米国巨大アパレルブランド”ヴィクトリアズ・シークレット”の広告戦略とは
今回は、米国巨大アパレル企業、ヴィクトリアズ・シークレットについて広告戦略と考察と書評を行っていきたいと思う。ファッションブランドの中でも、ショーを中心とした面白いポジションで戦略を展開している。
セクシー路線ばかり目立つ企業であるが、最大の稼ぎ頭のブランドであり、ショー・ビジネスにおける現在の広告戦略をまとめておきたい。
ヴィクトリアズ・シークレットについての分析を行った書籍は少なく、今回参考資料として「『ヴィクトリアズ・シークレット』が全米の女性に愛されるワケ」を資料として参照している。
男性にとっては、ブランド分析やらソーシャルや広告戦略などが参考となり、女性にとっては、エンジェルたちの条件や、どのような経緯でブランドが成り立ってきたか知ることができるので、興味がある 方は、一読願いたい。
ショーで巨額広告費を投入し、ブランド認知を最大化させ、後にファッションビジネスで売上を立てる
ショーを開催して、約22年近くが経過しているが、当初のヴィクトリアズ・シークレットのファッションショーは、業界向けの質素な展示会的なショーであったが、次第に豪華になり、今日では「1時間独占テレビCM」まで打つほど、ヴィクトリアズ・シークレットの売上アップに貢献している。
当初は、普通の展開会であったことで、コンセプトを徐々に変化させ、エンターテイメント色を増してきている事から、ショーブランド化していった経緯がありそうである。
ショービジネスを成功させた上で、その後ファッションビジネスで収益を立てる戦略なのだが、その戦略の 5 つの特徴が以下である。
- 商品よりもファッションショーのパフォーマンスに焦点を絞る
- 回毎のファッションショーのテーマを一貫させること
- ランウェイを歩くモデルにつける「天使の翼」
- ショーを行う巨額の制作費を掛ける
- 複数のメディアを総動員し自在に駆使する
ヴィクトリアズ・シークレットのファッションショーは、主要な広告ツールとして極限まで使い切るのが、ヴィクトリアズ・シークレットの大きな特徴と言える。
まさにショービジネスを広告として全面に立て、従来型のファッションビジネスで、売上を立て、利益を刈り取る二段階の戦略と言える。
一般的なファッションビジネスの場合、ヴィクトリアズ・シークレットのような大規模のショーを自前で用意せずに (用意しても多くのファッション企業共に共同か自前でも比較的小規模) CMやその他メディアで季節ごとの新作モデルを広告をして、その後店頭や通販などで売り切る事が多いが、ヴィクトリアズシークレットはショーにおける広告に多くのリソースを割いている。
すべてを自前で用意できるのは、大規模な企業であり、流通ノウハウや運営ノウハウを持ち合わせていない企業ではこのような大規模なショーの運営は出来ず、ヴィクトリアズ・シークレットの最大の強みなのである。
顧客の大半は女性であるが、男性向けエンタメ性を取り入れた 4 つの戦略
ヴィクトリアズ・シークレットは、女性用のクリスマスプレゼントや誕生日プレゼントとして男性顧客を開拓する戦略を取り入れている。
女性だけではなく、男性にも魅力的に映る為に以下のような戦略を展開している。
- 著名人や有名人などのパフォーマンスを取り入れたエンターテイメント性
- 派手なランジェリー姿を見せる事で美しいモデルたちを堪能できる
- 関心を惹く為わざとらしいぐらいの豪華な雰囲気
- ターゲットをファッション専門家向けではなく男性を含めた一般顧客
あえてセクシーさを強調することで男性視聴者を長く釘付けにすることで、プレゼントにおけるブランド認知度を意識的に向上させている。
これが当初のような業界向けの展示会であった場合、男性は視聴するかと言えば、明らかにノーである。
あなたが男性の場合、他のファッションショーに比べ「見ていて飽きない」と思われるが、男性を強く意識した工夫をしているのである。
よりセクシーによりエンターテイメントにすることで、男性に向けたPR戦略は年々増してきている。
ヴィクトリアズ・シークレット・エンジェル 5 つの条件
ヴィクトリアズ・シークレットの商品広告やファッションショーを支えるモデルには、以下の二種類のモデルが存在する。
- ヴィクトリアズ・シークレット・エンジェル
- ランウェイ・エンジェル
1.のヴィクトリアズ・シークレット・エンジェルは、カタログ撮影と商品PRのツアーに必ず参加する契約を締結、ブランドの顔として活躍しなければならないモデルである。2.のランウェイ・エンジェルは、専属契約を結んでいないが、ファッションショーに参加するモデルである。
ヴィクトリアズ・シークレット・エンジェルの条件は、5つの条件が必要となる。
1. 健康的なブロンズの肌 2. 清潔感のある白い歯 3. 目力重視のメイクアップ 4. ゴージャスなロングヘア 5. 均整のとれた程よい筋肉
ヴィクトリアズ・シークレットというブランドの代表的な商品がランジェリーと水着である事から、これらの衣装を魅力的に着こなすモデルが、健康的で美しい事が条件となる。
つまりスーパーモデルのように痩せすぎではいけないのであり、モデルにおける条件が、ラグジュアリーブランドとは大きく違うところである。
ヴィクトリアズ・シークレット・エンジェルたちが、ワークアウトや食事、健康管理に勤しむのは、上記の条件に合致するボディを維持する為に行われているのである。
エンジェルを自前で作り上げセレブリティ・エンドースメントの効果を最大限狙う
セレブリティ・エンドースメントという広告戦略を上手くコストを下げながら、巧みに使って、ブランドの成長を持続的にしている事が、他のアメリカファッションブランドと大きく違う特徴である。
セレブリティ・エンドースメントとは、簡単に言えば「有名人によるお墨付き」といったところである。
このセレブとして、有名人を使った広告で広告主である企業は、そのイメージに合ったセレブを見つけ出し、高い契約金を払う必要がある。このブランド大使たるミューズの発掘は非常に難しく骨の折れる作業である。
有名人広告が上手く機能する為には、次のような消費者心理があると言われる。セレブと同じライフスタイルを真似たいという気持ちを起こさせる「ハロー効果」を使った消費パターンである。
心理学の世界では「認知バイアス」を上手く使い、古典的であるが、未だに使われるという事は、非常に効果が高いという事である。有名人広告における力の入れようは洋の東西同じである。
有名人の後光の力を借りて、ブランド及びその対象商品のイメージアップを図り、自社の商品の売上を上げる為に行われるのである。
自社のブランド力を維持し、セレブを使って対象商品を広告採用する条件としては、魅力・信頼性・ブランドとの関係性が求められる。その関係性が薄い場合、広告は上手く機能しなくなるのである。
そこで、ブランド力を向上させまた商品を効果的に売るために、ヴィクトリアズ・シークレット・エンジェルを内製する戦略を編み出したわけである。
他のメディアで活躍していたとしても、ヴィクトリアズ・シークレット・エンジェルになり活動した結果、ブランドを土台としてさらに有名となっていくわけである。
つまり、多くのラグジュアリーブランドがモデルをアウトソースするなか、インソーシングに注力している事が大きな特徴であり、最大の武器である。
日本においても、雑誌社の専属モデルや、アイドルグループでもプロデューサーが入り、オーディションを行って、アイドルをインソーシングしているが、同じような例である。
同じようなコスチューム、同じような容姿、同じようなライフスタイル、同じような趣向など、自社のブランドに合う複数のモデルを自ら育ている。
これらの例から見ると、モデルの「個性」を重視するよりも、ヴィクトリアズ・シークレット・ブランドに合うエンジェルを「量産」するイメージの方に近い。
そうすることで、他社との差別化、広告コストの削減、自社のショーブランド力向上など、比較的エンターテイメント色が強くなりがちであるが、セレブリティ・エンドースメントの効果を最大限狙いながら、自社の商品を売っているのである。
Images courtesy :Victoria’s Secret.com /Pinterest