鹿児島が誇る伝統的な「かめつぼ仕込み」による 幻の焼酎 森伊蔵

森伊蔵は、日本の鹿児島県垂水市に本拠を置く酒造メーカー・森伊蔵酒造より発売されている芋焼酎のブランドである。鹿児島産の有機栽培のサツマイモを原料とし、手間の掛かる伝統的なかめつぼ仕込みにより生産している。イモ臭さを除去したまろやかな味を特徴としている。「幻の焼酎」として知られる。「魔王」「村尾」と合わせて「3M」と呼ばれる。森伊蔵- Wikipedia
今回は、鹿児島が誇る幻の焼酎として名高い「森伊蔵」について簡単にではあるが取り上げておきたい。
前回も「【黒木本店:百年の孤独 日本酒の買取を通じて分かったプレミア化する麦焼酎、高騰する取引市場と蔵元の秀逸なブランド戦略 】の件」でご紹介したが、この銘柄と出会うことになったのは、私自身が元々酒屋に少し勤めていた時からである。
その時に様々な出会いを通じ、ある仕入れ業者 (現在は倒産) さんと昵懇 (じっこん) となり、プレゼントでお酒を頂く事が増えたことに起因する。
その際、上記の知人以外にも、様々な知人を通じプレゼントで貰ったり、購入したりといろいろな機会があり、多くのお酒を飲めずにいた。

いつか飲むつもりで保管棚に飾り、眺めているのだが、生来お酒に弱くあまり量を多くたしなめない事と単に飾るのが好きなのか変な満足感を得てしまい飲みきれないお酒がたまってきており、物理的・資産価値的な問題で、そろそろ売却を考えなければならなくなってきた。
この森伊蔵は、2015年古酒市場の盛り上がりで、古酒の大量処分をする時期とも重なり、森伊蔵と共に、それ以外の銘柄 約 100 種類程度を売却した際の話である。
古酒市場が始まる前、その稀少性の高さから高額に取引されている日本酒の代表的な銘柄なのが「森伊蔵」である。
同銘柄に関して、当ブログを読んでいるユーザーさんから「取り上げて欲しい」ということで、新品定価から考えると、驚くべき買取査定であったので簡単にではあるが、記録をまとめることにしたのである。
大量販売の標的とされる森伊蔵、高騰時の一本あたりの倍率は、定価の約 8.7 倍前後
森伊蔵は、上品で甘味のあるまろやかな味わいで、飲みやすい銘柄であり、外装デザインを一目見て「森伊蔵」のブランドという認識に優れ、基本を押さえた優れたパッケージデザインである。
低価格なのに非常に上品なつくりなのだが、公式店頭販売価格 1.8 リットル入りで、1本 約 2,225 円前後と驚異的に安価な価格設定である。
だが、きわめて確率の低い抽選を勝ち抜かなければ手に入らない限定戦略がブランド化を生み、価格が高騰し一種のバブルを起こしている。
では、さっそく 「オークファン 」 で二次市場をみていく。取引は、過去約 10 年間の高額取引データである。

上記を見ると大量に販売されていて、最高価格帯を見ると、日本航空戦略モデルが、最高で約 36 本をまとめて販売されている。全体の取引を通じて見られたのは、日本航空戦略モデルのまとめ売りが多い。
これについては、おそらく比較的入手しやすさというのが原因として考えられるだろう。またまとめて大量に売る事で、業者間取引のような行為もあり、大半が酒販免許を取った買取業者の活発な取引が見られる。
つまりは、酒並びに中古品買取業者が全国的に買取、オークション用として、一か所に集約して、まとめて販売されるスキームが考えられる。
今回買取査定したのは、1.8 リットル入モデル 1 本 と 日本航空戦略モデル 720ml の 1 本である。1.8 リットル入モデルの買取査定は、約 15,000円。720mlモデルの買取査定は、約 10,000円程度となった。
交渉はせずに言い値で買い取ってもらった次第である。1.8 リットル入モデルの買取査定については、定価の約 6.74 倍である。ざっとオークション市場を全体的に見た高騰時の一本あたりの倍率は、定価の約 8.7 倍前後に跳ね上がっていた。
上記の傾向から、1.8 リットル入モデルでは、約 18,000~20,000円の平均価格帯で落ち着いてくるようである。そう考えていくと、利幅を稼ぎたい業者のまとめ売りの理屈も辻褄が合ってくる。
ハイクラスの顧客を獲得する日本航空ファーストクラスでのコラボレーション戦略
前回の取り上げた「百年の孤独 」の件については、レミーマルタンのブランド戦略の一部を借り、容器である瓶がバカラ・ブランドとして、他のラグジュアリーブランドの霊気を借り世界限定 500 本として供給量を絞り、稀少性を引き上げて販売を行った事を取り上げた。
森伊蔵に関しても、その生産量の少なさから、限定戦略を取るしかなく、増大し大量の追加注文に関しても応えることができずに、抽選という方法を使って限定戦略を推し進めた。
前回、ラグジュアリー戦略の記事「【ラグジュアリーブランド戦略】マーケティング逆張りの法則 需要を支配し増える需要に応えてはならない 」でも取り上げたが、フェラーリでも困難な戦略を取っている。
供給量を絞りコントロールし、需要を支配することで、質の高い超高額に売るためにスーパーカーを作り、ブランド力をひき上げる手法がある。
ところが、日本酒をつくる蔵元には、この供給量をコントロールしても、高価格で売るつもりがないというところに、当初戦略的ではなかったと考えられるのである。
日本航空ファーストクラスでのコラボレーション戦略では、ファーストクラスでの森伊蔵が飲み放題であり、まさにドリンクバー感覚で飲めるようにしている。
これについては、非常に賢明な戦略である。飛行機のファーストに乗れるハイクラスの顧客を日本航空で選別し、機内で試飲会を常に開いていると考えればわかりやすい。
一般的な販売をせずに、百貨店での申し込みや、日本航空での申し込みは、顧客の属性をある程度把握が可能で、長く顧客と信頼関係を築く方法がうまくとられている。
量販店や安売り店などに大量に卸す手法の真逆を行きながら、一般では手に入らない限定戦略でブランド力を引き上げることで、蔵元を存続させる類まれな秀逸な戦略が長く取られていると考えられる。
数々の問題などに狙われるが、それが高級ブランドとしての証明
昨今に見られる大半の古酒市場は、2015年あたりの中国人の爆買い付近から始まっており、それを契機に、多くの古酒買取業者が乱立し、高騰の波を形成してきた。
ただその中で、長年高額に取引されているのが、森伊蔵であり、数年以上さらに前から高額に取引されてきているのである。
多くの古酒は、手に入れやすさを重視し、流通を拡大することで、シェアを広げるものであり、家庭には飲み切れない古酒が多く保有され、長期間行き場を失っていたのである。
古酒が売れると分かると、一斉に家庭に蓄積された古酒が市場に出回り、二次市場が形成されることとなった。家庭での保管などの様々なコストを考えれば、即買取した方が賢明と判断されたのである。

そんな中、長期間高価格を維持しているのが上記「オークデータ 」から見える「森伊蔵」の過去 約 5 年間のカテゴリーの総落札額と平均落札額のデータである。
上記、総落札額を見ると、年末あたりに総額が急上昇しており、お酒を飲む年末の時期に最も取引されているのである。
また、平均落札額を見ると、数年前から約 20,000円~ 25,000円の間で推移している。平均の水準では、1.8 リットル入モデルの約 11.2 倍前後あり、驚異的な流通の歪みが見えてくる。
その強烈な流通の歪みから、ブランド商標問題 や オークションでの偽装事件 、現在でも転売業者による高値取引と、数々の問題が引き起こされている。
その稀少性から、二次市場では、転売や資産保有目的の中国人やその他業者などの消費によって支えられているようなデータである。
ただ、逆に考えるとそれこそが高級ブランドのブランドたる所以であり、高値でも欲しい人がいて、高い需要を長い間維持してきているということは、コアなファンに長年支えられているともいえる。
突如作られた古酒市場の波は、森伊蔵の場合はすぐに消えるとは思われず、高騰の波が消えるとすれば、ブランド元自体が量産化と事業拡大を狙うようになり一般でもすぐに手に入れる事ができるようになってからだろう。
この手の高級酒に関しては、オークション市場などの取引を通じす、順番待ちになるが蔵元に直接申し込む事を勧める。データからみても、オークション市場では、明らかに高額で、確率は低いが申し込みをする方が良い。
また、さらにコストを考えるのであれば、日本航空のファーストクラスに乗り、空の旅を楽しみながら、そこで気に入れば注文したり、ブランドを楽しむことを勧める。
その方が、価格的にも良心的で、高額なブランドを経験を通じた満足度がさらに上がると思うからだ。