ブランドの寿命を延命させるか安らかに安楽死させるかあなたはどちらを選ぶ
もしあなたが人生を掛けて、極めている技術や方法・仕事などが、時代の変化と共に、陳腐化した場合、その分野での仕事を諦め、違う業種で、新しく挑戦するか、それとも、時代に合わせて、その分野の技術力や才能を磨いてついて行くか、選択に迫られた場合、どちらを選ぶだろうか。
ブランディングの法則は、不滅であるが、ブランドそのものは不滅ではない。誕生して成長して、成熟して最後は死滅する。人間の人生に例えられるそのブランドの一生は、時代の変化をどう捉えるかで大きく違ってきている。
人材の世界でも、多くの人々が間違っているのは、自分たちに合った寿命の近い経験豊富な人材は選ぶ割に、ブランクを乗り越え、新しい分野に挑戦し、再生しようとする人材を簡単に切り捨てるものである。
ブランドにおいても同じであり、古びたブランドは何百万ドルも掛けて救済する割に、新しいブランドの創造となると、一ドルの支出にも抵抗する。ブランドには、投資すべき時期とブランドを刈り取る時期があると、本書:ブランディング22の法則 で、記されている。
資産は、次の世代の為に使うことが正しく、古いブランドの生命を延ばす為に使う資産を節約し、将来性のある新しいブランドに投資する事が重要である。古いブランドを再生させて、成功できうるブランドは限られており、洋の東西を探しても成功例は、数えるほどしかない。
多くの場合、ブランドに関わる人々が、既存組織に長く従属している集まりでは、ほぼ改革は不可能だからである。再生に関わる場合、多くは改革者であるトップの実力で左右される。その場合、既存組織並びにサービスなどは、大半は整理され、新しく再構成されることになる。
最後は、看板だけ同じで、前回と違った組織として生まれ変わる。ただ、それでももう一度成長するかという疑問は残る。ブランド並びに組織を再生させ、大きな成長をさせる実力のある改革者は、世界を探しても数えるほどしかおらず、多くは失敗して、ブランドは静かに眠りにつくのである。
何であるか明確なブランドは、知られていなくても価値がある
あなたが仕事などで関わっているブランドが、以下の質問で区分け出来ていない場合、そのブランドの寿命は非常に近いということを証明している。
「そのブランドは何であるかハッキリしているか?」
である。何であるかハッキリしていない。あるいはハッキリしていても古臭い場合、ブランドがよく知られているものでも、何の価値もない。何であるか明確なブランドは、知られていなくても価値があると世の中は認識する。
例えば、ある老舗宿泊施設があったとする。全国でも比較的知名度のある宿泊施設であるけども、時代の流れを読めておらず全体的に古臭い。また、ブランド名は知られていなくても、焦点の絞られた新カテゴリーの宿泊施設の前では、とても太刀打ち出来ないようなものである。
何であるか明確である場合、コンセプトで顧客が選び、ブランド名は知られなくても、価値があるものと顧客は思う。非常に安価な新興企業が経営するホテルのコンセプトは明確である。ブランド名は知られ、長い歴史があり、老舗と言うだけで、高い価格を維持できるほど、世の中は甘くはないのである。
何であるかハッキリしている老舗ブランドであれば、何らかの手を打てる。宿泊施設を再生させることができるのは、実力のある人に限られるが、機会を得る事は可能なのである。
あなたが仕事などで関わっているブランドが、何を売りにしているのか分からないなぁとか、その分野においては何でも売っている「何でも屋」であったり、昔からあるブランドだけど、昔に扱っていたモノと現在扱っているモノが違い、今の方が売るのに、多くの労力を要しているなぁと感じている場合、あなたの関わるブランドの寿命が近いことを教えてくれる。
その場合、あなたは遠くないうちに、仕事上の大きな選択を迫られることになる。
時代の転換点でブランドが選択を迫られると多くは延命を試みる
時代の転換点で、多くのブランドは延命を試みては、大した成果を得られず、どっちつかずの保守的な組織になってしまう。本書では、イーストマン・コダック の事業の例を挙げているが、まさにその通りであろう。
あなたが思う「コダックとは何か」と問われても、今現在、何を代表的な商品並びにサービスなどを提供しているか、イマイチ「ピンと」来ないであろう。なんとなくカメラに関わっているのだろうなぁ程度の人が大半であって、細かく事業領域が理解している人は、専門家か業界人ぐらいである。
イーストマン・コダックは、普通のカメラ市場でまさに世界を制するぐらいのシェアを獲得した「フィルムの巨人」と呼ばれ、カメラ市場を牽引した巨大企業であるが、デジタルカメラ市場への参入が遅れ、後塵を拝する結果となり、2012年1月にイーストマン・コダックは事実上、経営破綻に追い込まれてしまう。
イーストマン・コダックは、75年に、世界発のデジタルカメラの開発に成功しているが、なぜか商品化はしてない。フィルム市場を守ろうと、成長戦略を取らず、特許などを切り売りした防御戦略を取り、デジタル市場に転換した日本勢のブランドに大敗している。
あなたの周りでも、多くの商品が時代と共に変化してきたであろう。音楽・テレビ市場などは、その急激な進化に晒された。レコードやビデオ等は コンパクト・ディスク となり、今やデジタル全盛で、そのコンパクト・ディスクも殆ど使われず、デジタル配信でダウンロードが主流になりつつある。
本も紙媒体から、電子書籍 に移行しつつあり、端末機器で読む時代が来ており、パソコン市場は、スマートフォン に押され気味で、使用頻度が逆転している。様々な分野で、旧世代のブランドは、新世代にとって変わられつつあり、旧世代のブランドは、選択を迫られているが、多くは延命措置を取り、その大半が、徐々に寿命をすり減らしながら、業績は悪化している。
本書では、重要として次のように伝えている。「革命的な新しい商品が開発された時、革命的な新しいブランドが決まって勝利するものである」 と。
あなたが関わっているブランドは、旧世代なのか、新世代を代表するものとなるのか、冷静な判断で自己を見つめて欲しい。
参照:ブランディング22の法則