Cartier/カルティエ:腕時計の歴史を拓いたリシュモングループの盟主
グランメゾン、カルティエの時計進出は、19世紀末に3代目のルイ・カルティエが経営参画した事からはじまる。1900年代に入り、ルイはエドモンド・ジャガー(ジャガー・ルクルト代表) と邂逅する。1904年に飛行家アルベルト・サントス=デュモンの依頼を受けて、世界初の男性用腕時計「サントス」を完成させたのである。1917年にはメゾンを代表するモデルでもある「タンク」も誕生した。メンズウォッチの歴史を切り拓いたカルティエは、2010年になって初の自社製自動巻きムーブメントを搭載した「カリブル ドゥ カルティエ」を世の男性に向けて開発。2012年にはメゾンを象徴する「タンク」の新型、今年はメゾン初のダイバーズウォッチを発表。リシュモングループの盟主として創造力豊かな開発を行っている。参照:腕時計の教科書
Cartier Pasha C GMT Ref.W31049M7 / Gerald Genta
【カルティエ パシャC メリディアン GMT ビッグデイト 基本仕様】
型番:W31049M7
素材:ステンレス/SS
ケースサイズ:約 35.0mm
ムーブメント:自動巻き
文字盤:ブラック
風防:サファイアクリスタル
防水:100m
機能:GMT/カレンダー
重量:約 112g
定価(当時):540,000円前後
安値で放置されている過去の秀逸な傑作を密かに収集している
カルティエブランドのなかで、定番人気を誇る「パシャ」シリーズをみていきたいと思う。フルライン化に近い同モデルにおいて、変わり種ともいえる「パシャC メリディアンビッグデイト」を取り上げておきたい。
より、女性的でドレス色の強い宝飾系腕時計としてのイメージが強い同モデルであるが、GMT 機能を装備し、華美な装飾を避け、スポーツ系モデルとして成立させたモデルである。

カルティエ パシャC メリディアンビッグデイト の国内中古相場はどうなっているのか。さっそくオークファンをみていこう。
国内中古価格で、上位価格については、リセールバリュー 約 30~40 %前後で販売されているようである。
大半が、約 200,000 円以下で取引されており、多くは約 180,000~190,000 円前後である。購入を考える場合、約 200,000 円前後で入手出来れば、最良なモデルを手に入れることが可能となる。
正規価格が当時 約 540,000 円前後と考えると、非常にリーズナブルに購入できる。

また、Aucfan Pro Plus で、同モデルのなかで「パシャ C 並びに パシャ 38 mm」のモデルと比較してみていこう。
一般から宝飾系ドレスまでカバーする「パシャ C と パシャ 38 mm」のちょうど中間的な位置で推移している。
実のところこの価格帯については、ブランド側のマーケティング戦略を長期的に行ってこなかったのが、現在の安値につながっていると思っている。
同モデルのベースムーブメントは、自動巻き 3 針ムーブメント ETA2892/A2 【リンク参照】に、24時間針とGMT機能を搭載して、ETA2893/2 とし、さらに自社製ビッグデイト機能を搭載している比較的特殊なモデルである。
ベースムーブメントが面白い仕様に仕上がり、なおかつ、企画面 ( GMT スポーツ ) がユニークであり、腕時計の世界では、世界的有名デザイナーが手掛けたモデルであって、廃番となって数も少ない稀少性の高いモデルなのだが、面白いことになぜか安値で放置されている。
個人的にではあるが、故障して安値で放置されているリーズナブルな パシャC メリディアン モデルを密かに収集を始めた。
ステンレス系の安いモデルの収集を通じて、過去にロレックスのスポーツ系が、大変安値で放置されている時に収集していた気持ちに戻れている。
安値で放置された古いロレックスなど面白い個体が出れば、収集していた若い時を思い出し、精神的に満足度は高い。
カルティエ パシャC メリディアン GMT ビッグデイト Ref.W31049M7
フォーマルからカジュアルまで 実用的でコストパフォーマンスが高いモデル
もはや、カルティエの定番人気モデルとして、一時代を築いたモデルとして名高い「パシャ」コレクション。
1930年代、マラケシュのパシャが、ルイ・カルティエに、水泳時にも動く宝飾防水時計を特別依頼されて作られたのが起源である。
また、1985年に誕生した パシャ ドュ カルティエ コレクション は、様々な機能や宝飾を施されたモデルを多数展開することになる。
パシャC GMT モデルは、1995年前後に、サイズとしては若干小さい「ミディアムクラス」の位置づけで登場し、当時一世風靡したモデルである。
もはや生産終了となってしまった「 サイズ 35mm メリディアン GMT ビッグデイト 」である。
メインモデルとなるパシャシリーズの標準サイズは、38 mmとなることが多いが、同モデルは一回り小さい 35 mmサイズとなり、サイズダウンが図られている。
現在多くの腕時計では、約 40 mmオーバーが主流であり、若干豪華さに欠けるという意見もある。
ただ、抜群のデザインセンスを有し、現在でもその優れたデザインの大きな変更はなく、丸型フォルムの代表的モデルとして高い人気を誇っている。
丸型デザインを強調するカタチで、さりげなくブレスとケースを繋ぐセンスの良いラグや同シリーズの特徴的なデザインであるリューズガードは、デザインコンセプトを上手く取り込んでいる。
サイズ感に関しては、日本人の標準男性であれば、十分使えるサイズであり、小さく見える文字盤も、そのデザインからあまり小さく見えない工夫が施されている。
ダイアル面には、地球の子午線と緯線がデザインされており、メリディアンとは子午線の意味である。
インデックスとベゼルには、特徴的なアラビア数字が使われており、しっかりとムードのある文字デザインとなっており、パシャのイメージを踏襲が出来ている。
インデックスにあるカレンダー表示は、ビックデイト仕様であり、剣針である 秒・時間 はシャープで、同じく GMT 針も装備し、2カ国の時間が分かる仕様となっており、全体的に視認性が高い。
ブレスに関しては、直線を基調とし、メカニカルで骨太な印象を与えるデザインを採用しており、そのケースの女性的な印象からは程遠い男性でも十分装着できる仕様となっている。
ユニセックス仕様であるが、ブレスが思いのほか骨太な為、男性用として考える方が良いだろう。
パシャは、全体的にクラシックテイストのデザインイメージが強いが、GMTモデルである同モデルは、よりメカニカルに、スタイリッシュに振られている。
カルティエパシャらしくないモデルと言えなくもないが、その高いデザイン性で、コンセプトの破綻は見られない。
なぜなら同モデルのデザインをした ジェラルド・ジェンタは、オーデマ・ピゲ の「ロイヤルオーク」や パテック・フィリップ 「ノーチラス」や カルティエ「パシャ」や IWC の「インジュニアSL ダ・ヴィンチ」や オメガ 「コンステレーション」や セイコー「クレドールファースト」や ブルガリ「ブルガリ・ブルガリ」など多くのブランドのデザインを行っている。
そのデザインの流れをうまく使い、パシャをフルライン化するカルティエのブラント戦略は流石と言える。
やはり、ジェラルド・ジェンタ は流石であり、オシャレな男性でもあまり選んでいる人が少ないが、過去の優れた名機に変わりなく、総合的にバランスのとれたヴィンテージモデルなのである。