堅実な経営であるが、個人需要の取り込みと海外・新分野への参入が課題
シャッター業界というのは、基本的に面白いと思っている。シャッターは誰でも一度は見る「風景となっている」優れた建具である。開閉収納も可能で、防犯から防災まで幅広く、外と内の領域の最先端の位置につけられ、耐久・耐食・サビや汚れ、防水にも優れる必要がある重要な建具である。
個人的な好きなシャッター会社は、文化シヤッターという企業である。私の場合建設業に長く関わっていた関係上、建材メーカーさんとは比較的多くの企業と懇意とさせてもらっていた。また住宅や工場の施工現場やリフォームの手がけていたこともあり、今回は文化シヤッターという企業を取り上げたいと思う。
文化シヤッターとは、1955年の創業以来、シャッターをはじめ、ビル用建材、住宅用建材を製造・販売する総合建材メーカーである。生活者視点で開発した製品の提供が多く、アイデア商品が多く、開発環境が良い企業の土壌があるのだろう。
快適環境ソリューショングループとして、人・社会・環境に優しい多彩な商品・サービスを多数投入している。事業は主に、シャッター関連製品事業・建材関連製品事業・点検修理サービス事業・リフォーム事業などであるが、如何せんBtoCのアピールとそのセールスが弱く、苦戦している事が伺える。特にリフォーム事業であるテコ入れは必要であり、工事費込みのパッケージ型商品「超 (スーパー) 安心価格」のリフォーム分野は、収益化したいセグメントであろう。
狙いどころの良い「水防」という成長分野
文化シヤッターは、ゲリラ豪雨対策となる製品を次期収益源として狙いを定めている。「水防」用製品の需要も拡大が見込れる事から成長分野であるが、ニッチマーケットには変わらない。止水板「ラクセット」などは、最近の豪雨の際に、銀行やコンビニでも多く見られるようになってきたが、当初は季節商品であった事から、売れるのも特定の季節であったようだが、年間を通じて売れているようである。
同社の16年3月期の売上高は1413億円。主力はそれぞれ4割程度を占めるシャッター関連と建材関連で、止水板や止水扉を含む「防災事業」はまだ5億円程度の存在だ。だが、17年3月期には10億円と倍増させ、21年3月期には40億円という目標を掲げる。防災事業の強化を急ぐ背景には、業界トップ、三和ホールディングスに比べ海外事業に出遅れたという事情もある。海外売上高が全体の4割超(16年3月期)を占める三和HOに対し、文化シヤッターの海外比率は1%未満。国内を深掘りする必要があるとの判断だ。ただ、国内市場への依存は「利益成長余地が大きくない」と取られがち。
参照:日経産業新聞/文化シヤッター ゲリラ豪雨対策、収益源 2016/08/22
海外市場への出遅れは、事業を考えると非常に悩ましい内容である。海外市場での売上においては、慎重に行う姿勢を崩してはならないが、やはり止水板を伸ばす事を重要と考えたい事だろう。
海外市場においては、ベトナム社会主義共和国にシャッター、ドア等を生産・販売する現地子会社を設立し、2010年に新工場を稼働させ、2011年4月にはホーチミン市にも営業拠点を開設するなど、ベトナム国内市場へ向けて積極的な企業活動を展開しており、さらに2013年には、製品の売上拡大を狙い、台湾に広く販売網を有するグライダー社と合弁会社を設立し、台湾においてシャッター事業を拡大させている。
今後も対象国を選び出し、第二・第三の台湾・ベトナムのような国に順次進出する事を進言しておきたい。また下記の図は、雨の多い地域とその国である。マーケットとなる対象国は、やはり雨が多い地域が良いだろう。日本もかなりの雨が降る対象国であるが、雨や冠水に悩まされている国は多くある。
世界の雨の日率マップは、トリップアドバイザーのインフォグラフィックスで世界中の旅の風景が見えるのであるが、対象国として選び出すのは非常に重要となってくる。こうして見ると、雨が多い地域はたくさんある事が分かり、世界中に現地調査員を送り込み、市場調査を経て対象国を選んでいただきたい。
アックア・アルタ:文化シヤッターにとって性能を実証できる有望市場
大潮、低気圧、そしてアドリア海の東南から吹く風「シロッコ 」の3つの要因が重なると、「アックア・アルタ(高水の意)」と呼ばれる高潮がヴェネツィア湾で起こる。このとき、ヴェネツィアの街中まで水が入り込み、特に一番低い「サン・マルコ広場」は水没する。更に今後の地球温暖化によって海面上昇が加速されることとなれば、将来ヴェネツィアの街全体がアドリア海に水没してしまうことが懸念されている。水没を防ぐために、アドリア海との間の3カ所に可動式の防潮堤を設ける「モーゼ計画」が提案され、工事も着手されているが、環境やヴェネツィアの潟に与える影響が懸念されるため、市長や多くのヴェネツィア市民の反対もある。
ヴェネツィア市街の冠水は酷く、欧州市場で実証する際には、最適な実験場である。イタリアに現地法人をつくり、時期が来た時、何件かの協力先で、開発された商品を試してみるべきであろう。イタリア・ヴェネツィアの人々を救うのは、「文化シャッター」の技術かもしれない。
ネット通販事業での成長を図る 3 つの提案
住宅に使う窓シャッターや屋内への浸水を防ぐ止水製品を、ネット販売する。これまでは工務店でしか製品を買えなかったが、販路を拡大することで新たな需要を掘り起こす。シャッター4種類(参考価格11万7千円~)のほか、浸水を防ぐのに使う止水製品2種類(同13万円~)をネット販売している。注文を受けた場合は現地調査を実施し、見積もりを出してから契約する。将来はネット販売用の専用商品を開発することも視野に入れている。製品は従来、原則として工務店やハウスメーカーで注文を受けて施工している。近年は消費者の間で雨戸のリフォームや浸水対策への関心が増し、商品に関する問い合わせが文化シヤッターに多く寄せられていたという。
参照:日経産業新聞/文化シヤッター ネット通販参入 窓シャッター・止水製品「楽天市場」にショップ 2016/04/28
建材をネットで売る企業が相次いでいるが、文化シヤッターも同じく参入を決意したようである。ネット通販で大きく伸ばす際に、注意すべき3つの提案をしておく。これを書いている時点でECは見ていないので、すでに行なっているのであれば、それに越した事はないが、とりあえず書いておく。
1. 継続する事、新商品のアイデアを常に集める場所とすること
とにかく継続を行い情報発信をまめに行いコミュニケーションを絶やさない事である。各種SNSなど多くのツールを使い、啓蒙活動を怠ってはならない。工事施工の様子や、保証への充実においての顧客の声、新製品の開発の姿勢、また企業の社会貢献活動など、コミュニケーションは常に行うべきである。
また同時に顧客からのアイデアを集める企画を広く募集しよう。アイデアを集める為には、企業が情報を常にオープンする姿勢が重要である。見学会や勉強会などツーリズム的な参加型企画もつくる必要がある。コミュニケーションの専門の部署は必要となるが、これも先行投資と割り切れるぐらい、将来においては重要な部署となる。
2. 技術的に高品質を担保する保証を用意する事
製品の技術的保証は、公認というカタチで担保する事を忘れてはならない。比較的ニッチな分野でもナンバーワン商材を置くことで、選ばれる確率は格段に上がるものである。大会や協会へのお墨付きや、認証はすべて網羅する事。その後にセールスする商品の保証を手厚くする事できめ細かいサービスを個人に提供する事が可能である。
また他の企業との協業を考えていくべきであり、協業でさらに技術的に高品質になり相乗効果を得られれば、さらに良いだろう。例えば工事施工とともに防犯や防災サービスが一体となっていたりプランによってはメンテンスサービスが一回無償で点検など。もうやっているかもしれないが、技術的な高さを武器に様々なサービスが設計できる。
3. 専門的な人材の活用一体的なプランニングを描けるビジョンを提供すること
専門的な人材は、建築家はもちろん、建材マニア的な広告塔も必要となるだろう。最近はなんでも●●芸人やらマニアがいる事から、メディア活動をしている著名人へのアプローチを忘れてはならない。またシャッターの取り付け工事もそうであるが、例えば、企業広告を入れる事で安価になったり、シャッター以外のリフォーム一体型の提案営業で、フルリフォームの案件を増やす営業手順も整備する方が良い。
また事前に、多くのパースやCGなどビジョンを発信しておくべきである。建材においての良さは、業者から聞くよりも、アカの他人である建築家やマニアなど、おもしろおかしく伝える芸人などの方が、個人には浸透するものである。
最後は依存しがちなモールからの脱却を考え、最終的には自社のECなどで多くの案件が取れるようにしておこう。販売手数料や広告費用の面から、コストが安く安価に運営できるように計画を立てておくべきである。その為には大規模なサイトの改善が必要となるだろう。
文化シヤッターが成長セクターに躍り出る為の5つの参入分野
比較的柔軟な企業であり、様々な文化的貢献をしている企業であるが、今ひとつ事業における成長への戦略面が弱い。成長セクターへ躍り出る為には、さらなる技術開発も必要であるが、参入する分野で市場開拓を進める事を忘れてはならない。
企業としては未来に挑戦する姿勢を見せ、新技術をもってブランド力を向上させることも考えておく必要がある。それについては、資金的にも・技術的にも・人的にも「無理だ」と誰もが思う分野である必要があり、戦後日本の大企業になった多くのプロジェクトで「この条件」で実践されてきた。
誰もが「無理と思い無謀と思う分野」を定めてしまい、長期的に研究開発し、それを以てブレイクスルーを起こし、企業の驚異的な成長とさらなる企業改革へと大きく舵を切ることが可能となる。
海外市場へ打って出るのも良いが、これからの成長セクターを側面から支援し、産業において「欠くことのできない重要な建材」としての独占的シェアを取りに行く「未来への重点分野」を定めなければならない。そこで個人的な思い込み程度であるが、参入分野を定め、その分野でどのような商品展開をするのか、ちょっとした想像と未来への提案として考えてみよう。
宇宙セクター:スペースステーションや惑星基地等
宇宙においては、機内・基地内と宇宙という領域が存在する。それこそ命に関わる重要な領域である。その部分には多くの参入するべき領域が多く残っている。開閉において、外より内の環境を守るという部分ではシャッターという建材は重要なファクターなのである。
ロボットセクター:人員の命を守る コクピットの開閉
ロボットにおいては「おいおい冗談だろ」と聞こえてきそうであるが、日本は世界でも有数なロボット大国である。機動戦士ガンダムを観た世代であれば、人員を乗せて動くロボットを真剣に作ろうとする人々は、技術的に製作できるノウハウさえあれば、潜在的に多く存在する。またそれに乗って動かしてみたいというニーズも多い事は、比較的理解はできる。産業として発達すれば、大きな成長セクターになり得る。人員の命を守るコクピットの開閉には、外と内の領域が存在するものである。
太陽光発電セクター:外からのエネルギーを内の環境の改善に使う
太陽光パネルは設置コストが掛かり、投資回収における時間が掛かりすぎる事からあまり普及は進んでいないように見える。知人の家で経験した事であるが、天窓の光の調整において「夏は暑すぎるし、冬は比較的使えるが、天気が悪い日が多く、風雨の当たりが強くあまり使い物にならない」というクレームに近い事を聞いた。
天窓においては「窓とシャッターと太陽光発電が一体化」した建材が無いかと思うのだが、シャッターが電気を貯めることを可能とし、省エネ対策として、うまく使う事ができると面白い。また高い位置でのリモートコントロールが出来て、日中に充電した電力量が分かるとさらに良い。また一体化したモデルが、内蔵された電池などで充電した電気を使う場合、エアコンとの連動で結露対策や、夏の時期の窓の温度を下げる冷却機能もついていると、まさに鬼に金棒である。
海洋資源セクター:海洋資源基地設備における開閉へのニーズ
海洋資源においては、日本が進むべき成長分野である。日本海には様々な資源が眠っており、まさに国策としても良いと思うぐらいの埋蔵量である。掘削が行われ、機械設備を使い、地上へ資源を運び出すのであるが、その際の領域は様々な場面で散見されていくであろう。今後商品開発を進める上で研究を進めるべき分野である。
陸・海・空運セクター:世界中の物流に関わるすべての企業にアプローチする
陸・海・空運はすぐに連想できる重要なセクターである。それこそ世界には様々な物流車両や船や飛行機などがあり、様々な企業へ自社の開発したモデルの受注を進めていくべきであろう。海外市場においてベトナムでの展開が役に立つ事であろう。低コストで、高価格なブランドをつくる最大の機会である。法人需要の大幅な取り組みを海外市場で展開するチャンスでもある。海外市場では、アジアを含め、北米、犯罪の多い中南米への進出は、海外市場での良い市場となる。
防災とエコが国内でのキーワードであるが、技術開発とマーケティング次第で「防犯と犯罪抑制」のキーワードで、中南米市場のさらなる展開で、シャッター事業は急拡大する可能性を秘めた市場である。海外市場での参入は、重犯罪が多い事から、日本の防犯企業と一体開発しながら歩調を合わせ、対象国の資本参加を通じて、国内及びアジアで開発した商品をベースに北米に生産基地をつくり、早い展開を期待したい。
とまあ、言いたいことが山ほどあるが、成長企業への変貌が期待できる優れた企業なのであり、今後に期待したいところである。