自動車用エアバッグ/小堀保三郎:時代を先駆けた安全装置は発明者の死後に普及していった
今ではほとんどのクルマに標準装備されているエアバッグ。エアバッグの基本的概念は1950年代にアメリカで考案されており、世界で初めてクルマに搭載したのはクライスラーであった。しかし現在のエアバッグは実業家の小堀保三郎という人物が発案したものが基になっている。小堀は私財を投じた独自の研究から「衝突時乗員保護システム」としてエアバッグを開発し特許を取得。しかしこの時代の省庁や産業界の安全概念から受け入れられる事はなく、小堀はエアバッグの普及以前に亡くなっている。出典 –日本の最先端技術がよくわかる本
先見の明のない省庁や産業界から失笑を買った画期的な発明
小堀の発案は当時としてはあまりにも奇抜なものだったため、エアバッグ発表の場では日本人の関係者からは失笑を買い、相手にされることはなかった。が、欧米の企業ではその間エアバッグの研究と開発が進められ、それにあわせて法規も整えられていった。参照:小堀保三郎

安全という概念が欠如していた日本の自動車産業
先読みは発明は、時に時代と合わないと失笑を買う場合があるという分かりやすい事例である。
この時にすでに、運転席、助手席、後席エアバッグに加え、側面サイドエアバッグやルーフエアバッグも考案していたというから先見の明があった事はたしかである。
時に発明家はその先見性から、その時代しか見ていない人間から、馬鹿にされる事もあり注意が必要だ。
要はビジュアルイメージを含めた近未来の生活シーン(この場合ドライビングシーン)も合わせてビジョン化しておくと、理解が得られやすいと言えるだろう。アップルのスティーブ・ジョブズのように、事細かく未来のシーンも含めたプレゼンスを含めるとこうした誤解も溶けるというものである。
また、安全を軽視していた時代背景であったようなので、事故においては企業イメージ的な面からもメリット・デメリット面を訴えておきたい。
例えば先進性を伝える場合、死亡事故が減るという切り口であれば、事故死傷者数が減り、賠償する責任や金銭的補償が減る等、企業の賠償も減り、イメージなどが毀損される事がなくなると伝える。
それでも企業側としては足りない事であろうと想定して、特許自体も共同で取得してしまい、少しのパーセンテージの利益のみで、他の儲けは自動車メーカーに渡すぐらいの戦略を取った方が良いだろう。
あくまでも、個人発明家は、権力などの後ろ盾もなく、資金面も乏しい事から「踏み込むところまで踏み込む」思い切りの良さで世の中を革新できる方向を目指す方がよく、己の名声や金銭的儲けは考えない方が、かえって多くの富を手に入れたりする事ができる。
そうでなければ、個人発明家がすべての責任を持ち、一攫千金を狙いすぎると、資金難から家業とした事業運営もままならず、極端な例では、借金や自殺(実際小堀は開発費用捻出の困難を理由に自殺したようである。)まで考えるようになってしまう。
発明自体も世に出る事なく、時代に埋もれてしまうであろう。発明における戦略は、一見遠回りと思われる事が意外と近道だったりするものである。
Reference:Pinterest
Reference:日本の最先端技術がよくわかる本