【Swatch Group:スウォッチ・グループ】買収を通じて見えてくる プレステージ・ラグジュアリー構築戦略

【Swatch Group:スウォッチ・グループ】買収を通じて見えてくる プレステージ・ラグジュアリー構築戦略

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矢継ぎ早の買収による”プレステージ・ラグジュアリ レンジ”の完成

 

【Swatch Group:スウォッチ・グループ】買収を通じて見えてくる プレステージ・ラグジュアリー構築戦略

 

スウォッチ・グループ の再配置戦略は「最高級ラグジュアリー」と「手の届くラグジュアリー」あるいは「新しいラグジュアリー」との差別化を強化するものだった。

この手の経営戦略では、欧米系コングロマリット 企業でも同じような手法で売りに出されている。

私のブログでも、過去 LVMH  や Victoria Secret を有する L Brands  など取り上げ、リシュモン ケリング などの傘下ブランドのレビューも広く取り上げている。

つまり、ブランドごとに「顧客層」を絞り、購入可能な層に広くアプローチできるようにブランドを変容させていく戦略である。

その中で、プレステージ・ラグジュアリーレンジと言われる「最高級に位置する」ブランド郡は以下のとおり。

オメガ ブランパンブレゲグラスヒュッテ・オリジナルジャケ・ドローレオン・アトハリー・ウィンストン

上記「最高級ラグジュアリー」は、少数の社会的上流階級層に向けられ、極めて高品質な製品をカバーする。

 

【Swatch Group:スウォッチ・グループ】買収を通じて見えてくる プレステージ・ラグジュアリー構築戦略

 

一方、「手の届くラグジュアリー」あるいは「新しいラグジュアリー」は、ラグジュアリーとして販売されながらも、幅広い顧客層にとって金額的に「手の届く」ものを意味するという。

製品の区別によって、異なるセグメントを対象とし、ラグジュアリーの排他性と一般化に基づく並列戦略を進める事が可能にするように進められたわけである。

この解釈は、下位の安価なセグメントで、大きく数量をカバーし、大量生産を可能にして、売上の安定化を図りながら、肥大した組織を維持できる。

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また、最高級ラグジュアリーのセグメントで、技術力の維持と向上を図りながら、高価格のモデルを販売を可能にする。

優秀な技術者の確保、伝統ブランドの存続、プラットフォームや生産システムの共有化や利益の向上と、すべてにおいて、再配置戦略を展開する事で、成長が可能になるのである。

そうすることで、グループシェアの最大化を図る事が可能となり、一大グループを形成する事で、その分野の支配権を握ることができるのである。

今回は、そのあたりに至る経緯を追いたい。スウォッチ・グループについては、個人的にも昔から知りたい事が多くあり、それを詳しく論じた書籍を探していた。

探していた書籍の中で、ラグジュアリーブランドの研究の第一人者である長沢伸也氏が監修及び訳を担当している【「機械式時計」という名のラグジュアリー戦略】を参考にしながら、自分なりにまとめておきたいと考え記事とした。

ご興味のある方は、本書を手に取って頂きたい。

 

初期の戦略は、オメガブランドのみを最高級と位置づけるが失敗

 

【Swatch Group:スウォッチ・グループ】買収を通じて見えてくる プレステージ・ラグジュアリー構築戦略

 

スウォッチ・グループは、早い時期から自らのブランドを最高級に位置付けするように画策する。

1984年にはオメガで、創業者の名を冠した「ルイ・ブラント」というコレクションを発表したのがはじまりである。

市場に新しいラグジュアリーのサブブランドを投入するのは、難事業かつ莫大なコストが掛かり、試みは失敗に終わっている。

そこでスウォッチ・グループは、自前でブランドを立てる戦略を見直し、既存ブランドに矛先を向ける事になるのである。

この手っ取り早い戦略は、過去に歴史と栄光があったが、凋落したブランドの買収を行い、現代流に復活を行い、商品の売価を引き上げるという戦略なのである。

 

最高級を獲得する為の手っ取り早い戦略、既存ブランドの買収

 

【Swatch Group:スウォッチ・グループ】買収を通じて見えてくる プレステージ・ラグジュアリー構築戦略

 

スウォッチ・グループが、自らを最高級市場に位置付けされるために採用した戦略として既存の老舗有名ブランド企業の買収である。

有名ブランドの買収は、コストの観点と経営的な独立性を保ちたいと考えた場合、買収戦略は、少し知恵をひねる必要に迫られる。

スウォッチ・グループを率いるハイエックCEOは、ビバーのブランパンをすでに手に入れており、比較的成功していた。

この買収に範を取り、当時知名度の比較的低いブランドを買収し、それを改造するという手法で、90年代には、最高級の位置付けを獲得した。

 

【Swatch Group:スウォッチ・グループ】買収を通じて見えてくる プレステージ・ラグジュアリー構築戦略

 

スウォッチ・グループは、レオン・アト、ブレゲ、ジャケ・ドロー、グラスヒュッテ・オリジナルといった 4 つのブランドを99年~2000年の間に矢継ぎ早に買収を完了させてしまう。

この 4 つに共通するのは、いずれも、長い伝統と一流品として名声を誇る企業ながら、世界的な成長企業を持つ産業グループに組み込まれていない事であった。

 

最高級だが”売るための戦略”を持たない一流ブランドのみを狙う

 

【Swatch Group:スウォッチ・グループ】買収を通じて見えてくる プレステージ・ラグジュアリー構築戦略

 

メジャーではなく、マイナーであるが、過去には伝統と栄光、技術的に一流を誇るが、現在は凋落し、ファンドや投資会社・製造会社に利用・翻弄され、落ち目であった高級ブランドを比較的安価で買収している。

その結果、非常に速いスピードで、ラグジュアリーレンジをほぼ完成させてしまったのである。4社の買収には、共通する戦略が用いられている。

スウォッチ・グループは、小売ネットワークが乏しく、特徴的なグラフィカル・ラインを持っていないという、マーケティング面に弱点を抱えた一流ブランドに狙いを定めたのである。

そこで買収した個々のブランド戦略は、比較的同じ手法で進められる。

ブランドを象徴し、トレードマークになりうる「顔であるデザイン」を定め、これらを自社が持つ世界的規模の小売ネットワークに組み込み、グローバル・ブランドへと成長させたわけである。

これらの 4 つのブランドをスウォッチ・グループに統合する事で、生産の合理化が促進されたようである。2000年代を通じて、最高級ムーブメント製造が、グループ内で再編成され、集中管理がなされてい く。

 

宝飾部門への挑戦は失敗し、既存トップブランド企業の買収で完成させる

 

 【Swatch Group:スウォッチ・グループ】データからライバルを見る全方位戦略でシェアを拡大する世界で唯一の時計ブランド

 

最後に位置づけられるのは、宝飾時計のブランド戦略である。高級セグメントで、最も売価と利益が上がるのは、宝飾を施した高額時計の販売数量を上げる事である。

宝飾と腕時計においては親和性が非常に高く、腕時計ブランドとしては、何としても宝飾時計を扱いたいと思うものである。

宝飾を扱うことで、高級ブランドをさらに「手に届かない憧れ」を醸成することが可能となり、これらを購入できる富裕層に上手にアプローチできるのである。

この手法においても、同グループは買収やアライアンスなどによって、実現させることを主眼におかれた。

 

【Swatch Group:スウォッチ・グループ】買収を通じて見えてくる プレステージ・ラグジュアリー構築戦略

 

買収した企業で、高級ラグジュアリーのデザイン及びマーケティングに関して得たスキルを活かし、07年には、米国のティファニー との間で、ラグジュアリーな宝石商の名を冠した時計生産の契約を結ぶ。

しかし、スウォッチ・グループは、ティファニーが時計生産に十分重きを置いていないと見えた為、11年には、早くも契約解消となった。

スウォッチ・グループの宝飾市場の挑戦には、その目標を捨てず、ブレゲ や オメガなどグループの時計ブランドに、ジュエリーコレクションを投入するが、当初から期待したほどの結果を出せなかったようである。

2000年初頭には、宝飾セグメントに位置づけられたレオン・アトのコレクションはあまり上手くいかず、事業的には失敗に終わっている。

また、時期も非常に悪いことも影響しており、08年から09年の世界金融危機の影響で、トゥールビヨンがショップから徐々に姿が消えていった。

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競争力のあるジュエリーウォッチの立ち上げは、極めて難しい事業である事が証明されたわけであり、スウォッチ・グループは、また戦略の変更を迫られていく。

数々の戦略で手痛い経験をしながら、既存企業のブランド買収を諦めず、宝飾部門でトップレベルのブランドの買収に動き出す。

スウォッチ・グループにとって、自ら宝飾ブランドをいちから作り上げるよりも、高級宝飾ブランド企業を買収する方が、戦略として適当と思われたようである。

ライバルである LVMH が、11年にブルガリを買収すると、同グループに残された買収できる高級宝飾企業は、小規模の時計製造部門のハリー・ウィンストン・タイムピーシーズを有していた「ハリー・ウィンストン」を12~13年に買収したのである。

こうしてみていくと、自前で用意する方がコストや生産、経営効率の面からメリットが多いが、扱う商品の売価が富裕層を中心に販売を行う場合、老舗を買収する手法が世界では多く取られている。

なぜなら、その伝統的な歴史と信用並びにブランドネームは、長い年月を掛けて、顧客との信頼を築く必要があるからだ。

自身が保有する事業で、多くの収益を上げることが出来る場合、そのカネで時間を買う方が、リスクも少なく儲けが大きい場合が多く、買収という手法は非常に理に適った戦略なのである。

商品価格が1,000円や2,000円程度の安物を売るのとは次元が違い、超高級時計を売る必要上、顧客が出会うブランドは「何でも良い」というわけにはいかない。

顧客がアプローチするその窓口は、超高級と顧客に認識されている必要があり、それだけラグジュアリーブランドにとって、暖簾 とは重要なのである。



About PG編集:道長

食べる事と寝る事に一生懸命な旅人。 世界は感染症や戦争で混沌としておりますが、平和になったら平和な国を旅をしたいと準備しております。 先代の管理者様より、サイト管理・記事制作を委任しております。 ※現在は写真提供をして頂いております。

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