【ラグジュアリーブランディングの実際:オメガの戦略】高級ブランドからみえる高収益を生み出す 5 つのラグジュアリー戦略

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高価格でも売れ続け、熱烈なファンがいるブランド それがラグジュアリー

 

【ラグジュアリーブランディングの実際:オメガの戦略】高級ブランドからみえる高収益を生み出す 5 つのラグジュアリー戦略

 

今回は、スウォッチ・グループ 及び オメガの戦略を、いくつかの内容に分けて取り上げていきたいと思う。

現在の スウォッチ・グループ は「腕時計ブランドのコングロマリット」となり、世界的に展開している巨大グループである。

プレステージ・ラグジュアリーレンジ から ベーシック・レンジまで、買収したブランドの流通と生産の合理化、再配置戦略を行い、ヒエラルキーつくりながら、ターゲットとなる顧客層に合わせ、各ブランドに、マーケティングと販売のみを行わせる戦略が、スウォッチ・グループの主な狙いである。

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1980年代に、日本勢の時計輸出額と生産額世界ナンバーワンとなり、スイス勢は世界市場を一度失ったが、1980年代後半になって復活を果たし、その後急成長する。

急成長したスウォッチ・グループ について復活を果たした要因に「ラグジュアリー戦略」を展開したという事もあり、昔から知りたい事例が多くあって、それを詳しく論じた書籍を探していた。

そのなかで、前回【「機械式時計」という名のラグジュアリー戦略 】 を取り上げ、書評を公開したが、本書ではなかなか興味深い内容が書かれていた。

そこで今回は、ラグジュアリーブランドの研究で著名な 長沢伸也氏 が編集している【ラグジュアリーブランディングの実際】を参考とした。

本書のなかでは、3.1 フィリップリム、パネライ、オメガ、リシャール・ミルの戦略を取り上げているが、個人的にコレクションが多いロレックス・オメガ・パネライの戦略のみ興味があり、本書を手に取った。

学術研究者が、実際のラグジュアリーブランドの経験値 (実際に身銭を切って購入して保有している) が、どれほどあるのか知る良しもないが、私たちコレクターが知りたい情報の大枠をまとめているので、購入する際に参考となるだろう。

今回は、オメガの戦略として、ピエール=イヴ・ドンゼ 氏が講演を行った内容を自分なりに記事にまとめた。さらに詳しい内容を知りたい方は、本書を手に取って頂きたい。

 

ニコラス・G・ハイエックのラグジュアリー戦略

 

1980年代に、日本勢が 時計輸出額と生産額世界ナンバーワンとなったわけだが、 その結果、スイス勢は世界市場を一度失ったが、1980年代後半になって復活を果たし、その後急成長する。その急成長を支えたのは、ラグジュアリーブランド戦略である。

そのラグジュアリーブランド戦略を展開したのは、ニコラス・G・ハイエック である。ニコラス・G・ハイエックの戦略を分かりやすく言うと、ブランドポートフォリオ戦略である。

 

 

ニコラス・G・ハイエックには、常に企業合併して合理化するという考え方を持っていた。様々な時計企業を合併して、スウォッチグループを設立した。

ニコラス・G・ハイエックは、スウォッチの利益を使って、いろいろなブランドを一つ一つ買収していく。買収したブランドのアイデンティティ と ポジショニング が お互いに競争がないように、ブランドのポートフォリオを形成していった。

プレステージ・ラグジュアリ レンジ、ハイ レンジ、ミドル レンジ、ベーシック レンジと各ブランドをセグメント化し、個々のブランド戦略と合理化を展開。

プレステージ・ラグジュアリ レンジ は、ブレゲハリー・ウィンストンブランパングラスヒュッテ・オリジナルジャケ・ドローレオン・アトオメガである。

ハイ レンジ は、ロンジンラドーユニオン・グラスヒュッテ であり、ミドル レンジは、ティソカルバン・クライン ウォッチ、バルマン、サーチナミドーハミルトンである。

ベーシック レンジは、大量生産と販売が可能な安価な スウォッチフリック・フラックである。このフリックフラック などは、子供向けのスウォッチである。

 

【ラグジュアリーブランディングの実際:オメガの戦略】高級ブランドからみえる高収益を生み出す 5 つのラグジュアリー戦略
Reference:THE SWATCH GROUP (JAPAN)

 

【関連記事 / シリーズ:スウォッチ・グループ】

買収を通じて見えてくる プレステージ・ラグジュアリー構築戦略
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フルライングループとしてのブランド再配置戦略と中価格帯への挑戦

 

ブランドのヒエラルキーを隙間なく揃える戦略を展開することで、 それぞれのターゲットユーザーに向けて、数を売る土壌を手に入れる。

また、様々な企業を買収し合併した後は、 生産部門の合理化を図る。すなわち、 汎用ムーブメントを エタ (ETA) 、高スペックの機械式ムーブメントは、フレデリック・ピゲ【 BLANCPAIN ブランパン・キャリバーの系譜 】など。

生産を一本化し、ブランドの合理化を行い、各ブランドが、自前で生産していた組織を再設計し、グループ全体のブランド時計を生産している。

これと同時に行われたのは、汎用ムーブメントを生産している エタ (ETA) は、生産拠点をアジアに移している。これにより生産コストを下げることに成功し、利益を最大化した。

スウォッチグループの労働者の構成比を参考にみていくと、1983 年には 80 %がスイスで働いていたが、2014 年からは 50 %以下となっている。

では、各ラグジュアリーブランドは何をしているのかと言えば、例えば、オメガは 1985 年、 ロンジンは 1988 年に、研究開発・生産をほとんど行っておらず、 代わりにブランドが行うことと言えば、マーケティングと販売なのである。

 

ジャン・クロード・ビバー の ラグジュアリー戦略

 

あなたがブランドを持ちたい、または、すでに持っているとするのならば、そのブランド戦略で参考になる人物がもう一人いる。

どうすれば時計を高く販売できるか。この難題に挑戦し続けた人物がいる。ジャン・クロード・ビバーという時計業界の伝説の人物である。

ジャン・クロード・ビバーは、マーケティングの天才として、スイスの時計会社の社長、経営者の中でかなりの有名人である。彼は、新しいラグジュアリー戦略を次々と導入した。

ジャン・クロード・ビバー の戦略は、主にブランドの再編成を次々と行ったことである。つまり、ポジショニングアップをしたということである。

最初は、ブランパン、次に オメガ、 そして ウブロ。ジャン・クロード・ビバーが、ウブロのブランド戦略を実施する前までは、 誰もこのブランドを知らなかった。

ところが、ジャン・クロード・ビバーが行った高級ブランド戦略で、世界中で知名度を高めた。

個人的にも、ウブロ を保有していたが、これがなかなか良いモデルが多かったわけだが、ブランドの限定戦略もあり、入手した時はかなりの感動を味わうことができた。

 

【ラグジュアリーブランディングの実際:オメガの戦略】高級ブランドからみえる高収益を生み出す 5 つのラグジュアリー戦略

 

【 腕時計:ブランド・レビュー 】

ウブロ ビッグバン エボリューション
ウブロ クラシックフュージョン ベルルッティスクリット

また、ジャン・クロード・ビバー については、様々な情報が出ているので、下記を参考にしてほしい。

書籍LVMHグループ時計部門プレジデント ジャン-クロード・ビバーの経営学
動向ジャン・クロード・ビバーが第一線を退く 45年の経験を次世代につなぐ
経歴ジャン・クロード ビバーとは – コトバンク

 

【ラグジュアリーブランディングの実際:オメガの戦略】高級ブランドからみえる高収益を生み出す 5 つのラグジュアリー戦略
Reference:(c)TheWATCHES.tv/AFPBB News / marie claire style:時計業界のレジェンド、ジャン・クロード・ビバー(前編)

 

オメガ の戦略を語る上で、まずは「ブランパン」のラグジュアリーブランド戦略をとりあげておきたい。

ブランパン は元々 18世紀から続く時計職人の家で、当初は、高級品を作っていたわけではなく、1735 年から比較的普通の時計を作りを行っていた小さな会社であった。

オメガ は、1961 年に ブランパン を買収していた。当時の オメガ は、生産能力を拡大するために M & A 戦略をとり、 多くの企業を買収しその傘下に治めていた。

しかし、ブランパンの生産設備である「工場と機械」は利用していても、 ブランパンというブランド名は、まったくと言っていいほど使っていなかったのである。

ジャン・クロード・ビバーがオメガに入社して、このブランドストーリーを見つけたとき、どうして誰もこの古いブランド名を使わないのか思ったようである。

 

【ラグジュアリーブランディングの実際:オメガの戦略】高級ブランドからみえる高収益を生み出す 5 つのラグジュアリー戦略
Reference:Blancpain – Manufacture de haute horlogerie

 

その後、ジャン・クロード・ビバーは、オメガを退社し、このブランドを1982年に安価に買収したのである。

古いブランドの歴史と伝統を手に入れて、新会社を設立。 すぐに時計を 発売し「世界最古の時計製造企業」とアピールを開始。

1980年代は、スイス勢、日本勢は、クオーツ時計を競って製作していたが、ジャン・クロード・ビバーは、伝統ある機械式時計だけを作り販売した

ジャン・クロード・ビバーが手掛けた同ブランドの広告宣伝には、このような文面が使われた。「1735年からブランパンにクォーツ時計はない。これからも作らない」という内容である。

歴史と伝統を武器とすることで「職人が作る」ブランドイメージをアピールし、工場やロボットが無機質に製作しているわけでなく、あくまでも伝統に則り「職人が作る」 時計であるとイメージを作り上げたのである。

ジャン・クロード・ビバーは、わざわざスイスの山に本社を作り上げた。そして、顧客をそこに呼んでブランドイメージを伝えたのである。

ブランパンは、スイスで最初のラグジュアリー戦略を展開した事になる。今では当たり前の戦略であるが、ジャン・クロード・ビバーが体系を確立したと言っても過言ではないのである。

 

オメガ からみえる 高収益を生み出す 5 つのラグジュアリー戦略

 

【ラグジュアリーブランディングの実際:オメガの戦略】高級ブランドからみえる高収益を生み出す 5 つのラグジュアリー戦略

 

ラグジュアリーブランド戦略によってオメガは世界市場に復活を果たすことに成功した。ブランドの DNA 戦略、歴史から取り上げた 2 ~ 3 つのイメージを合わせて、いいブランドストーリーを作ることが大事という。

戦略に失敗するブランドは、 メッセージが多すぎるということである。全ての歴史を伝えようとするとイメージは曖昧になる。

歴史の中から、売りになる出来事を選抜して、綺麗なブランドストーリーを作り上げることが重要である。

ラグジュアリーブランドから見えるのは、歴史と伝統は作られるものということが分かる。

以下、オメガ からみえる 高収益を生み出す ラグジュアリー戦略 をまとめるとこうなることになる。

 

【ラグジュアリーブランディングの実際:オメガの戦略】高級ブランドからみえる高収益を生み出す 5 つのラグジュアリー戦略

 

1. の「アイデンティティを強化する」とは、 自分たちのブランドとはどういうブランドであるのか 自分たちの歴史の中から、三つか四つの内容を選んで「自分たちのアイデンティティ」を作り上げることである。

選ばれたブランド・アイデンティティに基づいて商品を開発し、アイデンティティに合うコミュニケーション戦略を展開し、著名人やスポーツなどを選び、流通システムについても、イメージに合った旗艦店などのブランドストアを展開することをいう。

 

 

2. の「技術的優位性を獲得する」 とは、自身のブランドが、高度な技術を有する場合、技術的イノベーションをしているというブランドイメージを創り上げるということである。

オメガは、その一つとして、1999 年にはコーアクシャル・エスケープメントという新しいムーブメントを開発し製品化した。

さらに、オメガの技術的優位性という ブランドイメージを作るため、クロノメーター証明書が必要と考え、クロノメーターの申請を復活させたりしている。

つまり、イノベーションのためのイノベーションではなく、マーケティングのためのイノベーションを展開することで、 他のブランドとの差別化を図ることができるのである。

 

 

3. の「歴史と伝統を武器にする」とは、オメガの深い歴史をイヤーイベントなどでアピール。例えば、1998 年と 2007 年に、コミュニケーションツールとして社史を出版している。

普通社史を販売すること自体が少ないわけだが、歴史のあるブランドという事を宣伝することができる。

また、ロンドンではオメガの ヴィンテージ・ブティックを開設。2007年には、オメガの熱心なマニア や コレクターのためにオークションを開催し、歴史的に価値があることをアピールしている。

さらに分かりやすい歴史を使ったブランド戦略としては、 一つに月面着陸という事実がある。 NASA は、オメガを月面着陸計画で正式にブランドを選び、他のブランドではなくオメガを選んだという「過去のブランドイメージ」を今でも使い続けている。

 

 

4. の「強力なブランドアンバサダーを立てる」とは、ハリウッドスターなどの著名人を立てることである。

いわゆるブランド大使であり、 オメガは、グローバルの映画スター「ジョージ・クルーニー」を使った広告を世界中で展開している。

一方で、各地域で、ローカルアンバサダーも利用しており、インドでは、俳優の「アビシェーク・バッチャン」を起用し、 欧米諸国では彼を広告では使われていない。

アジア や 特にインドには、ジョージ・クルーニーだけではアピールしておらず、グローバルスター と ローカルスターの組み合わせを行う事で、一番効果的な宣伝を行っている。

歴史とアンバサダーを同時に使うブランド手法としては、歴史をアピールするためのイベントやパーティーを頻々に開催している。

こうしたイベントを頻々に、世界のどこかで開催しており、間接的にブランドイメージを高めている。これには、すごくお金のかかる話であるが、ラグジュアリーブランドを作るための投資なのである。

 

 

5. の「どのようにどこで売るか決める」とは、販売網の再編成、どのようにどこで時計を販売するかを決めて、ブランドのストーリーを伝えるために、店舗のデザインや世界観をブランド側で完全に管理することである。

たまに、新興ブランドなどで、販売数を伸ばすために、代理店を介したり、色々な店で販売したり、さらにライセンス販売に手を染めたりするブランドがあるが、ブランドの世界観を壊しかねない販売先に委ねることは、ラグジュアリー戦略上ありえないことである。

ブランド側が「どのようにどこで販売するか」すべて管理する事で、歴史と伝統、ブランドの世界観を保つことができる。

 

【関連記事 / シリーズ:オメガの戦略】

安売りから高級ブランドへ流通ネットワークの再構築とブランド再生 3つの正統性

 

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【ラグジュアリーブランディングの実際:オメガの戦略】高級ブランドからみえる高収益を生み出す 5 つのラグジュアリー戦略

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オメガは、低迷していたブランドであり、スウォッチ・グループの中で、最も再生に成功したブランドである。

スウォッチ・グループの経営戦略は、買収によりフルラインブランド体制を作り上げ、ブランドの合理化を行い、ヒエラルキーに沿った再配置戦略を取りながら、価格帯別のブランドを用意することで、顧客の取りこぼしを無くす戦略である。

手に届きやすいラグジュアリーを集中的に売る手法は、驚異的な顧客増を招き、同グループの成長を加速させたのである。

日本においても、同グループ戦略が、大いに参考にすることができるが、バラバラになっている企業同士がひとつのグループとなり、力を結集できるかどうかである。

例えば、伝統工芸品を作る職人を抱える零細や中小企業は、自社が単独で企業活動することが多い。

 

 

零細や中小企業の集団を取りまとめて、企業の集合体を形成。日本版「 LVMHLVMH のビジネスの手法とコングロマリットの完成】」のような資本会社を生み出しても良いかもしれない。

生産は、職人集団が行い、親会社は、マーケティング、販売、流通をそれぞれ分業しながら、グループ企業として世界市場で戦うなど。

日本でモノづくりを行っている多くの企業は、ラグジュアリー戦略を展開できる土壌を持っているが、ブランドを活かしきれていない場合が多く、また、時代に取り残され、衰退する産業も多く聞く。

今こそ、ラグジュアリー戦略を導入し、ブランド力を引き上げ、高価格、高付加価値の商品で世界を目指して欲しい。

 

【ラグジュアリーブランディングの実際:オメガの戦略】高級ブランドからみえる高収益を生み出す 5 つのラグジュアリー戦略

 

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参照ラグジュアリーブランディングの実際―3・1フィリップリム、パネライ、オメガ、リシャール・ミルの戦略



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