サブブランドは あなたがブランド化に成功しても 崩壊する 危険性を孕む
経営者もしくは企業担当者が陥りやすい罠のひとつが、自らが構想するブランディングを正当化する為の手段として、サブブランドを市場に広げるという動きである。
二兎を追う者は一兎をも得ずとはよく言ったもので、自社もしくはその個人が知られたブランドを使用しながら、新しいカテゴリーを制す為に、二次的なブランドを生み出す。
自社もしくは、儲けを考える個人には、良いやり方に見える。ライセンスも似たようなやり方であるが、顧客にとっては、ほとんど意味を成さないものである。
例えば「 日本でもお馴染み ダナ・キャラン 」というブランドがあるが、多方面に手を伸ばしすぎた結果、いまや何のブランドが分からなくなってきている。DKNYブランド は、もはや理解不能な領域に足を踏み入れている。
ダナ・キャラン インターナショナルは、LVMH モエ ヘネシー・ルイ・ヴィトン が買収をしたが、案の定、経営はおかしなままで、業績は一向に良くならず、その後、ジー・スリー アパレル・グループに売却され、2017年に買収は完了する。
サブブランドのブランディングは、新しい方向に広げようとする内から外に向かうブランディング戦略であるが、これは経営陣から見た期待感や競合他社の対抗などの目的が多く必ずしも、顧客の為でも、成果を上げる為でもなく、大半が失敗に終わる。
顧客の選択肢を無駄に増やしすぎる傾向があり、一度は珍しさから売上などが見込まれるが、その後さらに顧客離れが進む。最後は本体もろとも崩壊するか、他社に買収されるなど、非常に危険性を孕んだ戦略なのは、ダナ・キャランの事例を見れば明らかである。
自動車メーカーなどはこの間違いを未だに続けている。本書:ブランディング22の法則 に取り上げられている ある自動車ニュース誌の発行人の言葉が分かりやすい。
自動車マーケティング担当者の試みに懐疑的である。大抵の人は社名ではなく、個々の車種がブランドだと口々に言うが、私はイエローページに、車種名で掲載されているのを見たことがない。
まさにその通りで、メーカーがブランドとみなすものを顧客はただの車種とみなすのである。自動車メーカーは、一つのブランドで、複数の車種を販売することに躍起になっている。それの方がプラットフォーム効率が上がるからである。
サブブランドが、常態化している業界では、製造の理由をブランドを構築する為ではなく、市場のシェアを追いかけているのが背景にはある。携帯電話などの通信市場でも、サブブランドを出す大手企業も出てきている。
要はライバル会社のシェア獲得と新興勢力の排除を狙っているのである。そんなことをせずに、新しい市場を創るぐらい (アップルが新しい概念のスマートフォンを市場に投入したように) の画期的なブランドを築く努力を大手は怠っていると顧客は見てしまうものである。
サブブランドの必要を考える時、現状のシェア獲得に動く企業の多くは、他社よりも安さで競う事となる。それ以上の価値の提供が出来ないという事を認めているのである。
サブブランディングは、当該のブランドの正反対の方向に導き、サブブランディングはブランディングで築いてきたものをあっという間に崩壊させる。
サブブランドで築いて行ったものが、安さだけであれば、さらに安い企業に乗り換えられるだけである。サブブランドのコンセプトは、実は顧客にとって何の成果も上げていないのである。
顧客の側に立ってもう一度考えること。あなたが勤め人であれば、自社がサブブランド化を進めている間違いを正しいと思ってはいけない。
仮に短期的に成功しても、長期的に考えれば、一部の高額商品並びにサービスの犠牲の上に、需要の先食いであることを、賢明なあなたならすぐに理解することができるだろう。
参照:ブランディング22の法則