任天堂の知的財産戦略とは
知的財産権を様々なカタチで取り上げる当ブログですが、一言で知財といってもその使われ方は様々である。
そこで今回は、シャープと任天堂で行われた「奇妙な商標の権利関係」を取り上げてみたい。
さらに詳しい内容は【 へんな商標? 】を参照にしていただきたい。なかなか面白い着眼点で知識を少し違う視点で見ることができ、企業の知財担当者は通勤時間でも楽しく読める事ができます。
ただ私の場合、通勤時間に読んだので、ニヤニヤ笑いが止まらず、周辺の人から変な目で見られた次第である。
今回は、有名なゲーム機を次々に生み出し一代で大企業となり、”遊び方にパテントはない”という名言を生み出した有名経営者が率いた企業の後手の商標取得事例である。
上記と併読したのが下記であるが、合わせて読むとさらに面白かったわけです。
ファミコンを囲い込む シャープの商標防衛戦略
現時点での商標の権利内容
【商標】:ファミコン
【氏名又は名称】:シャープ株式会社
【登録番号】:第4089791号
【登録日】:平成9年(1997)12月5日
【出願日】:平成8年(1996)6月10日
【指定商品】電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気掃除機,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,電池,電線及びケーブル,配電用又は制御用の機械器具
現在はこの商標権のみ保有しているのみである。その他のファミコンは任天堂に権利をホールドされている。
事の発端は、1983年 7月「ファミコン」を任天堂が発売した時に遡ります。当時の任天堂では「ファミリーコンピューター」として名が通ると想定していたフシがあったようである。
商品の普通名称には、こうした略称や俗称が「商品識別力」を持つ場合があり、そしてソレが大ヒットするとちょっと困った事が起こります。
任天堂の「ファミコン」が商品識別力を大きく持つ前に、シャープは先んじて権利取得戦略をいち早く開始。
1979年にシャープは「ファミコン」というオーブンレンジを発売済であったことから焦りを感じた事だろう。
シャープは矢継ぎ早に「家庭用テレビゲームおもちゃ」に関する出願をはじめ、自社商品のオーブンレンジとは関係のないはずの「家具や台所用品」「医療機械器具」など周辺商品の商標出願を行い、権利関係をホールドする戦略を実施。
任天堂が自社ブランド戦略を進める上で、必ず商標をホールドする必要に迫られる事を読んだシャープもさすがである。
シャープとしては、任天堂からの自社ブランド商標を防衛しようと、周辺の権利をホールドして、次期開発商品を「ファミコンブランド」で投入する事で、戦略を実施するつもりであったかもしれない事を考える必要もあります。
当時の担当者の立場になって、様々な事を想定して考える事は勉強になります。
権利を押さえる事を余儀なくされたヒットの代償
内容の整理
- 1979年にシャープは「ファミコン」というオーブンレンジを発売済
- 1983年 7月「ファミコン」を任天堂が発売
- 1983年10月「ファミコン」の商標出願をシャープが行う
- 83~85年に掛け、シャープが想定商品の権利を矢継ぎ早にホールド
- 85年10月、任天堂はシャープから「ファミコン」の商標権を譲渡
- 85年以降、任天堂はシャープから順次他権利の移転を余儀なくされる
それ以後「ファミコン」の商標権を譲渡している事から買収金額が非常に気になるところ。多額の金額を引き出したのでれば、結果的に「買収してもらうための権利取得戦略」は有効という事になるようです。ちょっと面白いのがその後のシャープ製「ファミコン」の投入である。
ツインファミコン–Wiki:ツインファミコン (twin famicom) は、昭和61年(1986年)にシャープ株式会社が発売したファミリーコンピュータ互換機。任天堂が発売したオリジナルのファミリーコンピュータ本体とディスクシステムの機能を兼ね備え、ロムカセットとディスクカードの両方のゲームをプレイすることができる互換機。当時の価格は32,000円で、これはファミリーコンピュータ(14,800円)とディスクシステム(15,000円)の合計金額よりも高額だった。
最初の印象としては「えらい割高ですなぁ」と言うところである。メガ盛りセットで若干ノドごしを考えてしまいます。
また「ファミコン」に関して言うと、シャープは降って沸いた話である事も考えていく必要もありますので、どの企業がいつこの手の話が舞い込むか予想は付きませんが、最近では商品名が被らないように事前に調査をする事から、レアケースになりつつあります。
商標登録していないが、先使用しているその地方だけで馴染みとかで「商品識別力」がある場合は注意が必要になります。
インフラが整った現在の国内では考えにくい事例ですが、海外に自社商品を展開する場合、要注意になるかもしれませんね。
参照文献
へんなシリーズは、購入して非常に勉強になりおもしろかった書籍ですが、さらに面白い事例を深堀した”1.2 特集”的な書籍を投入して頂きたいところです。
参照商品
任天堂DSのソフトコレクションセットですが、子供の時にファミコンソフトをケースに収納した時に、コレクターの心境に至った経験を思い出す壮観なセットです。
ほかに筆記用具やら、お菓子のシールやら、ゲームや漫画やら、子供の時は結構コレクションするのに非常に忙しかった事を思い出します。
見せてくれた子供はもうDSに飽きたようで、3DSやスマートフォンのゲームにハマっているようです。世の流れは早いと思う瞬間でもあります。
商標登録の要件:商標法3条1項1号
第3条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。1.その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標