は、整備の必要な状態で、ジャンク品扱いで考えていたので、これだけの高額取引されている事に驚きである。
現状については、全体的に埃まみれで、シャッターが切れず、微細なモルト劣化程度だったので、同箇所を調整し、その他劣化箇所の部品交換を行った後、買取査定への準備を進めていった次第である。
コンパクト一眼レフ市場をつくり黄金期を支え 写真家に愛された「 OM 」シリーズ
オリンパス OM シリーズ について簡単にだが説明していきたいと思う。同モデルの初期型にあたる「OM-1」は、米谷美久 率いるチームにより設計された。
米谷は、オリンパスペン、ペンF、OM-1 など同社の多くの看板モデルの開発に関わった凄腕の開発者である。
同社はすでに「ペン・シリーズ 」を成功させており、一眼レフ市場に切り込みを入れるモデルの開発を進めており、ペンのブームが絶頂期にあった頃、すでに研究開発を終え、生産段階に入った。
米谷は、他の競合企業のつくる一眼レフは重いという問題を抱えていることを課題と考え、より小さく軽量で、内視鏡や顕微鏡とともに、すべてまとめて出せるカメラをという、本格的なシステム一眼レフを作り上げるというコンセプトの下、1972年に市場に投入。
当初、M-1と呼ばれていたOM-1は市場の状況を一変させる。
本格的カメラとして、多くの写真家と連携を取り、ブランド大使として様々な写真家による宣伝を巧みに行っていく。ブランドの市場価値を引き上げる戦略的手法は大当たりする。
デビッド・ベイリー やドン・マッカラン など、その他 大勢の写真家 が賛辞したことは有名である。
オリンパス OM-1は、1979年まで生産された。今回のOM-2モデルは、1976年にその後、続々とシリーズがリリースされていく。
同モデルが与えたインパクトは大きく、ライバルであるキャノンやニコンなどスタンダード向けカメラに加え、コンパクトかつ軽量モデル市場に、競合モデルを投入してくるキッカケを作ったのである。
オリンパス OM シリーズは、カメラ設計に変革を促す役割を果たしたのである。
当時の価格は、50mm F1.8レンズ付き同モデルで、約 52,000円 ( 現在約 20~30万) または 215 ポンド (現在 2,600ポンド)と高額であったが、非常によく売れたのである。
市場は小さく、マニア向けの二次市場だが、微増ながらも需要は増えつつある
上記は、「オークデータ 」で、オリンパス一眼レフフィルムカメラ のカテゴリーで、約 5 年間の総落札数及び平均落札額である。
総落札数は、約 5 年ほどで、約 600~800 件を境に長く横ばいであったが、最近では 約 800~1,000 件に迫る勢いである。
数は少なく見えるが、一般的な稀少モデルとマニア収集が一巡して、よりマニアックなフィルムカメラの需要が高まっている。
また、平均落札額は、約 6,000~8,000 円前後で横ばいに推移しており、コンスタントに数が出ているので、比較的安定した相場が続いている。
今回の買取査定額は、約 29,000円での買取が成立したが、レストアして満足度も高く、非常に良い取引ができたと思っている。
ちなみに、米谷氏の功績と日本の技術者魂に敬意を払う目的から、もう一台保有しているが、それは記念に取っておきたい。
出品されている数は多く、その大半が何か問題があるので、ジャンク品として平均的な価格に落ち着きやすいが、逆に考えると、整備品は高額に売れる潜在的な需要を感じられる。
今回のモデルに関して言うと、オリンパスブランドの中で、メインのモデルにあたり、比較的リセールバリューは高いと考えられる。
その高額に売れてしまう理由を考えるとやはり、同モデルの歴史的な価値、業界に与えたインパクト、コアなファンに支えられたブランド力に起因している。
この手のミドルブランドによるヴィンテージ一眼レフ市場が盛り上がることについては、基本的に歓迎できるのだが、突如下火になる可能性は否定できず、その前に買取が完了して良かったと思っている。