HAMILTON ハミルトン カーキ フィールド H70455863
1892年に創業後、米国鉄道網の発達にともない、高精度懐中時計レイルウェイ・スペシャルが大ブレイク。その後軍用時計として出発したフィールドウォッチの傑作カーキや、世界初の電池式時計で3角形状が個性的なベンチュラ(1957年)。世界で初めてLEDを使用したパルサー(1970年)など、ユニークな実用時計を生み出してきた。1980年代以降は、ハリウッド映画で使用されることも多く、オリジナリティあふれるモデルが世界の人々を魅了している。参照:腕時計大全
- 型番:H70455863/H704450
- 文字盤:ダークグリーン
- ムーブメント:自動巻き(オートマチック)
- 防水:100m 防水(潜水不可)
- 腕回り:約 20.0 cm (最大)
- 素材:SS/ステンレススティール/サファイアガラス
- 定価:約 72,000円前後 (当時)
- ケース直径:約 38.0 mm (リューズ除)
- 厚さ:約 11.0mm
- 機能:シースルーバック/日付表示
- 付属品:純正保存箱/保証書/カーフベルト
スウォッチ・グループ のミドルレンジ、ハミルトンのメディア・タイアップ戦略 日本市場向けモデル
今回は、ハミルトン カーキ フィールド オートマを取り上げていきたい。このモデルは「踊る大捜査線 」というテレビ番組で、織田裕二 演じる「青島刑事 」モデルというセールスポイントのついたモデルである。
同モデルに関しては、その番組の相乗効果を狙ったモデルであるが、ハミルトン のコアなファンからすると、あまりテレビ番組のイメージがつくのはプラスではない。
実用的なモデルに対して、一定数のコアなファン以外、あまり販売増を見込めないモデルに対して、新規顧客を増やす販売戦略を行う場合、メディアとのタイアップを利用する。
その場合、グローバルに活躍するセレブやハリウッド俳優以外、ラグジュアリーブランドとしては難しい場合があり、日本向けモデルとして、下位ミドルレンジのハミルトンが選ばれたのは、スウォッチ・グループ として妥当な選択だと考えている。
では、さっそく「オークファン」で現状の相場どうなっているのか確認していこう。上値が、約 55,000円。下値が、約 34,000 円ぐらいになるようだ。
ハミルトンの相場は、数は少ないが、比較的安定している相場であり、リーズナブルな腕時計ブランドである。下落していても、実用的なブランドなので、現在のところ大きく値崩れする要素はない。
ただリーズナブルなブランドということは、ラグジュアリーブランドの中でも下落基調で、安くなるのは早い部類に入る。
そのように考えると、購入から約 50 %近くの下落基調となっているので、軽くメンテナンスを施してから、売却は早い方が良いと判断できる。
今回は、非常に程度の良い状態で、約 28,000~31,000 円の価格帯で売れれば良いな考え、買取査定の準備を進めていくことにした。
リーズナブルでミネタリースピリッツと実用性を兼ね備えた機能美あふれるモデル
さて、同モデルの注意点について簡単に記しておきたい。多くの腕時計ブランドで見られるドレス路線に反して、過度な装飾を排した比較的オーソドックスで、基本を押さえたストイックなフォルムである。
ミネタリースピリッツ溢れる実用性を感じる秀逸なモデルである。第二次世界大戦では、軍用時計として軍に大量に提供した実績からミネタリー好きな人にはたまらない配色であろう。
青島刑事が、比較的ミネタリーファッションを好む役柄から、ヒューストンのモッズコートがトレードマークという関係上、それに沿った腕時計をと考えた場合ハミルトンが選ばれたのであろう。
ただそれを超えて、このモデルは、クラシックな男性的デザインで、約 38mmのステンレススチールケースと濃い緑色のレザーストラップは、視認性が高く非常に見やすく、どんなファッションでも通用する優れたデザインである。
ブラックのダイヤルは、日付機能と視認性の高いシンプルな数字のマーカーで配され、傷がつきにくいサファイアクリスタルガラスが装備されている。
ケース裏側は、スケルトン仕様となっており、ETA が「ETA2824-2」をベースに、ハミルトン用に改良した専用ムーブメント「ハミルトンH-10 」が装備されている。
H-10は、デイト表示付きの3針用のムーブメント。搭載するモデルによって異なるブリッジのデザインを楽しむことができます。ブリッジにスネイル仕上げとペルラージュ仕上げを施したタイプは、「スピリット オブ リバティ」に。ステンレススチールの精悍な素材感が際立つタイプは、「カーキ パイロットパイオニア」に搭載されています。Hamilton Watch:BASEL WORLD 2014 -4つの新しいムーブメント
全体的にまとまっており、その点は評価したいが、一点残念なのが、全体的に高級感に欠ける点であり、価格の割にドレス感があまり感じられない点である。
実用性を考えて、機能美で見せると考える点においては良いモデルなのだが、そうであれば、もう少し価格は抑えめで、戦略的価格設定としてほしかった。
せっかく自動巻きムーブメントをスケルトン仕様にしていても、もう少しムードと高級感が欲しいところである。価格と質感が微妙に異なるところが、若干の違和感があったが、そのほかに関しては、非常に優れた秀逸なモデルであった。
スウォッチ・グループの中で、人気を得たいブランドの思惑とヒエラルキーに沿った相場に落ち着く
上記は、「オークデータ 」で、ハミルトン カーキ のカテゴリー約 5 年間の総落札数及び平均落札額である。
総落札数は、約 5 年ほどは、約 200件を上下している取引額であったが、2015年7月あたりにでは、約 600 件以上と約 3.0倍に取引数が増えている。
また、平均落札額は、約 25,000~35,000 円と高くても、最高で 約 45,000円 程度とラグジュアリーブランドとして、リーズナブルで狙い目のブランドでもある。
5年間を通して、平均落札数は、微増となっており一方、平均落札額は減少している。ブランド戦略は一進一退といったところである。
今回の買取査定の結果は、約 33,000 円の買取で応じたが、なかなか悪くない数字であり、あまり下落もなく転売できたので、良い買取査定に出たことで納得できた。
ある程度の老舗ブランドを保有して、上手に使い続け、次の人へ受け渡す手順を滞りなく実践すれば、実用的なブランドとはいいお付き合いができる。
このハミルトンに関しての位置づけは、前回【Swatch Group:スウォッチ・グループ、フルライングループとしてのブランド再配置戦略と中価格帯への挑戦 】でもグループ構成の面で取り上げた。
スウォッチ・グループの戦略は、手に届くラグジュアリーで、プレステージ・ラグジュアリ レンジの「オメガ・ブランド」を集中的に売るために、ハイ・ミドルなどの下位レンジがある。
それらのブランドが、下位の顧客層に合わせたブランドを選択できるように、ヒエラルキー化されたブランド群のひとつが、今回のハミルトンであるのがわかる。
ハミルトンに関しては、ミドルレンジに属し、あまり高額にできないお家事情があり、価格帯を過度に上昇していくわけにはいかないのである。
スウォッチ・グループのブランド時計の購入を考える場合、以上のことを理解しておけば、比較的リーズナブルに、ラグジュアリーブランドと付き合う事ができ、自分の懐に合ったブランドを選択できるのである。