高級ブランド・マッカランの超高額ウイスキー戦略
現在のマッカランは、新商品に1万ポンド以上の価格をつけることを何とも思っていない、超高級ブランドだ。新しい蒸留所とビジターセンターの建設に、1億ポンドを投じることも厭わない。同時に長期的な目標として、売上100万ケースの突破、そしてシングルモルトの世界的リーダーであるグレンフィディックを追いつくことを掲げている。マッカランは最近まで、一番古いウイスキーでもほとんどのシングルモルトファンが購入できるくらいの価格で販売していた。この 50 年物がまさにそうだ。元々はイギリス、ドイツ、フランス、アメリカで 50ポンド (約 7,576円: 為替は、2017.10現在) 前後で販売されていたが、評判が高まるにつれ価格も上昇した。この価格は1983年当時のものなので、2012年の小売物価指数を当てはめると 143 ポンド(約 21,667円: 為替は、2017.10現在) となる。このボトルは500本限定で販売され、恐らく相当数がすでに飲まれてしまっているので、今や入手困難だ。参照:伝説と呼ばれる 至高のウイスキー101
世界で最も高額なウィスキートップ 25 の上位をほぼ独占するブランド力
今回は、超高額ウイスキー・マッカランについて簡単に記録をしておきたいと思う。マッカランについては個人的にも馴染みの深いブランドである。
自分でも比較的手に取りやすい価格帯のウイスキーを購入して愛飲することもあり、上記「伝説と呼ばれる 至高のウイスキー101 」図鑑を読みながら、世界には色々なウイスキーがあるものだなと感心しながら読んでいた。
だが、ふと 「世界で一番高いウイスキーは何かな」 といつもの如く、ブランドの市場価値を調べるのが好きな事から、簡単にではあるが、現在どのくらいの市場価値があるのかまとめておきたいと思った次第である。
上記データは 「The World’s Top 25 Most Expensive Whiskies 」 のデータの上位ランキングである。最高価格をつけた順にランキングされているが、マッカランが、ランキングをほぼ独占している結果が出ている。
では、さっそく上位 5 銘柄の価格等を取り上げておきたい。
1. ザ・マッカラン ラリック 55 年
市場価格:8,938,110円
産地:スコットランド / スペイサイド
酒類:シングルモルト
英語名:The Macallan Lalique 55 Year Old
2. ザ・マッカラン ラリック 57 年
市場価格:6,146,890円
産地:スコットランド / スペイサイド
酒類:シングルモルト
英語名:The Macallan Lalique 57 Year Old
3. ザ・マッカラン ラリック 62 年
市場価格:6,035,295円
産地:スコットランド / スペイサイド
酒類:シングルモルト
英語名:The Macallan Lalique 62 Year Old
4. ザ・マッカラン ラリック VI 65 年
市場価格:5,341,933円
産地:スコットランド / スペイサイド
酒類:シングルモルト
英語名:The Macallan Lalique VI 65 Year Old
5. ザ・マッカラン アニバーサリーモルト 50 年
市場価格:4,090,748円
産地:スコットランド / スペイサイド
酒類:シングルモルト
英語名:The Macallan Anniversary Malt 50 Year Old
最大の市場米国から軸足をアジア市場に稀少性のある蒸留酒を売り込む
次に「オークファン 」を使って日本市場で、過去 10 年間最も高額に売れたウイスキーである「マッカラン 50年」の市場データをみていこう。
約 470 万円程度が最高落札額なのだが、本当に妥当な価格なのかとつい気になった次第である。
上記、最高価格付近は、同じ出品者、下位出品者も同じような顔ぶれが見えてくる。多くは酒販系の業者であろうが、個人の出品もあり、玉石混合の状態である。
また上記データは 「Market Data: The Macallan Anniversary Malt 50 Year Old 」 であるがこれを見ていくと、2017年4月辺りから急速に価格が下落している。
最新の価格で 13,966ドル (約 158 万 7,045円:2017.08 現在/為替は 2017.10 現在) である。データを見ると、海外では 約 400~450万円前後で比較的安定していたが、急速に価格が下落している。
国内のオークション市場は、明らかに高騰しており、国内で入手がほぼ困難な事から、最も高額についている価格帯を狙って売られたようである。
購入した人にはお気の毒であるが、もはや市場価格は、約 1/3 となってしまった。ここから考えていくと、超高額に売られる酒類は、価格が高騰するまで、資産目的で持つ人が多数含まれているようである。
つまりコレクターが、コレクションを手放す時、市場価格が高騰して最も高額 か 価格が崩れ下落が拡大しないうちに処分するかどちからなのである。
超高額なコレクション商品においては、資産保有目的として購入しても、すでに市場を読まれてしまっていることから、多くの場合高値掴みとなる。
次に「オークデータ 」で スコットランド・ハイランド のカテゴリーで約 5 年間の総落札額である。総落札額は、約 5 年ほど前は、約 1,000 万円を上下している取引額であったが、最近では、約 4,000~ 5,000 万円 と約 4.0~5.0 倍に落札額が急激に増えてきている。
年々落札額が右肩上がりに成長していることから、アジア市場での成長力が、狭いデータながら垣間見ることができるのである。
アジア市場は成長市場であり、希少なモデルを投入していくことで、廉価なモデルの平均価格帯も引き上げられ、全体としての市場規模もますます増える傾向にある。
伝説と呼ばれる至高のウイスキー 101 を読みながらマッカランを楽しむ
今回は、書籍を読みながら、データを調べてちょっと面白いなと思いながら、自分なりに考えをまとめて記事としているが、本書について少し触れておきたい。
この手の書籍を読む人は、ウイスキーコアな愛好家やバーテンダーなどの職業人など、ちょっとウイスキーについて「ギーク 」になりたいもしくは、ギークとして、ちょとした小話を持っておきたいという人向けに書かれていると思う。
本書のポイントは主に三つに集約されるが、1.に普通の人は見ることのできないウイスキーばかりを写真・情報と作者の個性で解説している点。
2.に収録されているウイスキーはマニア向けの酒類が多いこと。3.に時を越えて語り継がれるウイスキーを4つのカテゴリー (幻の一本・高級品・現存・伝説) に分けてわかりやすく紹介している点である。
本書に掲載されているのは、限定生産品、世界に一本しかないモデル、超高額でカネをいくら積んでも飲むことが困難なモデルなど、歴史や文化、風土などを総合的に取り上げ、多角的におもしろおかしく解説されている。
上記モデルは、マッカランの18年である。上記のデータで平均落札額をみても、年々上昇傾向である。18年は、先日購入したモデルであるが、これでもオークション市場で、約 2 万円近くする。
本書をめくり、世界中の様々なウイスキーを見ながら、グラスを片手に、奥深い歴史を味わいながら、楽しく読むことができた。