時計大手三社の業績が殊のほか良くないようである
ますはこの記事を読んでおいて欲しい。ここ最近の最新記事である。
時計大手3社の2016年4~6月期決算が12日出そろった。インバウンド(訪日客)需要の落ち込みや円高が響き、各社とも営業利益は2ケタ減。利益や株価の水準は、いわゆる「爆買い」が本格化する前に戻った。下期から来期にかけて三社三様の挽回策を講じるが、ハードルは高い。古川敏之取締役は「例年なら今ごろは中国の旧正月向けに腕時計のムーブメント(駆動部)の出荷が盛り上がる時期だが、回復の兆しがない」と話す。今期の巻き返しは厳しく、来期以降に持ち越しとなる。具体的な挽回策として、景況が比較的よい北米市場での販路拡大を急ぐという。インバウンドや中国の落ち込みを、北米の成長で補う戦略だ。
参照:日経 / 時計3社、三様の挽回策 4~6月営業益 2ケタ減
時計大手3社の決算が殊の外悪かったようであり、日本ブランドが窮地に陥っている事は、日本人の私としてはとても心配になる記事である。
シチズンが決算を発表した事なので、時計マニアの私なりに今後の北米戦略と世界市場への展開を経営戦略っぽく記していこうと思う。
経営の素人なので、適当に思ったままを書いているので、グループの政治バランスやできない理由などは分からない。ただ時計マニアとして 1ユーザーとしての意見である。
上場企業と言う事で、ここは株主の立場に立って、株主さんがどう思うかを考えながら書いていく方が、個人としての意見が立ちやすいと考える。
株主価値が比較的向上しやすい販売単価が上がる高級ラグジュアリー戦略っぽい方が時代と合いそうなので、そちらの方向で書いていこう。
聞いていないのでどうか分からんが、時計マニアの変な奴が、ひとつの意見として、変なやり方を書いているなぐらいの軽い気持ちで頭の片隅に置いておく程度で読んでもらいたい。
消費の細分化、目が肥え贅沢となった望み薄の衰退市場中国
中国市場はこれから右肩下がりに落ち込んで行く事であろう。消費自体が偏りが出ていること。中国人は、日本人が過去半世紀で辿ってきた一連の消費がすでに終わっていると考えて良いだろう。
そうなると、皆が持っているからといい似たような価値観の顧客だから、出せば売れるだろうという大量消費するような市場ではないのである。要は消費が細分化し、目が肥え贅沢になってきたのだ。
中国市場は徐々に手を引く方が無難である。ひとつの市場に依存するのは良くない事であり、リスクヘッジは必要。日中関係の冷え込みは、火を見るよりも明らかであるからだ。
中国市場に固執せずに、東南アジア・インド・中東・東欧など政情が安定している国に、各国向けにピンポイントで戦略を展開して、賢く戦略を立てる方が、長い目で見て良い投資となるだろう。
北米市場を狙うのであれば成長セクター企業と協業を考えること
北米市場で考えられるひとつの方法は、他の成長企業と組む事が考えられる。セクターは、日本企業が北米で大きく売上を作り上げている市場が良いと思う。狙うべきセクターは、例として、医療機器関連・農業関連・ゲーム関連・空調機器・電力(アンシラリーサービス市場)関連・二輪・四輪など自動車関連セクターになるだろう。
相手さえ間違わなければ、大きな市場を共に広げて行く事が可能であり「時を刻む」という基本的な機能にリソースを集中して法人取引を拡充して頂きたい。時を正確に刻む場面は、あらゆるセクターで応用可能である。それを上手く知恵に変えるのは企業の仕事である。
企業自体には優秀な人材が豊富に在籍していることから、横断的にチームをつくり新規イノベーションに積極的に挑む時期である。イノベーションが得られないと思えば、外部からの風を入れる事も検討してもらいたい。
新規のベンチャー企業に投資したり、多くのアイデアを集中的に集める部署をつくる事である。ただコアである時計に絞る事が重要であり、それ以上のメイン技術に踏み込まない事。他社とともに歩む姿勢を貫く事が重要である。
瀕死の時に他社を助けるということは、一見業績を作ることに反していると思われるが、将来への種を植える時期でもある。例えば、ホンダにおけるエンジン技術の応用(芝刈機・除雪機・自動車などコア技術を幅広く展開)したように、上記関連企業のコア技術との協業などが考えておこう。
ホンダの場合は、自社で完結しているが、完結までとは行かなくても良い。要は多くの企業にシチズンの時を正確に刻む技術を使ってもらうのである。
あくまでも、成長セクターで活躍する企業とともに利益を分け合う事。時を正確に刻む事で、精密機器が正確に動くという技術に注力する事で、コア・コンピタンスが得られるのである。
新しいアイデアとなる事業の成長を願っている次第である。
北米市場ではマーケティングとセールスの両輪の戦略がモノをいう
前回の記事【CITIZEN シチズン:時代を超えて市民の為の開発と世界制覇に向けて挑戦するアグレッシブなブランド】で書いたのだが、北米市場での通販(EC)での販売の拡充は展開していくべきだろう。流通体系を素早く広げる事が可能であり、少ない投資で売上を立てる事が可能になる。
通販の専門部門を強化して、空中戦を展開して「手に入れやすさ」を獲得する。これについては、比較的良質で安価な北米市場の顧客から導き出された、最適な専用モデルを投入する方が良いだろう。
07~08年に米老舗時計メーカーブローバ社を買収している観点から、米国での知名度の高さから、ブローバブランドでフルラインでさらなる量販を目指すべきであろう。
これについては、グループ内でどのブランドを投入するか考えてもらう方が良いが、ただ、シチズン本体のブランド力の底上げ(販売価格の向上:値上げ)を考えるのであれば、ネット通販では、価格の下落が起き易いので実はあまりオススメではない。
量販で売るのであれば、ブランド名を落とさずに販売戦略を考える方が良いかもしれない。
もう一点は、都市部に展開する場合の通販では手に入らない「戦艦店にしか出さない」高額で希少モデルの市場投入である。【Swatch Group フルライングループとしてのブランド再配置戦略と中価格帯への挑戦】でも書いたが、中価格帯のブランド形成する方向で、ブローバの販売戦略をさらに規模を拡張する。
シチズンは、現在日本の時計企業で、最もバランスの取れた戦略を展開しているかと思われるが、矢継ぎ早に買収した企業で、量販とラグジュアリーの高額な希少性を両面で展開する事ができる。
手に届くラグジュアリーとして「シチズン」を高額だが、入門しやすい高級ブランドに位置づけ、ブランド力を引き上げるという戦略である。
狙いどころは「オメガの位置づけ」である。初期戦略では、量販で稼げるブランドのマーケティングを通販で展開して、シチズングループの技術力とセールス力の高さを見せる。
同時にマーケティングで集めた将来のコアな顧客向けに戦艦店に集める戦略を展開する。戦艦店では、同じフロアーで買収した最上位ラグジュアリーブランドを置き、高額なトゥールビヨンを見せながら、手に届くラグジュアリーとして「シチズンを買わせる」という スウォッチ・グループが見せた「オメガの戦略」を踏襲する。
こんな芸当が出来るのは、買収した企業を持っているシチズンしかできない「差別化された再配置ブランド戦略」なのである。
2012年にスイスのプロサー・ホールディングを買収し、その下には、ラ・ジュー・ペレとアーノルド&サン社を所有、それらの技術力と製造ノウハウと 2016年のフレデリック・コンスタントを買収で、トゥールビヨンのムーブメント技術力と欧州への地盤を手に入れている事から、これらのブランドの再配置戦略次第で、本体のブランドへの利益の集中が図れる事であろう。
長期的なシナジー効果を得る最大の機会が、ブランドの再配置ができるという強みである。あくまでもシチズンブランドの高級化と販売価格を引き上げるという視点で話している事であってシチズン側がどのブランドを引き上げるかは、どれでも構わないが、日本人としては、日本のブランドが海外で高級化する戦略の方が嬉しい次第なのである。
北米市場を考えるのであれば高級ブランドの戦略を踏襲してそれを超える事
さらに最上級のラグジュアリーブランドの多くは、逆張りのマーケティングを踏襲する事で自らの価値を向上してきた歴史がある。所謂「ベタなやり方」であるが、効果があるので仕方がない。
多くのラグジュアリーブランドが通ってきた道なのであるが、まとめると【ラグジュアリー戦略マーケティング逆張りの法則 18の条件】のようになってしまう。
それらをいくつ踏襲するかはシチズン次第であるが、時計事業に事業を集中するのであれば、高級の道しかないのである。数を売るのが難しいのであれば、質を上げて単価を上げるしかないのである。
今の間は、数が売れているが、実際数を捌ける対象国は限られてくるであろう。数を競って生き残る時代はもうじき終わってしまうのである。
ではどうするかというと、事業を集中させ、ラグジュアリーブランドのひとつの「極」をつくる為に、日本ブランドがスイスブランド勢に挑戦するしかないのである。ベタなやり方は北米で実験ができる。
つまりは、シチズンブランドで、ミューズを立て、それにおいては、ハリウッド俳優や著名人、アスリート選手などを効果的に使う必要があるだろう。
またスポーツ支援として公式時計戦略も使う。多くのスポーツは、ほぼ握られているので、Xスポーツ、e-スポーツなど、比較的新しいスポーツの方が入りやすい事であろう。
もちろんメジャーなスポーツで入れれば良いのである。e-スポーツ競技用の時計などプレイヤー用の特別モデルをゲームキャラクターのコラボレーション企画も面白い。
ゲーム企業の主戦場は米国であるから、共に協業しても良い。ただしこれは、高級化の道とは反するので、買収した他のブランドで踏襲させる方法も検討した方が良いかもしれない。
これはブランドの方向性次第なので、決めてもらう方がいい。様々なスポーツを水平展開させて、世界大会を主導してもよく、同時にアジア・インド・アフリカへスポーツ大会を通じて広げ、それらの市場への制覇に向けたシナリオも描ける。
もうひとつは、東京オリンピックの公式時計として認定してもらいたいところであるが、もはや決まっているので致し方ないが記しておきたい。どうせ契約の関係上「オメガ」であろうが、白紙状態になるのであれば、アプローチを掛けてチャレンジして頂きたい。
多くの企業は賢いので、すでにどこかがタイトルを獲得に動いているかもしれない。
私のような経営素人の時計マニアから言える事は、小さな提案であるが、日本のブランドの復活を願っている。シチズンには、スイス勢と渡り合い、世界制覇へのチャレンジが出来る唯一の時計ブランドであるからだ。
まあ、私が特に心配しなくても、ここで書かれた程度の戦略はとっくに手がけている事だろう。スタンダードな戦略で株主価値を向上させながら、着実に成果を上げるか注視していきたい。