不況・人口減少等で構造的な衰退産業
【倒産した会社倒産しない会社の決算書】の大神田氏はこう指摘している。外食は構造的な衰退産業といわれるが、どんなひどい不況下でも、人通りの多い場所に店舗を構える必要性が薄れる事はないが、規模を拡大しようとすれば、借入に頼らざるを得ない為、大きな負債を抱えるのは、この業種の宿命であると指摘している。
外食にはカネが掛かるものであるが、毎月の家計が厳しくなると真っ先に削減されるのが、外食や飲酒である。個人的に言うと、食べにも飲みにも行かなくなって久しいが、あまり良い店が見つからないというのが本音である。
極端に安くマズイか、極端に高く美味しいが、予算が合わない店が多く、良い栄養バランスを揃え、比較的リーズナブルで、たまに高いメニューもあり、何度も通いたくなる店は激減した。
東京や首都圏であれば、そんな心配はないが、地方に行けばあっという間に、良い店は無くなり、フランチャイズ系のチェーン店ばかりになってしまう。不況もあり、そのような意味で、外食や居酒屋などは衰退している典型的なセクターである。
また人口減少も追い打ちを掛け、集客にも苦労し低価格故、回転数を上げなければ、まともに店も運営できないのである。
衰退産業は負債が多くなりブラックの温床になりやすい
そんな衰退産業でも、負債が増えやすく、人件費を抑えながら利益を出すのは至難の技である。比較的ブラック企業が多いのも、この業界の企業である。
ある程度の投資をする場合に、借金である負債を抱える事になるが、負債は何でも構わないかと言えば、そうではない。
現金化しやすい資産を多く抱え、負債額はなるべく少なくして、返済期間が後の方が経営上都合が良い。
こうした借入金のバランスを判断して、集客を効率的に行い、利益率の高いメニューを売り、投資した借入金が焦げ付くリスクを抑える事が、外食経営の手腕が問われるのであるが、借入金のバランスを判断するのが流動比率である。
成長すると早く失敗し歯車が狂い出すとあっという間に業績が悪くなる典型的業界
回転が掛かると早く増収増益になりやすいが一度歯車が狂うと業績を落とすのが早いのが、この外食業界の特徴である。図においてはワタミフードサービスの貸借対照表の一部であるが、流動比率が驚異的に減少してきている。
この流動比率は、流動資産を流動負債で割った比率である。数値が高いほど、借入金の焦げ付くリスクが低く、低いほどバランスが悪くなるといわれる。ワタミは昨今のブラック企業問題で大きく店舗数を減らし、業績も大きく落としてきた。
一度成功した店舗で、その後フランチャイズを行い、店舗数を急拡大させ増やし、規模で圧倒しても、悪い評判が立てばあっという間にひっくり返るリスキーな面も持ち合わせる。
低価格メニュー・フランチャイズなどで急成長した企業には注意が必要になるだろう。増収が続いているうちは良いが、ひとたび下り坂に入り業績を落とせば、銀行が融資返済の圧力を掛けられるのも特徴的である。
それは水物の商売的な要素を融資する側は見ているのであり、早急に資金を回収しなければ、融資した側もリスクを背負う事になるからだ。
そうなれば、企業にとって資金繰りが厳しくなり、店舗の統廃合や事業売却や縮小を余儀なくされ、あっと言う間に企業自体が無くなることが多いのである。
参照文献:倒産した会社・倒産しない会社の決算書