昔の商人が持っていた蔵という宝物庫
今回は、日本の貨幣についての取引である。日本の貨幣の価値は、多くの種類で等価交換を基本として、付加価値のある貨幣はほとんどない。現在価値のある貨幣はどのような条件なのかと聞かれれば、少し貨幣の情報を知っている人であれば、流通量が少ないモノが価値があると答えるであろう。
比較対象を取り上げている流通量、所謂「発行枚数」であるが、切り口として数字で比較しやすく、自分で取引したことのない人が、多くのネット情報でざっくりと認識している。
たしかに量に注目して、価値がありプレミアコインですよと言うのは分かりやすい。ただそれを聞いて、すぐに手に入れて取引できるかと言えば、多くの人は取引すらできない。個人的に思うに、量に注目するのであれば、発行枚数の多いモノで、手に入れやすくかつ価値のあるモノを知りたいところだった。
調べる必要に迫られたのは、商家だった親族及び近所の蔵を調べていた時に、大量の古銭を発見したことである。比較的都会の商家は、連棟長屋形式で、壁を挟んで一つの家を形成していた。
鰻状の寝床のような構造で、奥は蔵のような倉庫となっており、貴重品や食料、その他様々な道具や仕入れた商品などを置いておく、なんでも収納できる便利な部屋なのである。
日銭商売であった親族は、日々の稼いだ小銭の一部を蓄積して、コレクションとしていたようである。切手や古銭は、親族の収集心に火をつけたようである。
祖母方は大量の切手や貴金属、祖父方は大量の古銭・カメラ・模型など、長年掛けて収集をしており、蔵と言うよりも宝物庫のように大切に保管していたようである。
比較的昔から、商圏を広げて売る手法 (要は通販) を知っていた関係上、近所の商家からの同じような依頼を受け、手伝うことになるのだが、それも相まり、大量の古銭を「取引した経験」 をすることが出来たので、ここで少し記録しておこうと思う。
入手がしやすく素材で取引できる付加価値貨幣 旧100円 銀貨
ここで簡単にであるが、旧100円の情報をあげておきたい。旧100円銀貨、鳳凰及び稲穂は、昭和42年の現行貨幣が出るまでに使われていた貨幣である。流通量は大変多く「百円銀貨の基本的情報 」はここを見れば、ざっくりと情報をつかむ事ができる。
銀の含有量に注目し、中に含まれる銀に価値があるのである。日本銀行の情報によると、銀の含有量は、約60%含まれる。ちなみに現行貨幣は、銅とニッケルなので、ほば素材的な価値はない。
これに関して言うと、約40年前ほどから記録されており、未使用価格で、約 2,000円~3,000円、年を追うごとに価値は下落していき、約500円まで急落する。美品や並品で、約150円~200円の相場まで落ちるが、実のところそれからあまり変わっていないのである。
そう。要は価値が固定されており、売る市場としては、安定して取引できるのである。多くの情報は、流通経緯とその希少価値から額面価格を超えるというところまでとそれを売る方法までとなっているが、実際売ってみるとどのくらいの相場になるのか、これはあまり手がけていないところである。
業者であれば、このあたりは商売のネタ同然なので、どのくらい儲けているのか手の内はあまり明かしたがらないかもしれない。
取引の本質は収集ではなく銀に希少価値を感じる人に売るのが秘訣
さっそく 「オークファン 」 を使って相場をチェックしていこう。なるほど結構な額が取引されているのがわかる。
保有している多くの人々は、その時代を生きたご年配の人々であろう。多くのご年配の人々が、収集した多くのコインが付加価値がないと弾かれるなかで、唯一価値アリと判断されて少し目利きを褒められた経験は、実際買取を行った人であれば経験済であろう。
実際私の友人の母親が、旧貨幣を買取店に持ち込んだ際、唯一旧 100 円だけを 110円 で買取ますと言われ、目利きを褒められ、その額で買取に応じ、なぜこれだけが価値があるのかたいして考えもせずに、すべて売ったという話を聞いた。
残念ながら目利きが良かったわけではなく、素材に希少価値があったわけだ。
保有する多くの人々は、素材に価値があり、素材が高騰した時に、戦略的に売るために収集していたわけではないことが、この事例で分かってくる。
ちょうどその頃に蔵の整理を始めたので、調べる必要があり、その後販売してみて、安く業者に買い叩かれているなと感じた次第である。
なるほどこの取引データから見えてくるのは、枚数を大量に用意できる売り手が、もっとも得をする取引という事がわかる。買い手の気持ちを考えれば、等価以上の交換をスムーズに行う事が可能であることを 約 10 年間の過去の統計データは教えてくれている。
買い手がもっとも価値を感じる人は誰であろうか。歴史的に考えていくと、銀を宝のように重宝する人々が、私たち日本国以外で近くに存在する。賢明なあなたにはお気づきであろう中国人である。
かつて中国では、銀は金と並び、皇帝やそれに次ぐ位の高い者が使える貴重な素材であった。このポイントに気づいたとき、販売の流通経路は、すぐに組み立てる事ができるようになった。
稀少性やコレクション価値以外で価値を見出すと新しい気づきを得られる
さて今回は、取引業者さんにご協力頂いて、貨幣を数百枚単位で、小分けに用意して順次持ち込み、業者さんの販売代行を通じて、データを融通して頂いた資料をもとに、下記をデータとしてまとめたものである。
全部で数千枚ほど取引して分かってきたのは、相手は業者であり、業者が購入し大量に枚数を買い足し、それを海外で転売するという流れが大半を占めた。
最終的に販売する相手は中国人。中国人は「キロ単位」で購入したいわけである。キロ単位で扱いたいのは、キロ以下であると、相手から手数料を取れる事があり、二次の売り手は手数料を嫌がるのである。
そこで、業者は多くの枚数を取引している売り手から買いたいわけである。取引データで見たとおりである。
ちなみに日本では現行銭を潰すのは重罪である。基本的に古銭を潰す事は罪になる事が多く、絶対にしてはいけないのだが、それは法が行き届く国内限定の話となるのである。
国内では、貨幣の取引として普通に行い、潰すのは主に海外 ( 中国で潰している ) であることが推測される。
業者さんから聞いた話では、ちょっとした取引の違いがあり、電話連絡する必要に迫られた際、電話に出たのが「中国的なカタコトの日本語をしゃべる相手」 だったというので 「やはり海外に流出させるのであろうな」 と日本にいる中国輸出業者も多数いるようである。
また、日本の業者が取引に参入してくる場合もあれば、【 Buyee 】を通じて直接取引してくる場合もあり、最終的な流れは同じである。
上記データにおいては、約 300枚:約 3万円分 からスタートして、約 700 枚:約 7万円分 まで小分けに取引をテストしてみた。細かな端数は切り捨てているが、その際の原価と販売価格である。
棒グラフの上部に記載している数字は倍数である。約1.4~1.5倍前後で売れている。小分けにしても、あまり倍数は変わっていない。
約10年間で、銀が高騰していた時は、約 1.6 倍程度であり、国内取引においては、そこまでが限界に近いようである。
さらに儲けを追求している人は、それを大量に買取や購入を通じ「キロ単位」に達したら、約 200円以上からで、海外に最終的に販売すれば、さらに1.3~1.5倍近く儲かる仕組みなのであろう。いやもっとかもしれない。
私は業者ではないので、細かいところまでは分からないが、おおよその取引の流れを一通り説明するとこうなる。あなたのすぐ近くにも価値のあるモノは必ずある。
価値があるモノの本質を考えれば、稀少性だけのコレクション価値だけではない、違った側面に価値を見出す着眼点を持つと 「何でも価値を持たせる手法」 を知ることができるようになる。
多くのモノは、新たな付加価値 (今回は中国) を与えてしまうと、あなたが知らないモノでも、等価以上に交換されてしまうのである。