ファクシミリ/日本電気:古くより発明された画像転送システムを改良して実用化した二人の日本人
ファクシミリは電話より30年早い1843年にイギリスで発明されたのが原型である。その後ドイツとフランスで1906年の同時期に「コルン式」「べラン式」と呼ばれるファックスが開発された。この方式は画像の乱れが多く、この方式を基に改良し、実用化に向けたのが日本電気の丹羽保次郎とその部下、小林正次であった。これは「NE式」と呼ばれるもので、発明家・安藤博が作成した「同期検定装置」という機械を取り入れ、乱れをなくす方式である。出典 –日本の最先端技術がよくわかる本
写真電送装置競争に日本電気が勝ち抜く
1928年11月、京都で執り行われる天皇即位の御大典は、写真電送装置競争が激化した時期でもある。朝日陣営は、シーメンス製、毎日陣営はベラン製を導入し、御大典に向け準備を行ったわけである。
毎日陣営は、ベラン社から派遣された技師が調整を行ったようだが、日本の気温と湿度の微妙な変化で写真がゆがんでしまったようである。
これは欧州や米国ブランドをそのまま日本に持ち込んだ場合にブランド品でも起こる事象である。つまりアジアの気候を品質戦略に盛り込んでいないのである。
困った毎日陣営が、当時日本電気が写真電送に成功した事を聞き、日本電気製を使用したいと依頼したようである。
技術部長である丹羽は悩み、実験段階の発明を即実践で使う事に抵抗を覚え躊躇していたが、部下の小林の積極案を取り入れた向きがあったようだ。
日本の技術者の誇りを掛け、この難題にあたり、徹底的な試験を行い、独自技術である電磁振動子による光電変換方式に確信を持っていく。
毎日陣営においても、試験を行い、ベランよりもNE式の方が成績が良く、急遽採用が決定。御大典の模様を、京都~東京間を電送、毎日新聞の紙面を見事飾る事になる。
当時の諸外国の最先端技術の写真電送機よりも鮮明な画像を叩き出し、技術立国の日本を世界に知らしめる事になる。翌年、さらに改良を加え写真電送は無線式に進化、1932年には国際間伝送も実現させた。
現在主流になっている技術に応用を以て革新する
日本の技術力を引き上げる最も良い方法は、現在主流になっている外国の技術を応用して革新的に世界にもう一度衝撃を与える戦略は、古典的ながら有効な手段である。
あなたが技術者である場合、もう一度当たり前に使っている技術やサービスなどを見直して見ることで、その着眼点を磨く事ができる。
その方法や技術を改良改善する事が第一段階、その先にあるのは、すべてを方式・技術を変えるほどブレイクスルーする事である。
これが出来れば、あなたの成功は比較的容易になってくる。だがその前にあなたの目の前にある課題や仕事における「煮詰まっているところ」にフォーカスし改良や改善を施す事で道が開けてくるであろう。
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Reference:日本の最先端技術がよくわかる本