建設業の未来投資企業に合致している香川の名門企業
会議では、「建設業の未来投資と課題」について議論が行われました。本日、早速、第一弾として、第4次産業革命による『建設現場の生産性革命』に向け、具体的な方針を決めました。建設現場の生産性を、2025年までに20%向上させるよう目指します。そのため、3年以内に、橋やトンネル、ダムなどの公共工事の現場で、測量にドローン等を投入し、施工、検査に至る建設プロセス全体を3次元データでつなぐ、新たな建設手法を導入します。人手による現場作業が置き換わり、これまで習得するのに何年もかかったノウハウも数か月で身に付けられるようになる。3Kのイメージを払しょくし、多様な人材を呼び込むことで、人手不足も解消します。全国津々浦々で中小の建設現場も劇的に変わります。
参照:平成28年9月12日 未来投資会議 | 首相官邸ホームページ
まずは気になるニュースである。今回は政府の戦略に基づく基本方針が首相より出されたようである。未来投資会議では、まず第一弾「建設現場の生産性革命」で掲げられているが、政府では、建設事業におけるハイテク化を推進していく方針であるようだ。
建設業のハイテク化はかなり遅れていて、公共に近い、大規模な現場での利用は比較的行われているが、大半の現場ではまだまだローテクな場合が多く、時代に取り残された感がある。そのローテク技術で業績を積み上げている企業が多く、とてもじゃないが、ハイテクを導入できる企業は限られている。
なぜならハイテクを開発しても、ベースとなるインフラや技術をワンセットで現場で持ち込める企業は限られており、できる企業も僅かである。そこで今回は、私の祖母方の地元香川にある業界の人々しかあまり知られていない隠れた優良企業のタダノを投資家っぽい目線で成長戦略を記しておこう。
私の祖母のルーツであり、言うなれば田舎の企業であるが、地元での貢献度は非常に高い。なので、その御礼を兼ねていかに優れているかを考えていこう。
知名度とブランド力向上が得られる相乗効果の高い戦略事業:東京五輪を見据えたスポーツインフラ事業
スタジアムへのスポーツインフラの需要は一定の割合で存在する。なければカスタマイズして作れば良いのである。例えば、クレーンを使い、ありえないカメラワークを実現するのも最近では行われているが、観客施設への冷感設備の開発はどうかと考えている。
あれだけの人数と照明では、非常に熱い事が予想され、それこそ汗だくで応援しなければならない。健康上の理由から観戦できない人々も出てくるであろう。熱を帯びた観客へクレーン技術を使い、ミストシャワーや、冷風を届けてみてはどうかと考える。
夏の観戦はとにかく熱気があり、観覧している人々をサポートする「涼を提供するクレーン」である。「自社のロゴ」は、広告宣伝効果もあり、ブランド認知度があがり一定の効果を生み出すであろう。スポーツ施設の内と外に「涼を提供するクレーン」の開発は長い目で見て、良い投資であり、スポーツ需要が続く限り、海外市場でも通用する設備である。
バスケコートなどの練習用昇降設備やジャンプスポーツなどの移動組立式仮設練習台、またマリンスポーツなどの Xスポーツ への昇降へのニーズは様々に発見できる。昇降運動があるスポーツへの提案はしておきたい。
知名度とブランド力向上が得られる相乗効果の高い戦略事業:アミュージュメント・ゲーム・ツーリズム業界
ゲームアトラクションにおける昇降へのニーズはいつの時代でも人はその願望を持ち続けている。自分の目線を高く広く見渡し「鳥のように俯瞰で見てみたい」というニーズはクレーンの得意分野である。例えば、バンジージャンプなどはその分かりやすい例であるが、もっと安全を考えると、最近盛り上がりを見せてきた「インフラツーリズム」への参加も検討してはいかがだろうか。
インフラへのニーズは「建設用クレーン」とも親和性が高く、観光事業へのニーズは様々に考えられるものである。また、遊戯施設などを扱う企業などへのアミュージュメント施設の設備機械へのニーズも掘り起こしを行えば必ず発見できるであろう。例えば、大阪の「USJ」など地の利を活かした施設での昇降へのニーズが考えられる。本体の「USJ」とアミュージュメント・ゲーム企画系企業と組み、一体となってアトラクション設備に参入するのも組織として良い刺激となるだろう。
タダノ中期経営計画に基づいた参入すべき 2 つの急成長市場
アジアと北米においては、現在でも大きな市場であるが、これから潜在的に伸びそうである2つの急成長市場を考えていこう。中期経営計画に基づいた内容から戦略的市場を考える場合、これらのデータが使えそうである。少し見ておこう。
日本からもっとも近い対象国を選び出し、国々に応じた特別メニューの提供から始めるといいだろう。高級は大衆を兼ねるが、大衆は高級を兼ねない。確固たる高級ブランドの地位を築くべきであろう。上記は、突出すべき市場が一目で分かるところであるが、これらについてどのような見方で捉えれば良いか少し解説を行いたい。
参入するべき市場:潜在的に大きな需要が見込める大洋州という市場
大洋州における受注は、52件、1,397億円で前年度に比し、件数は7件増加、金額も、1,239億円増加した。公共機関は、195億円増加し、338億円となり、民間は、1,045億円増加し、1,059億円となっている。
参照:一般社団法人 海外建設協会(OCAJI)- 海外受注実績の動向
大洋州においては、受注数は普通であるが、大規模な工事が始まりやすい市場でもある。オーストラリアやその他周辺島国が多い地域から、南北に長い南アフリカなど気候風土が厳しい地域まで国は様々である。公共系統は、比較的少なそうであるが、民間受注が多く、参入企業に追従した戦略で受注を得られやすい。産業競争における熾烈な戦いが予想されるが、実績づくりがモノを言うのが大洋州である。大洋州は比較的日本国というリスクは少なく、中国市場などよりも、手順さえ間違わなければ、比較的スムーズに受注が得られる事であろう。
参入するべき市場:オイルマネーを使った最後のフロンティア中東市場
中東における受注は、10件、665億円で、前年度に比し、件数は、2件減少したが、金額は、579億円増加した。同地域の受注を発注者別にみると、公共機関は、588億円増加し、650億円となったが、民間は9億円減少し、15億円となっている。
参照:一般社団法人 海外建設協会(OCAJI)- 海外受注実績の動向
すでに参入を果たしている市場であるが、中東はまだまだ深堀できる市場である。砂漠に突如現れた都市部を見れば明らかである。オイルマネーを使った大規模な投資はまだまだ続きそうである。しかしこの市場は時限処置であり、次期資源次第で大きく様変わりするリスキーな市場でもある。クレーンにおける次のニーズを掘り起こす事でさらなるシェアを拡大することができる。
また紛争が多い地域であり、イスラム圏であって、特殊な商習慣もあり、立場を弁えた立ち回り次第で大きな受注を得られるフロンティアである。イスラムの人々といかにうまく付き合えるかであり、王族の多い国での投資戦略を提案できるぐらいの高いプレゼン力も必要な比較的難易度の高い市場であるが、その分見返りが大きい市場でもあるのだ。
隠れた急成長事業タダノの建設ロボット事業
タダノが開発した四足歩行型双腕ロボット。4本の足と、2本の腕、およびクローラを持ち、関節自由度は合計で29あるという。これにより、通常のクレーンでは実現できない動きが可能になったという。計3台のCCDカメラを内蔵、それによってジョイスティックを使用した遠隔操作も可能。ロボットの移動には、岡山大学と共同開発した「移動制御システム」を搭載。
実は、業界の人間以外あまり知られていないタダノのロボット事業というのがある。多くの人々、とくに投資家界隈は、この隠れた急成長事業自体をどのように活かせるのか分からないと聞いた。そのあたりは、当の本企業も、事業を持て余している。そのロボットなのだが、使い方によっては、建設業界を一変させてしまう脅威的な武器なのである。ということなので、急成長セクターに生まれる確率が高いと考えるとして、工事工種を検証する。建築施工に携わった私の立場からロボットの活用方法を考えてみる。
鉄筋工事、型枠工事、塗装工事、タイル工事、左官工事、建具工事、ガラス工事、シーリング工事、仮設工事、洗い工事、ALC工事、建方工事、屋根工事など躯体または外装工事は多岐にわたるが、ロボットの巧みな利用でこれらの工事を一台で賄える可能性を秘めている。
外装工事とは基本的に足場が必要とされる高所作業が多いが、アームの長さが長ければ長いほど、高い場所での外装工事作業がロボットで可能になるのである。極端な話、足場さえ組むことがなくなるかもしれない。ロボット自体が昇降設備と足場の鋼製布板を上下左右にスライドして足場をつくる事が出来れば、外装はロボ一台と軽作業員で可能となってしまう。
また、インフラ改修工事も増えてきていることから、メカによるカメラで点検確認ができ、高所や危険な場所での作業がなくなる。例えば、改修箇所をスキャンして、躯体の状況をデータで蓄積。自動で改修工事メニューをつくり、現場員がメニューを細かく微調整。
調整後、ロボが自動で工事に取り掛かり、内蔵の遠隔カメラを現場員が確認しながら、ロボを操縦して、搭載したアームから、工事工種キットを出し、改修工事を行う。その際は、工事工種の職人は一人も投入することもなく、医者がオペを行うように、現場施工員が一人で改修を完了させてしまうのである。
という風な使い方をすれば、恐ろしく強力な武器であり、タダノという企業は、それを保有している事になる。あとは熟練操作員と施工監督的な人材の育成、ロボットの技術開発を丁寧に行えば、比較的スムーズに現場に投入され、ロボットが建設を行なっている風景をつくる事ができるのである。
それが実現出来れば、受注が増大し、恐ろしく急成長企業に変貌することになる。建設業にとってこれは非常に驚異である。
未来への可能性に気づいたときタダノの驚異的な成長がはじまる
タダノは矢継ぎ早に新工場や生産設備の増強を加速させている。高松市の本社内にある部品供給拠点を神戸市のポートアイランドに移転をし、新工場を建設するため、香川県から高松市内の県有地を購入し、大規模な工場建設に着手している。
また首都圏でクレーンの修理事業を強化を図るため、佐倉市の修理工場に11億円を投じて新たな建屋を建設、修理の処理能力を従来の2.5倍に増やした。2020年の東京五輪を控え、首都圏の建設用クレーンの需要の急増から、受入能力を高め、修理期間を短縮するためである。
現在ある各地域の工場への設備増強にも余念がない。この場合、大半がクレーン事業における工場への設備投資であるが、新事業を軸とした生産設備を兼ねた場合を考えて見ると、驚異的な成長が予想できるのである。比較的大きいロボット事業を成長セクターに据えたとする。その場合、工場への設備投資への投資効率が驚異的に向上する。
政府が進める「建設業の未来投資と課題」における事業への親和性にタダノが気づき、新機軸への技術に集中的に投資を開始、開発を鮮明に打ち出した場合、建設業の未来が一変する可能性を秘めている。現に、四足双腕作業ロボット「ROBOTOPS」のコンセプトモデルを発表している事から、これに続く新モデルの市場投入次第で、建設業の仕事の在り方すら変わってしまうのである。
そうなると問題は、少ない人員で建設工事ができるロボットが現場で増えると、タダノに受注が集中してしまい、建設作業員自体の技術スキルを転換していく必要に迫られるであろう。その未知への可能性に企業が気づき、本腰を入れる前に、賢い人であれば、どう立ち回るか結果は見えてくるのである。
とまあ、しがないおっさんの妄想とボヤキであるが、タダノの驚異的な成長が、国の産業改革への一歩になることを期待したい。