各社”鎬”を削って分断した市場でデファクトスタンダードを狙う
1970年代は35mm一眼レフの独壇場であったという。一眼レフはスタジオ以外の外で撮影するプロの写真家にとって主流の設計であり、汎用カメラを求めるアマチュアの多くが選ばれていたようである。
35mmフィルムは経済的であり、モノクロ・カラー・リバーサルといった多様な種類の乳剤が多くのメーカーから発売。
10年間で、シンプルな機械式から、露出計・電子シャッター・自動露出といった電子機能を多く組み込み、よりハイテク化が進んだ時代と言っても良い。
1974年までに、自動露出機能を備えた一眼レフカメラは、大きく2つの陣営に分かれた。
シャッター優先と絞り優先である。さらに詳しい内容は、【50の名機とアイテムで知る図説カメラの歴史】を参照して頂きたい。
シャッター優先とは、ユーザーがシャッター速度を設定すると、絞りを自動的に設定することである。その陣営は、キャノン・コニカ・ミランダ・ペトリ・リコー・トプコンなどのブランドなどである。
また、絞り優先とは、ユーザーが絞りを設定すると、シャッター速度を自動的に設定することであり、その陣営は、アサヒペンタックス・チノン・コシナ・フジカ・ミノルタ・ニッコールマット・ヤシカなどのブランドに分かれ、市場を二分していた。
どちらのアプローチが良いということではなく、企業の都合で決まっていたようである。
要は工業製品ゆえ、既存の機械設備に合わせやすいかでつくりが決まり、ユーザーは個人の好みで決めていたようである。
1977年、ミノルタがXD11で絞り・シャッター優先の両方のモードを搭載した最初の35mm一眼レフを市場に投入。
その後、それを見たキャノンは、PC化を主眼とし、プログラム自動露出を装備したキャノン”A-1″の市場投入の開発を急がせた。
キャノン”AE-1″:世界初の機能を搭載した モデルX を市場に投入
キャノンは当初手始めに、1974年1月、キャノンは100人の技術者を「モデルX」として知られていなかった新型カメラの開発市場に投入。
1976年4月、新型はキャノン”AE-1″という消費者向けの名称で市場に投入。キャノン”AE-1″は、当時新しいアプローチがいくつかとられた。
- 電子回路と光学系に先進技術を採用
- 製造工程のPC支援設計とオートメーション化、精密な加工と組立
- 自動露出機能を初めて装備した35mm一眼レフ
- CPU 制御によるシャッター優先の TTL 露出計を装備

カメラの自動化の新しいアプローチの先駆けとなり、当時最先端の名機として市場を驚かせたのである。
これは個人保有であるが、全体的な設計の煮詰めが若干甘いが、持ってみて非常に味のあるモデルであり、比較的現在でも気に入っている。
さっそくオークファンで、現在の取引価格を調べてみると、約16,000円~約27,000円までになるようである。
高いモノになると数万以上、安価なジャンク品で、数千円程度になるようである。保有しているのは、約16,000円~約20,000円程度になるようだ。
過去のカメラは安くなる一方だが、ブランド戦略の成否と稀少性を考えて保有しておけば、ある程度の価値は担保されるのがアンティークカメラの市場である。
キャノン”A-1″:大量生産による量産化を踏み出した”AE-1″の後継機
キャノン”A-1″は、”AE-1″の後継機として1980年代に市場に投入された。これは標準となるプログラム自動露出機能時代の先駆けとなったモデルである。
キャノン”A-1″は、5つの自動露出モードを備え、投入翌年、マイクロプロセッサの装備が追加、絞り優先とシャッター優先の両モードの使用が可能となった。
Aシリーズのプラットフォームは、他の製造において流用がなされ、コンパクトなアルミ合金シャーシとABSプラスティックパネルによる高級機に見える外装を有している。
一連のシリーズの主要部品の大半は流用され、コストが安価な横走り型布幕シャッターを用いていた事により、大量生産とコストダウンを両立できた。まさに儲かるモデルであった。

さっそくオークファンで、現在の取引価格を調べてみると、約19,000円~約22,000円までになるようである。
個人的にはこのモデルは保有していないが、事前に調べ相場を知ることで、良いモデルに出会った場合、どこまで予算を掛ける事ができるかを知ることができる。
キャノン”F-1″: A-1 の成功を元にプロ向けに市場投入された高機能モデル
キャノン”A-1″は、成功をおさめ、1985年まで製造される。手頃な価格、キャノンFDレンズシリーズとともに、アマチュアのファンの間に熱心な支持者を多く生んだ。
その成功をもとにプロ向けに市場に投入されたのが、より高機能なキャノン”F-1″モデルである。
より堅牢な外観、メカニカルなデザイン、持った瞬間に高機能なモデルと分かる。
これは個人保有であるが、状態も良くなかなか上手くまとまっている秀逸なモデルであり、キャノン”AE-1″、キャノン”A-1″をもとにより洗練された完成形に見えてしまうのである。

さっそくオークファンで、現在の取引価格を調べてみると、約19,000円~約22,000円までになるようである。これにオリンピック仕様、製造番号が希少モデルなどが、約 3 倍~ 5 倍の高額で取引されている。
所有しているのは、残念ながらプレミアの高額モデルではないが、それでもボディだけでも、高額に取引されているのは、比較的出回る数が少ないからである。
また一般のアマチュア市場ではなく、プロ向けの市場に投入されたことも、比較的高額に取引される要因である。これについては、プロ関係者から譲ってもらったことで、出会う確率を上げたのである。
自動露出の時代において勝ち組負け組の明暗がはっきりする
このような動きのなか、1980年代なかばまで、多くのブランドがプログラム自動露出機能を搭載していたが、キャノンの1981年のAE-1プログラム、1983年のT50などのモデルの市場投入を図り、他のブランドも多く、この機能を備えたモデルを市場に投入している。
コシナ、ミランダ、ゼニット、などのいくつかの低価格ブランド、ローライ、トプコンなど、新モデルを開発する技術や資金力のないブランドは、プログラムモデルを発売することはなかった。
市場投入しなかったブランドは、機械式や電子式からコンピューター式への変化が出来ず、この市場から撤退を余儀なくされる。ブランドの勝ち組負け組の明暗がはっきりしたのである。
取引価格の調査は、このように欲しいモデルがどのレベルでいくらで取引されているのか、事前に理解できるようになり、安心してオークションに参加できるというものである。
アンティークカメラの市場においては、過去のブランド戦略を知ることで、非常に大量に作られていた事、各ブランドが、過去には儲けていた事が分かり、開発に鎬を削るその結果が中古市場の価格で分かってしまう。
またアンティークカメラは、大量に出品されているので、過去の秀逸なモデル機種を安価に購入できる面白い市場である。
参考書籍