ベルナール・アルノー:スターブランドを中心に強力なブランドグループを構築したトップのインタビュー
LVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン を創った ベルナールアルノー のインタビュー形式で全体が構成されている。
アルノー自身の生い立ちから、理工科大学卒の34歳の建築屋が、経営困難に陥った国営繊維企業ブサックを買収した際に、傘下に クリスチャン・ディオール を保有していたことから、ブランド・ビジネスを開始したときの内容も詳細に語っている。
また、買収した老舗ブランドを再生したその経営手法から、グローバルに流通を制し、希少価値の高いブランド力を引き上げる戦略、そして政治からブランドビジネスの未来や自身のグループの未来まで、アルノー自身が細心の注意を払いながら、経営戦略やその個人的な思想までを語っている。
彼の関わったブランドを見ていくと、破壊ではなく構築をめざしている点が挙げられる。LVMHを掌中にしたとき、本物のスターブランドを所有する世界に類を見ないグループということをいち早く見抜く。
前回 「【LVMH】モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンのビジネスの手法とコングロマリットの完成 」 の際にも詳しく取り上げているので参照としていただきたい。
高級ブランド品産業で企業グループが成り立つ秘訣を中核となる「本物のスターブランド」が必要であり、本物の三つの条件を満たしていることが大事だという。
- に永続性
- に強力なキャッシュフロー
- に長期に渡る安定成長
と条件をあげている。
世界中でこの条件を満たしているのは、カルティエ、ルイ・ヴィトン、ドン ペリニヨン ぐらいだという。グッチを有する ケリング においては、モードに偏り過ぎで、キャッシュフローにも弱く、経営に波があるので、無理があると見抜いている。
過度な中央集権を避け、拡大・拡張を前提とした緩やかな統治方式を取り入れている
グループを中核としたビジネスモデルを立て直したのは、ベルナール・アルノーであるが、ルイ・ヴィトンの成功は、ブランドビジネスの中で最も成功したモデルといっても過言ではない。
スターブランドであるルイ・ヴィトンを中心として、衛星上に様々なブランドを配置し、お互い相互補完しながら、成長を維持している。
前回取り上げた「【LVMH】モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン、ブランドの独立性を保ち比較的緩やかな管理方式 」でもグループ経営にありがちな極端な中央集権的な経営手法を取ると、規模の限界が訪れる。
そのことに、アルノーは早くから気づいており、L・ブランズ のように肥大して、切り売り・再整理をするグループとは異なっている。統治は緩やかな方が拡大しやすいのである。
同族の経営者による権力の中央集権化を避け、比較的小規模な中小企業の集合体として完全に分権化した緩やかな統治組織を作り上げている。
最近では腕時計分野・既存ブランドの買収・新しい市場開拓に積極的

最近では腕時計分野に力を入れていたり 「参照:【ラグジュアリーブランド戦略】高級腕時計 5 大人気ブランド選びの基準とそのブランド戦略について 」、ブルガリ 「参照:【BVLGARI】ブルガリ:一大時計グループを構築するイタリアの巨星ブランド 」 や リモア 「参照:【RIMOWA/リモワ】誰とも被らず旅行で一目置かれる希少価値の高いリモワ・コラボレーションスーツケース 3 つのモデル 」 でも取り上げたが、積極的に様々な分野に買収を通じて参入を図っている。
また、東南アジアの新興勢力のブランドを買収したりと新しい市場の参入にも積極的である。全世界支配のために今後どのような買収戦略を使い市場を広げていくのか注目が集まっている。
アルノーは、その建築的な論理的思考と官能的な芸術的感覚のバランスの良さをブランドビジネスに応用している人物と言える。現在のところ、ブランドビジネスで最も成功している人物の考え方を学ぶには最適な一冊である。
参照:ブランド帝国LVMHを創った男 ベルナール・アルノー、語る