他社や自社の株価における投資尺度は知っておいても損な事はない
株式投資の基本は、良い銘柄を安く買い、高くなったら売る事であるが、その銘柄が割安か割高かを判断し、売買のタイミングをつかむ事が重要となる。その助けとなるのが投資尺度である。
また株式投資以外にも、自社の株価と財務とのバランスでいかに良い時期なのか悪い時期なのかを判断する事も可能である。
個人的に私は、上場していた企業に勤務していた時があったが、自社における財務内容とその株価の推移を観察していくうちに、仕事における変遷にも納得できる事が多々あったわけである。
会社四季報では、これはという会社を見つけても、成長性が高く、収益力も高い企業はえてして株価も高い場合が多い。
就職をひかえる方にも、勤めようとする企業の業績とその株価における評価(割安か割高)かという事が分かれば、また違った印象を持つ事も出来るだろう。
その前に業績が良い企業か悪い企業かという事でも分かれば、進路が悪くなりそうか良くなりそうかなどの指針ともなる。
また同業他社と比べてどうかという事にも非常に有効に使う事もできるだろう。
さらに詳しい内容は【株式投資に役立つ『会社四季報』の使い方】を参照して頂きたい。
PER:株価収益率(倍) 株価÷予想1株当たり利益
利益成長力を評価。低いと割安、高いと割高である。もっとも投資尺度として有名なのが、PERとPBRである。
PERの水準には、何倍であれば妥当といった基準は特にない。PERを重視するといっても、財務体質やROEなどの利益成長力なども加味して割安かどうかを判断する事が重要である。
同業他社での比較や過去のPERなどの相対的な比較も大事であり、来期業績が織り込まれる場合、今期ではなく来期業績を使う。
PERの算出に用いられる一株益は、資産売却やリストラ、株式評価損などの特別損益で一株益が一時的に膨れていたり、へこんでいたりする場合には特殊要因を除いた利益に修正する必要もあり注意が必要である。
PBR:株価純資産倍率(倍) 株価÷1株当たり株主資本
株価が帳簿上の1株価値の何倍あるかを表す。1倍以下は割安である。主に機関投資家が使う指標である。
割安は低PBR銘柄を指す。株主資本の変動は利益水準に比べて小さい為、PBRは安定した値をとる。
市況産業など利益のブレが大きい業種では、PERだけでは投資判断が難しい場合、PBRが補完的に使われる場合がある。
PBRは単に低いだけでは割安とはいえず、PBR=PER×ROEとなり、PERが一定の場合、割安なPBRが修正されてその倍率が高まるためには、ROEが向上する必要がある。ROEが向上する事は資産効率が高まり収益力が向上する。
PBRが低いからといって飛びつくのではなく、業績向上やROE向上期待の強い銘柄に注目する方が良いという。
PERとPBRは投資のモノサシとしてわかりやすく、個人はこの二つを中心に考え、他は補完的に使う方が良いと教えてくれる。
PCFR:株価キャッシュフロー倍率(倍) 株価÷キャッシュフロー
設備投資が大きい会社の比較をする場合に有効。低い方が割安である。
企業活動によって生み出されるキャッシュフローと株価の関係に注目するとどう考えれば良いか。
キャッシュフローには予想減価償却費に当期利益を足したものがよく用いられる。企業が将来の成長に備えて設備投資を増やすと、減価償却費も増加する。
例えば二つの銘柄の株価と当期利益が同じ場合、PERは同じ倍率になるが、減価償却費の多い企業の方がPCFRは低くなる。
正しい設備投資をしている場合、PCFRが低い方が将来の成長力を秘めており、割安と判断できる。
この数字は、通信・電機・精密・石油・ホテルなど設備投資の活発な産業に属する銘柄の比較に適しているという。そのあたりの関係者の方は試してみても良いかもしれない。
PSR:株価売上高倍率(倍) 株価÷1株当たり売上高
赤字会社の株価を比較するときに使われる。低いほうが割安である。
成長セクターに属するが、先行投資で赤字であるという銘柄割安度を判断する指標。
EV/EBITDA(倍) EV÷EBITDA
EV(企業価値):時価総額+純負債 / EBITDA:税引利益+法人税等+支払利息+減価償却費。企業を国際的な視点で比較する場合に使われる。
低いほうが割安である。税制や金利の異なる国の同業種の銘柄を比較する場合に用いられる指標である。
PEGレシオ PER÷EPS成長率
PERと成長性を複合した割安度を評価。1以下が割安である。グロース株の選別に利用され、ピーター・リンチが用いた事でも有名な指標である。
指標を使いこなし投資や就職・取引先・ライバル企業の状況を把握しよう
様々な指標を使う事で、自分が働いているセクターや投資したいセクターの現在の立ち位置が明確になる。
自社と同業他社の比較や、近い将来どのように成長していくのか、もしくはこの企業はもうじき終わってしまうのかなど。
配当性向や配当利回りなどは、また次回により詳しくページを割きたいと思うが、ちょっとした数式を知って使うだけでも、随分と企業の見方が変わることとなるだろう。
肌感覚だけでなく、数字という客観的な指標でおおよそ把握できるようにれば、ビジネスパーソンだけでなく投資家として、企業をより深く見ることができるようになる。
参照文献:【株式投資に役立つ『会社四季報』の使い方】