中国需要を背景に高騰化が続くヴィンテージ・シャネルと中古市場の栄枯盛衰
シャネルと言えば、約10年ほど前から比べると、中古市場で大きく値上がりの歴史を辿ってきたブランドである。
その値上がり前の価格と言えば、並みのチェーンショルダーでは、数万円ほどで取引されてきていたが、現在では軽く約4倍の取引価格で売買されている。
数多くのブランドの中で、値上がりするブランドは数えるほどしか存在しないが、シャネルはその少数の中のブランドのひとつである。
一方でシャネルであれば何でも高いかと言われればそういうわけではなく、大半が取引されず、安値を付けられて取引されている事実も一方では存在している。
データを見て分かることだが、低迷していた時代、シャネル製品を乱造していた時代もあり、そのあたりに作られたモノは作りが酷いものも散見される。
またグローバル化以前、欧州や北米市場だけで勝負していた時代のモデルでは、アジアの気候と追わず、ある程度の年数が経ったものでは、劣化が起きやすく、状態が良いのが少ないのが現状である。
さらに中国の台頭でアジア市場を狙うシャネルのブランド戦略は成果を上げ、中国や東南アジアで人気となり、高級ブランドとしての地位を築く事にも成功を果たした。
一方でアジアの所得水準から比べると、高価格帯に位置し、ニセモノ市場が形成される結果となった。オークション市場も同様で特にニセモノも多くが取引されている。
現在は激減の一途を辿っているニセモノ市場なのだが、ホンモノを扱う市場では「歪な市場」が生まれる背景を作ることとなった。
それは中国で起こる。つまりは、ヴィンテージモデルを中心としたホンモノ価格の高騰化を生み、豊富な資金を背景に、最も近い市場である日本の中古市場に爆買いを生む結果となったわけである。
そうなると、あらゆるヴィンテージのシャネルが高騰、高騰したモデルを中国本国で高値で転売する転売市場を生み出し、日本の中古市場は荒れる事となった。
要は長年ゆっくりとした市場が、爆買いによって需要の先食いを起こし、参入業者が乱立、中古市場では買い取る商品が無くなり、販売すら出来ない業者が廃業を余儀なくされる結果となったわけである。
また本体側のブランド自体が、高騰する市場に「冷水を浴びせ」たわけである。つまりは、投入されるモデルから、中国市場で大幅に値下げを行い、転売市場の駆逐を行う施策を敷いたのも大きい。
それについては、【CHANEL】シャネル価格改定から見える”中国転売市場”封込におけるブランド戦略 を参照にしていただきたい。
いずれにしても、高騰する市場で、中古が売買される事は、本体側から見れば気持ちのいいものではない。つまり、新品を買ってもならなければ儲からないからだ。
そのような高騰の尖兵に立ったブランドが、今回紹介するシャネルである。その高騰を支える中でも、ちょっとマイナーだが地味に高い事や、ベーシックだが、価格は安定的に高いモデルを研究しておこう。
シャネル ヴィンテージ CCロゴ ウッド バニティ ケース
95年あたりのコレクションアイテム。元々レアなモデルであるが、若干値上がりして現在は落ち着いている。
木製で製作されたヴァニティ・バッグであり、プレゼントや洒落たアンティークショップのディスプレイ兼売り物などでも使われ、人気が高いモデルである。
一見普通の木製バッグであるが、シャネルのロゴが前面と背面に配されるだけで数十万の値段がつくこととなる。これがブランド力である。
もっとも高額な値段がついているのは、約 851,000円である。状態の良いモノで、約 720,000 円前後が平均買取価格として考える方が良いだろう。
これよりも安値であれば、普通の業者であり、販売する力はあまりないと考えられる。最も下の価格で、約 600,000 円台を付けなければ、取引する必要はない。
もちろんこれには、状態が加味されるが、クローゼットにおいていたもので、あまり使わず、傷や汚れがほとんどない事が条件である。シャネルの場合は状態の良さがモノを言う。
シャネル ストローラフィア デニムトップ ハンドバッグ ミント クロスボディバッグ/メッセンジャーバッグ
シャネル・ヴィンテージバーション「ストロー ラフィア デニムトップ ハンドバッグ ミント クロスボディバッグ/メッセンジャーバッグ」である。
ストローハット型の麦わら帽子モデルであり、ラフィアは、ヤシ科の植物繊維である。丈夫な素材で水にも強く夏の海などにピッタリである。
蓋トップに採用しているのはデニム素材である。なかなか面白い組み合わせである。まあカゴ状であるが、クロスボディバッグ/メッセンジャーバッグの部類で海外では紹介されている。
販売(落札)価格は約 300,000 円を超えている。これについてはかなり珍しい事と季節的な事もあり、時期を見て買取に出す事が大事である。
もっとも良い時期で状態の良いものであれば、約 263,000 円前後から上の買取価格であれば、とりあえず売りである。これについては、季節的要因が大きくなりそうなので、タイミングと程度の良い状態が、高価格が狙える。
シャネル チェーンショルダー クロコダイル バッグ
シャネル チェーンショルダー クロコダイル バッグである。基本パターンであるシャネルチェーンショルダーに今では希少なクロコダイルをあしらったモデル。
素材が高騰している事もあり、中古市場でもほとんど出回らない。出回らないが故、価格は高騰する。ちなみにクロコダイルだけでは、買取価格は高くならない。
ブランドネーム+素材である事が、買取価格上昇の条件である。約 30 年ほど前のバブル前夜、多くの人々が海外にてクロコダイル素材のカバンを注文したが、多くのブランドでは二束三文になっている。
価値があるのはシャネル・エルメス・ヴィトンあたりが上昇が見られるが、他はほぼ全滅である。シャネルの買取価格は、約 310,000 円前後から上下価格帯といったところである。
価格的には普通のレザーの価格帯とあまり変わらず、素材的プレミアは低い。素材的プレミアがもっとも付くのは、エルメスのケリーあたりが考えられる。
シャネル マトラッセ ラムスキン チェーンショルダー バッグ
シャネル マトラッセ ラムスキン チェーンショルダー バッグである。もはや不動のバッグである。
チェーンショルダーはシャネルの屋台骨を支える重要なマストアイテムである。シャネル高額買取という謳い文句の筆頭に挙げられるのがチェーンショルダーの事を指す。
チェーンショルダーについては、【Chanel】シャネル マトラッセ 相場分析 中古価格・売買 3つのポイントに譲るとして、昨今では中国では値下げ、その他では値上げを敢行することでニセモノ市場の撲滅と転売市場の抑制策が功を奏し、価格の急激な高騰は抑えられている。
約 400,000 円代のチェーンショルダーは、超美品クラス、または特別モデルの場合が多く、あまり考えない方が良いだろう。
ベーシックなモデルを考えると、約 300,000 円代であるが、これについては、未使用の比較的新作に近いモデルが相場である。使用され、状態の良いモデルで、約 300,000 円前半から約 200,000 円後半までとなる。
平均価格帯で考えると、下の買取価格は、約 180,000 円代、上の価格で約 250,000 円前後で考えていくと良いだろう。
もちろん約20年以上前のモデルで状態が悪い場合、数万円もつかない事がある。
チェーンショルダーについては、ロングセラーで売れているがゆえに、相場らしい相場は、その年代、使用の有無、状態、付属品などあらゆる条件が加味されるので、相見積もりを出す事が賢明であろう。
シャネルブランドという”思想を買う人々”にもたらす神通力
シャネルブランドは、比較的どんなモデルでも、高額に売れてしまうのがシャネルブランドの強みである。
例えば、他のブランドが、同じような新商品を投入することになったとしたら、ほぼ同額に高額に商品を投入することは大半のブランドができない。
仮に当初に差別化を図り、他社よりも高額に商品を投入したとしても、ブランド力がなければ、早期にモデルが廃盤となる可能性が高い。
ゆえにブランドを保有するということは、商品モデルを高価格で長期間投入し続ける事のできる優れたチカラなのである。
また、ブランド力が比較的高い他のブランドも、多くのモデルを投入しては廃盤になることも多い市場である。
その中で高額な価格をつけることが可能なブランドになれば、トートであろうとポシェットであろうと、高価格をつけてビジネスをすすめる事ができるのである。
つまり私たちがブランドを保有が出来てしまえば、お金を掛けて捨てる産廃ではなく、売却が可能な資産となるのである。
ゆえに男性であろうと、女性向けブランドであっても、資産を見る視点を持って、ある程度の相場観は、知っておく事が重要なのである。
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