【Victoria's Secret】ヴィクトリアズ・シークレット:カワイイというその価値を巧みに価格に反映させる戦略で上手く購入へ誘う

【Victoria’s Secret】ヴィクトリアズ・シークレット:カワイイというその価値を巧みに価格に反映させる戦略で上手く購入へ誘う

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米国巨大アパレルブランド”ヴィクトリアズ・シークレット”の価格戦略とは

 

今回は、米国巨大アパレル企業、ヴィクトリアズ・シークレットについてカワイイを武器とした価格戦略の考察と書評を行っていきたいと思う。

AIDMA アイドマ とは消費者の心理のプロセスを示した略語であるが、これについては非常に有名な理論であるので、リンクを参照していただきたいが、米国でのマーケティング・セールス・広告などには、AIDAが主に使われる。

1.Attention(注意) 2.Interest(関心) 3.Desire(欲求) 4.Action(行動)

他にネット利用が普及した現在では、これに AISAS というのもある。

1.Attention(注意) 2.Interest(関心) 3.Search(検索) 4.Action(行動購入) 5.Share(共有)

がその消費購買パターンに分類されている。要はこの流れでサービス設計がなされているのである。

ヴィクトリアズ・シークレットの下着を身につけたエンジェルによる広告を見て、女性顧客の注意を引き、関心を持たせ、着けていたものを欲しいと思い、ヴィクトリアズ・シークレットのショップやオンラインで購入するという一連のパターンを言う。

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セクシー路線ばかり目立つ企業であるが、最大の稼ぎ頭のブランドであり、現在の価格戦略を簡単にまとめておきたい。

ヴィクトリアズ・シークレットについての分析を行った書籍は少なく、今回参考資料として「『ヴィクトリアズ・シークレット』が全米の女性に愛されるワケ」を資料として参照している。

男性にとっては、ブランド分析やらソーシャルや広告戦略などが参考となり、女性にとっては、エンジェルたちの条件や、どのような経緯でブランドが成り立ってきたか知ることができるので、興味がある方は、一読願いたい。

 

あらゆるマーケティング活動に”トリガー”を仕込んでブランドをイメージさせる

 

ヴィクトリアズ・シークレットは、多くのトリガーをイメージの中に埋め込もうと日々プロモーションを行っている。

マーケティングの上でのトリガーは、ある商品がヒットするためには、なるべく人々の頭に浮かびやすく頻繁に話題にのぼるようにプロモーション上の仕掛けを意識的に行う事である。

ヴィクトリアズ・シークレットはこの効果を戦略的に織り込む事で、すぐにイメージが浮かぶようにしているのが、ティーン向けブランド「PINK」である。名前からしてすぐにイメージできるように名前が付けられているのがお分かりになるであろう。

 

【Victoria's Secret】ヴィクトリアズ・シークレット:カワイイというその価値を巧みに価格に反映させる戦略で上手く購入へ誘う
Images courtesy :Victoria’s Secret.com

 

名前に色を入れる事で、イメージカラーまで一気に思い起こさせ、VSのピンクと言えば、ファッション・バッグ・アクセ・下着という「すぐにできる連想」も予め設計された命名である。

これが、聞かなければ意味が分からず、読みの難しい単語であれば、同じようにすぐに「女性向け商品」とイメージできるか、それには途方もないプロモーションと高い認知度が必要となる。

分かりやすく簡単で認知しやすい名前をブランド名に採用したヴィクトリアズ・シークレットの戦略性が強く示唆されている。

ただ、ヴィクトリアズ・シークレットは正式にピンクを企業カラーにしていると宣言しているわけではない。商品における特性からして、化粧品・アパレルなど女性市場をターゲットにした商品の色として “トリガーのように” 利用しているに過ぎない。

女性の下着、ランジェリー、化粧品などを扱うヴィクトリアズ・シークレットが、商品の色やイメージカラーとしてピンクを利用するのは、理に適った戦略なのである。

 

値頃感と手に届く高級を狙う為にブランドイメージ維持に努めるエンジェルたち

 

女性の下着、ランジェリー、化粧品などを扱うヴィクトリアズ・シークレットが、商品の色やイメージカラーとしてピンクを利用するのは、理に適った戦略と言う事は理解できたと思う。

では価格戦略においてはどうかと言う事である。私たち一般消費者は、自分たちの基準による「値頃感」を強く意識している。

内的参照価格は、自己の記憶や経験を元に頭や心のなかで考える価格の事である。例えばある企業が、特売を頻繁に行い、消費者が慣れてしまうと、内的参照価格は大きく下げてしまう。

次にそれよりも安い価格にしないと消費者は安いと感じなくなる。これについてはあなた自身も多く経験していることであろう。

 

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Images courtesy :Victoria’s Secret.com

 

例えばある飲食屋が、約 300 円だったものが、セールなどで、いきなり約 80 円に下がり、セール終了後、企業が再び元の約 300 円に戻した場合、あなたはもとの約 300 円を非常に高く感じてしまうのではないか。

また次のセールで約 100 円に落ち着いたとして、それが安いと思うかと言うと、約 80 円を経験してしまった事から割高と感じる事であろう。

あなたの中の参照価格が「妥当」と判断した価格が、約 300 円から約 80 円に下がったという事である。

割安と判断できるのは、約 80 円より下の価格となってしまったのである。

そのような意味から、高級ブランドがなぜ目が飛び出るほど高いのか なぜ、自らセール をしないのかという心理を理解すれば、高い値段で商売しているブランドほど、この重要性を意識してブランドを維持している。安売りは自らのブランド力を破壊するに他ならないからだ。

ヴィクトリアズ・シークレットのブラジャーが、日本のブランド製品よりも約 10~20 ドルほど高いが、この価格差は、エンジェルたちやファッションショー、店頭での他社以上のサービス力で、顧客がブランドと触れ合う時の経験値から「それを良し」として購入されるのである。

ただヴィクトリアズ・シークレット・ブランド自身も、定期的に割引などを導入しているが、これにおいては、値下げへの誘惑と高価格の維持のせめぎ合いを企業経営上行っている苦しい状況が見えてくるのである。

その価格政策からして、一般人が「手に届かない高級」よりも「手に届く高級」を経営上展開している。それが可能なのも、エンジェルやショー、デザイナーや製造部門が価格におけるブランド力を維持しているからである。

 

VSが毎月行う「無料パンティ・クーポン」におけるフリー戦略

 

ヴィクトリアズ・シークレットは毎月、全顧客に対して「無料パンティ・クーポン」を送付しているという。比較的日本でもクーポンについても広がりを見せているが、比較的早期からヴィクトリアズ・シークレットは実施していたようである。

「無料パンティ・クーポン」は所謂、店舗に来てもらう為の戦略の一環であるが、来店するコストは案外高いものである。

米国小売企業の多くに導入されており、店頭小売での月次の売上に非常に大きな効果を上げているのが、クーポンなのである。

ヴィクトリアズ・シークレットの店舗に訪れた多くの顧客が、何も買わずに帰るというパターンを相当少なくしているようである。

これについては、出店を加速していることから、非常に店頭での販売を重視している現れであり、試着という経験を要する商品構成上、店頭で売り上げが多く上がるのも比較的自然である。

 

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Images courtesy :Victoria’s Secret.com

 

また若年層向けブランド「ピンク」において、ヴィクトリアズ・シークレットは 10ドルの割引クーポンを送付している事から、価格に敏感な若年層には、モノよりもカネというインセンティブの戦略を取っている。

顧客は、このクーポンを持ち、店舗を訪れるが、10 ドルの割引を得るために 10 ドルを超える商品を購入していく。

価格帯的にはブラが、約 30 ドル前後、パンティが約 9.5ドル前後となっており、クーポンを使うと必ず売上は上がってしまうように設計されている。クーポンを発行できるのであれば、利益率も非常に高いであろう。

ヴィクトリアズ・シークレットは、年二回のクリアランスセールを実施しているが、通常は、1月と夏に実施される。ディスカウントの幅は、40%から70%というからかなりの率である。

在庫を一掃するための服飾分野の悲しい性であるが、このあたりのセールを実施すれば、目先の数字は上がるであろうが、ブランド力は低下する。

その低下をある程度抑制しているが、エンジェルたちやデザイナー・製造部門に他ならないが、割引まで行い、あらゆるマーケティング・セールステクニックをすべて使い切り、売上至上主義と株主利益を最大限重視する姿勢は米国的ブランドである。

最近では欧州も米国に近くなってはきているが、欧州の高級ブランドと相違するところである。

 

オンライン販売における限定的な割引も用意し平均購入金額を段階的に上げる

 

【Victoria's Secret】ヴィクトリアズ・シークレット:カワイイというその価値を巧みに価格に反映させる戦略で上手く購入へ誘う
Images courtesy :Victoria’s Secret.com
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オンラインショッピング限定の段階的な割引も用意されている。顧客が 100 ドル分の商品を購入すれば、15 ドル (割引率 15 %) のディスカウント、150ドルの場合は、30ドル (割引率 20 %) のディスカウント、250ドルの場合は、75ドルのディスカウント (割引率 30 %) というように、購入金額に応じて、ディスカウント額及び割合が段階的に増加していく仕組みを採用している。

この場合の効果は、購入を前提とした顧客は、割引分までの金額まで購入を止めないという事である。

80 ドルしか買物をしない場合と、100 ドルまで買って、 85 ドル払う方が得と考える女性が多い事で、ヴィクトリアズ・シークレットのオンラインの売上増に繋がっている。

それに、顧客が 100 ドル分の商品を購入すれば、15 ドル (割引率 15 %) のディスカウントという事は、顧客にとってひとつの購入の基準となりやすい。つまりは100ドルが最低落としてくれる金額がアンカリングされるのである。

このアンカリング効果については、購入の基準を作る上で、非常に有効な価格戦略である。

顧客が 100 ドル分の商品を購入すれば、15 ドル (割引率 15 %) のディスカウントという数値を与えられると、その情報に拘束され、その価格まで商品を買おうと考えるのである。

Images courtesy :Victoria’s Secret.com /Pinterest



About PG編集:道長

食べる事と寝る事に一生懸命な旅人。 世界は感染症や戦争で混沌としておりますが、平和になったら平和な国を旅をしたいと準備しております。 先代の管理者様より、サイト管理・記事制作を委任しております。 ※現在は写真提供をして頂いております。