【影響力の武器と高級ブランド】第1章 カチッサー効果、価格が釣り上げられたモノ=価値のあるモノという誤解

【影響力の武器と高級ブランド】第1章 カチッサー効果、価格が釣り上げられたモノ=価値のあるモノという誤解

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特定の条件で価格が高騰した場合、高価なモノ=良質なモノという認識は時に誤解を生む

 

最初の章で最も面白い事例は、カチッ・サー効果におけるジュエリー店の単純な間違いにおける事例であろう。あるジュエリー店は、売れない在庫の宝石を処分するために、通常の価格の「1/2」の表示をつけて販売して、在庫整理を進めるよう指示したわけだが、間違って「2」と表示してしまい、価格を倍で売り出したところ、あっと言う間に完売してしまったという事例である。

 

影響力の武器と高級ブランドとの関係

 

故意にしろ偶然にしろ、コントロールされた価格は、適正に付けられた価格ではなく、その店のオーナーのさじ加減である。要は価格が釣り上げられていて、それが適正でなくても、顧客がその価格を詳しく知らない場合、価格は正当化されやすい。

聞いた話であるが、宝石の買取価格は、なんと店頭で買った新品価格から、約1/16~1/20にまで落ち込む。約100万円で買った宝石が、買取になると約16万円程度まで落ち込むというのである。私自身も宝石の値段は正直分からない。宝石自体の原価は存在するが、販売価格は販売業者のさじ加減で付けられる。

このように購入する者が、その分野 ( この場合、宝石の素材価格 ) を知っている事が少ない場合、店頭やEC・オークション等で買った価格=あなたが付けた価値なのである。宝石や高級ブランドでは、知る者が少ない故、価格を聞いて驚き、大半の人々が 「高価なモノ=良いモノ」 として、そんなものかと納得してしまうわけである。

これが大根などの野菜、日用品、サーバー代、デジタル家電等のガジェットなどではそうはいかない。なぜならそれは、市場で広く現状の価格を知る事ができる事から、安くなればなるほど反応が強くなり、逆の意味で釣り下げられる要因となりやすい。

現在では、価格比較サイトなどであっと言う間に市場価格調査は可能であるが、その調査で、大半の人々が、特定の分野でその商品の価値が分からない場合、適正に価格が付けられているか、特に注意する必要がある。そこで今回は、個人的な事例からコレクターや業者しか知っていない分野を掘り下げ、本書に書かれている事例を参考に「影響力の武器」っぽい分野を記しておく。

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コレクターのカチッサー効果で高額に取引される”中国切手ボストーク”

 

個人的に保有している中国切手のアルバムである。私にとっては、譲り受けたモノなので、ブランド価値は一切感じず、どちからと言うと、処分費用を貰いたいぐらいである。一方、中国人の切手コレクターにとっては、約 80~100万円を出しても欲しいアルバムなのである。

つまり価値とは、欲しい人にとって、価格が高いほど、価値があると瞬時に手っ取り早く判断しているのである。恐らく買取業者にとっても、中国人が高い価値(価格)を付けていなければ、自分たちがそれほどの価値を感じておらず、大半が二束三文で取引されていただろう。

ちなみに国内の切手市場で、高い価格を付けているのは、戦前戦後の一部の日本の古い切手と、中国の切手のみで、後の国はたいした価値はない。

 

【影響力の武器と高級ブランド】 第1章 カチッサー効果、価格が釣り上げられたモノ=価値のあるモノという誤解

 

同時代、業者が提供した各国のボストークの販売価格及びその原価はさほど変わらず、日本と中国切手のみが、コレクターや業者によって価格が釣り上げられているのである。要は、それ自体がそれほどの価値のあるモノではなく、コククターの祖父は、非常に安価に各国のボストークを当時手に入れている。

つまり、オークションなどで、不当に釣り上げられた価格は、一時の流行であって、沈静化すれば、価格は下落していく。この場合、ブランド力の有無は関係なく、価格が乱高下しながらやがて価値はゼロに近づく。

 

【影響力の武器と高級ブランド】 第1章 カチッサー効果、価格が釣り上げられたモノ=価値のあるモノという誤解

 

カチッサー効果同然で、高額で転売資産目的化している”マルタンと山崎”

 

これも個人的に保有している 山崎シェリーウッド 1983 であるが、非常に希少性のあるボトルである。親父がプレゼントでもらったようだが、これについても現在でも非常に高値で取引されている。蔵出しは、1998年頃、マスターブレンダー 佐治敬三のサイン・ラベルが付いているので、高級品という事が分かる。

 

【影響力の武器と高級ブランド】 第1章 カチッサー効果、価格が釣り上げられたモノ=価値のあるモノという誤解

 

山崎シェリーウッド 1983は、山崎の伝統あるストレートヘッド釜で1983年3月に蒸留、1空きのシェリー樽に詰め、琵琶湖を望む近江エージングセラーの9号庫北ブロックに貯蔵、わずか20樽分を厳選して瓶詰した限定・極上品。 容量は、180mlのミニボトルであるが、オークファンで調べた相場はなかなか高額に取引されている。

もはやヴィンテージ山崎は、これも多くは中国人が多く買いあさっており、その多くが国外に流れているようだ。また普通の山崎においても、数は少なくなっており、一時ほどではないにしろ爆買いの対象となっているのであろう。普通の山崎なのだが、カチッサー効果のように、もはや条件反射である。

 

【影響力の武器と高級ブランド】 第1章 カチッサー効果、価格が釣り上げられたモノ=価値のあるモノという誤解

 

またレミーマルタンであるが、これについても、中古市場で条件反射のように高値で取引されており、日本ではすっかり飲まれなくなった古酒が日の目を浴びている。前回取り上げた内容「【Remy Martin Louis XIII】レミーマルタン ルイ13世 高額洋酒 ブランデー買取計画を立ててみた」でも説明済であるが、バブル時代に多くの日本人が買い漁った高級な古酒が、現在のところ、多くは中国人が買い漁っている。

 

【影響力の武器と高級ブランド】 第1章 カチッサー効果、価格が釣り上げられたモノ=価値のあるモノという誤解

 

当時、バブルを謳歌した日本人にとっては、洋酒は高額なモノであり、高価なもの=良いものという条件を備え、価格とネームバリュー・免税の観点から、旅行先では、高いモノから買って持って帰られたようである。

まさに当時バブルを謳歌している日本人旅行者は、旅先の販売業者が、カチッサー効果を上手く利用し、嵌め込まれている可能性は否定できない。

 

現在の日本人でも様々な心理効果を利用する企業に多くの人々が嵌め込まれている

 

【影響力の武器と高級ブランド】 購入・販売等の心理効果とその考察

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本書では、高額な自動車本体を購入するに至った場合、その付属品であるオプションが本体価格に比べ、非常に小さく見える価格である事から、つい購入に至り、結果的に多くのお金を販売業者に支払っている事例を紹介しているが、これはまさにコントラスト効果を上手く利用され、嵌め込まれている。

また、本書で取り上げられている 「住宅における販売の現場」でもコントラスト効果は、応用されている。つまりは、あちこちと条件をつけては、高い割にはあまり良くない物件を最初に見せ、その後本当に売りたい家を最初の家よりも安く、見栄えが良い家を契約を持っていく心理戦略が住宅販売会社により行われているという。

また個人的な経験でも、住宅やブランド製品などの営業マンや様々な小売での店頭販売員などを経験している関係上、この手の心理テクニックの効果を教え込まれた次第である。本書でも似たような事例を取り上げられていて、ちょっと驚いたのであるが、それも比較的高額な商品などに効果があった。

どのような例かと言うと、価格をあえて表示していない商品をいくつか配置しておき、顧客から価格を聞かれた場合の対処である。価格を聞かれ、上司にいくらかを尋ねる。上司は価格を教えるが、その価格が顧客に聞こえるように教える。その後、聞いた販売員は、上司に聞いた価格よりも少し安い価格で顧客に提供する。

割引された価格は、本来の売りたい価格であるのにも関わらず、値引きというお買い得感、自分だけ他の顧客よりも特別扱いを受けた優越感を感じる事が出来た顧客は、比較的満足度が高く、その購入に至るという次第である。そのような事例がたくさん書かれており、高級ブランドを作りたい人やまた販売している人、ビジネスの現場で円滑にかつスムーズに取引したい人には、本書はオススメである。



About PG編集:道長

食べる事と寝る事に一生懸命な旅人。 世界は感染症や戦争で混沌としておりますが、平和になったら平和な国を旅をしたいと準備しております。 先代の管理者様より、サイト管理・記事制作を委任しております。 ※現在は写真提供をして頂いております。

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