社会的証明による強い影響力によって他人を模倣することで安心と恐怖が生まれる
第 4 章で取り上げられるテーマは「社会的証明」その実験結果やそれを証明する多くの事例を共に紹介されている。個人の意見の妥当性に疑問に感じた時、その証明の為に、自分自身を納得させる為に、妥当性を証明することである。
その証明の為に強力な威力を発揮するのが「他人への模倣」による効果である。多くの人は、他人がどのように振る舞い、何を信じ、どのように行動しているかで、大多数のやり方を模倣しようとする。所謂「同調」なのであるが、この大多数の人々の態度や意見に順応していく効果は、購買における意思決定、寄付行為、恐怖心への低減など、多様な行動領域で確認されている。
あなたも学校や職場で、一度は経験があるのではないか。権威者である先生や経営者の意見に従い、多くの生徒や従業員が賛成している意見などに、従順に従ってしまう事である。それは、日常茶飯事の心理効果なのである。
下の映像は、アッシュの実験である。同調圧力に屈するかどうかを実験した内容であるが、実験を行わなくても、日頃から皆の意見に合わせている人であれば、当たり前の実験結果である。この実験から分かる事は「人は集団の圧力に弱く比較的容易に意見を合わせてしまう」という事である。
私たちは日々色々な圧力を受けて生活をしている。その最も圧力を受けやすいのが、同調圧力なのであって、ビジネスのシーンでも比較的多く取り入れられている。
影響力の武器において、テレビ局の録音笑いの有効性を説いている。たしかに大して面白くない説明においても、録音笑いで誘われて笑ってしまう事はないだろうか。また展示会や会議やテレビショッピングなどのサクラ、宗教活動による寄付行為におけるサクラの演出、小さなところでは、コンビニのレジ横に置かれている募金箱に少しのお金を入れておく行為なども社会的証明を上手く利用したビジネスの例である。
最近の事例としては、SNSにおいても「いいね」や「シェア」が一つもない場合と、何件か付いている場合とは、アクションの違いは大きく、記事を大して読まずに、タイトルとシェア数だけで「良い内容」と判断して、自分もソーシャル活動に参加するというケースも見られる。
これが著名人や著名サイトであれば、さらに多くの「いいね」や「シェア」がなされる事であろう。私のブログ程度では、大した「シェア」や「いいね」などは、数少ない知人程度なので、同調効果はほとんど見られないが、あなたも、人気サイトやブログなどでは一度は見たことがあるだろう。
個人的に経験した内容で言えば、洋酒の件について、良い経験が出来た事を本書に書かれている事例を参考に「影響力の武器」っぽい事柄を記しておく。
“レミーマルタン”バブル時の日本人が買い漁り 再び日の目を見た高級酒
さっそくオークファンで中古市場価格を調べていく。結構な額を付けているわけであるが、参照として【 Remy Martin Louis XIII:ブランデー 買取 レミーマルタン ルイ13世 高額洋酒 ブランデー買取計画を立ててみた 】を前回記したわけである。
個人的にこの洋酒は大変美味しいと感じた。あまり酒は飲めないのであるが、レミーマルタン ルイ13世は、別格の味であった。皆が欲しがるのは良く分かる。相場は、約15~16万円程度であれば、良いモデルと出会う事が出来るであろう。
と言っても大半は中国人が資産目的で購入しているようであるが、ここのあたりについては正直どのようなユーザーが買っているのか個々の企業によって相違してくるだろう。
レミーマルタンは、中古市場の洋酒の中で特に人気である。どの買取企業も洋酒を扱い出したわけであるが、そのどの企業も、広告を打ってでも、このキャビネットの中に眠る高級酒を狙っている。
バブル時代を謳歌した先代、先々代の親族においては、比較的多くの洋酒を保有していたこと、保有した洋酒を倉庫にも捨てずに保管しておいたこと、また仕事の関係上、頻繁に洋酒をプレゼントされていたこと、親族に医者や元地主が多数いた事もあり、洋酒やらブランド品などが多数眠っていた事から、このブログを書いている。
世に高級という洋酒は、ほとんど揃っているのが若干恐ろしいが、同調効果によって多くの日本人が、国内で高額で入手の困難さと旅行先での免税の名のもと、海外で購入した事から、古い洋酒が様々な家庭で眠っているのである。
相場データ参照:オークファン
セールスの現場でも心理効果を利用し、多くの人々が嵌め込まれている
本書では、この原理を使い狡猾な同調効果が用いられている事例を紹介している。社会的効果は、他の人が何をしているのかを知ろうとする傾向を皆が持つ事により、集合的無知と呼ばれる面白い事例も紹介している。つまり、大勢の傍観者がいるのに、助けを求めている犠牲者に誰も援助の手を差し伸べようとしないという効果である。誰かが助けるであろうとか、もうすでに誰かが助けを求めているかもしれないと無知な状況を作り出してしまうのである。
広告主やビジネスを仕掛ける側は、製品やサービスの「伸び率が最高」とか「一番の売れ行き」といった事を顧客である私たちに強調したがる事は古典的に使い尽くされた事例であろう。
あなたが買物をする際に見られる様々な店のポップなど「今が一番売れています」等、多くの売り文句を見る事が多いと思われる。店の人間(販売側)の「コレがオススメ」よりも「皆が買っている」事実をより信じるのである。
それがあなたにとって素晴らしいサービスや製品では決して無い (選択する基準や情報を持ち合わせていない) にも関わらず、なんとなく興味本位で買ってしまうわけである。ナイトクラブの経営者の事例では、繁盛店の法則のように真理が語られている。
つまりは、中に入れる余地があるのにも関わらず、入場制限をして店の外に長い行列を作らせる商売人はこの効果を上手く利用しているのである。さらに狡猾なのは、店のサイズをあえて小さくしたり、限定数量にしたりと希少性を上げる事でブランド力をでっち上げるという事例もある。
あるセールス・コンサルタントは、こうアドバイスする。自分で何を買うかを決められる人は全体のわずか5%、残りの95%は他人のやり方を真似する人たちであると指摘している。
社会的効果による同調圧力は、上記のバブル期の日本人が集団的無知な状態に陥ったのは、皆が同じお土産(洋酒)を買って帰るからと、我先に大して考えずに大金を叩き、大して飲酒されずに、長年キャビネットで後悔と共に放置してきた事実がある。
その同調効果が、今日の酒の大量買取・出品に繋がっているのである。それらの事例を踏まえながらも、本書を読んで勉強しても損ではない。