クリスタルキングを巡る内紛
知的財産権を様々なカタチで取り上げる当ブログですが、一言で知財といってもその使われ方は様々である。
今回は、ヒット曲を多数リリースし、長年ともに音楽活動をしてきた仲間によるグループ内での内紛劇を取り上げてみたい。
さらに詳しい内容は【 へんな商標?2 】を参照にしていただきたい。なかなか面白い着眼点で知識を少し違う視点で見ることができ、企業の知財担当者は通勤時間でも楽しく読める事ができます。
ただ私の場合、通勤時間に読んだので、ニヤニヤ笑いが止まらず、周辺の人から変な目で見られた次第である。
身内同然に何年も共に活動してきた仲間と争う悲しみ
クリスタルキングといえば「大都会」や「愛をとりもどせ」などのヒット曲を数々生み出した人気のバンド。
子供の頃より「良い歌を歌うなぁ」と非常に好意的にテレビやコンサート、CD(昔はレコードやテープ)を購入して身近に感じていたアーティスト同士の内輪でもめる事は見ていて心苦しいものである。
事件の内容と権利関係を見てみよう。
判例評釈 クリスタルキング事件
【商標】クリスタルキング
【権利者】株式会社クリスタルキングカンパニー
【登録日】平成15年(2003)1月31日
【出願日】平成10年(1998)7月3日
【指定商品又は指定役務】
映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,音楽の演奏,録音物及び映像物の企画制作,音楽の教授,楽器及び音響機材の貸与
クリスタルキングカンパニーのオーナーであり、アーティストという「経営と音楽活動」の分離をしていない所が非常に気になるところです。
- 吉崎氏が経営している会社が商標登録
- 吉崎氏が元メンバー田中氏が”元”をつけずに名前を使用したとして、使用禁止及び損害賠償等を求め地裁に提訴
- 東京地裁は吉崎氏の請求を棄却・敗訴
結果から言うと吉崎氏は敗訴しているが、その証拠たるや執念を感じるほどである。
- 発端となったコンサートの告知広告
- 10年以上前の「いいとも」や「ルックルックこんにちは」での田中氏のコメント
- その他ソロで出演したテレビ番組や録画及び雑誌の切抜等
- ソロコンサートのチラシ等
に至るまでその執拗なまでの証拠を挙げて提訴に及んだが、クリスタルキングに関する社会的地位を低下させるような事はないと地裁はこれを退けた。
経営者とアーティストの両立の難しさ
経営という一方で現実を片方で理想をアーティスト活動で披露する立場である限り、どうしてもエネルギーの分散が起きてしまう。個人的に思うが、経営とアートが並び立つには、ある程度の客観性と中立に近い分離が必要と思う。
一流どころと言われる欧州ブランドでも、経営と創作活動を並行で同じ人間が進める事に限界を感じ、分担を図っている事から、それが自然である。
権利を勝ち取る事で経営を安定して、長年のブランドの権利を自分だけのモノにしたい気持ちは分からないわけではないが、再び再結成してヒット曲を作るほうが、経済的にも社会的にも良いパフォーマンスを上げる事ができると思っている。
昔のイザコザを一度リセットして、もう一度皆でステージに立ってもらえる事が、ファンにとって喜ばしい事かと思います。
VHS_クリスタルキング_愛をとりもどせ!!~ユリア・・・永遠に.mpg
やはり「北斗の拳」を子供の時に観ていた印象が忘れられない事から「愛をとりもどせ」を押したい。好きだったバンドに内紛が起き、空中分解するのは辛いものである。早く仲を取り戻して頂きたいところである。
参照文献
へんなシリーズは、購入して非常に勉強になりおもしろかった書籍ですが、さらに面白い事例を深堀した”1.2 特集”的な書籍を投入して頂きたいところです。
参照:へんな商標?2
参照商品
最近読んだ「マンガ脳の鍛え方」は非常に面白い切り口の書籍である。少年ジャンプがいかに制作されるか、その作者の人々にインタビュー形式や考え方をまとめたコラム風の見せ方は、非常に読みやすく、どの作者からでも、読みやすくなっている。
いくつかの作者の思考法や物語のつくり方、現在描いているテーマなど、取り上げてみたいと思います。
参照:『週刊少年ジャンプ』40周年記念出版 マンガ脳の鍛えかた (愛蔵版コミックス)
差止請求権:商標法36条
商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。