シンプロ・フィラーペン・カンパニーとして創業、モンブランとなるまで
モンブランの創業は1914年になるのだが、すでにハンブルクの文房具店の主人と銀行家、ベルリン出身の技術者によって1906年に始まっていたという。2年後、クラウス・ヨハネス・フォスが参加、「シンプロ・フィラーペン・カンパニー」を設立。後、クリスチャン・ラウゼンとヴィルヘルム・ジャンボアが参画。この3人が事実上の創業者と言われる。社名がモンブランになったのは、1914年。その 3年前、あるカードゲームの席で「黒い地肌に万年雪を頂くモンブラン山こそ我々の万年筆にふさわしい」という意見がかわされたのが理由だと言われる。その名前が商標登録され、社名となる。同時期、白玉キャップヘッドがホワイトスターに改められた。

積極的なプロモーション戦略を展開、その効果からモンブランを愛した王室や著名人も多い
1920年代のモンブランは、かなり大々的なプロモーション活動を行っている。モンブランのモデルを乗せたクルマやモンブランの飛行機などが欧州中を飛び回るなど、ユニークな宣伝活動が行われる。ジョン・F・ケネディ大統領も、一時モンブランを使っていたようである。またエリザベス女王もモンブランの愛用者のひとりである。エリザベス女王を含め、各国の国王や大統領などが批准書にサインする場合、しばしばモンブランが登場する。そして1924年、遂にモンブランの代表的な製品であり、最も有名なモデル「マイスターシュテュック」が誕生する。最初のマイスターシュテュックは、黒のセーフティーフィラーで18金ペン先だった。ペン先には、「モンブラン マイスターシュテュック」文字と、モンブランの山の標高を表す「4810」が刻まれていた。
高額モデルに人気が集中リセールは比較的低いがオールドモデルは愛好家の間で安価だが活況に取引される
【引用】 リシュモンによる買収後、新たに就任した社長が、「わが社の筆記具は実用品ではなく装飾品だ」と ドイツの万年筆雑誌のパーティーで述べるなど企業戦略を大きく転換した。近年の筆記具の品質の低下について、一部の長年の愛好家や販売店から批判の声が出ている。
参照: wiki モンブラン

さっそくオークファンで取引状況を見ていこう。高額モデルによる取引は活況である。これだけの価格が万年筆につくブランドはモンブラン以外あまり見られないが、その価格の割にリセールは高くはない。リセールにおける市場価格は、人為的に取引が作られた場合を除き、現状のブランド価格として考える方が良いだろう。約50万円以下が多く、良質なモデルを狙う場合、このあたりの予算帯で攻めるべきだろう。また自ら調整が出来る人は、約5万円までのモデルの取引も盛況である。長年愛してきた古いモデルは、その当時のまま使える事も多く、調整が可能な方は、比較的安価にオークションで手にれる事が出来る。多く出回っているので、安価なモンブランは比較的手に入れやすいブランドである。
ドイツが生んだ世界の最高傑作マイスターシュテュック
マイスターシュテュックの万年筆ほど、ファンにとって心ときめくモノはないだろう。人気のモデルであるマイスターシュテュックの中でとくに149と146の人気が高いようである。このモデルは、作家やエッセイストといった執筆業のなかに愛用者が多い。理由は、プラスチック樹脂製の太くて、バランスのとれた胴軸にある。軽く握るだけで、滑るように書けるため、長時間使っても、疲れないというのが人気の秘密である。職人の手によって150工程かけて作られているという。大きなペン先が衝撃を吸収し、腰が柔く書きやすいと評される。

マイスターシュテュックの名前が刻まれた3連のゴールドリング、キャップヘッドのホワイトスター、そしてペン先に刻まれたモンブランの山の標高を表す「4810」の数字。この三つが、常に最高の品質を追求してきたモンブランの最高傑作を意味するトレードマークとなっている。
限定によるコレクターズモデルの投入、高級な装飾品としてラグジュアリー戦略に舵をきる
モンブランは1992年以来「パトロン・シリーズ」と「作家シリーズ」という2種類の限定モデルを毎年発表してきた。ともにクラシックなデザインで、コレクターズ・アイテムとしても人気が高い。前者は、芸術や文化の発展に貢献した人物に敬意を表し、その名を冠した限定品を発表している。後者は、過去の偉大な作家に敬意を表し、特別にデザインされた限定モデルである。

1992年からリリースされている「作家シリーズ」は過去にヘミングウェイやアガサ・クリスティーなどが登場、数々の作家を起用する事でブランド価値向上に役立っている。また「パトロン・シリーズ」は芸術と文化支援に情熱を注いだアンドリュー・カーネギーモデルもなかなか良いデザインである。カーネギーが愛したアール・ヌーボーの官能的でエレガントな装飾は印象的である。キャップとボディには、繊細な手彫りのシルバー製レリーフが施されている。プラチナ装飾の18金ペン先の搭載が多く、贅沢な仕様となっている。両シリーズとも世界限定本数を決め、希少性を高める戦略を展開している。
個人的には意外とシャーペンとボールペンは愛用している
万年筆を使う事が少なくなってきた背景は、その手間と時間、メンテナンスの煩雑さである。昔の羽ペンから比べると格段の進歩と発明であるが、現在では大半の人が使わなくなってしまった。個人的に言うと、シャーペンとボールペンは愛用しているが、非常に使いやすく、いまだに現役で滑らかに仕事をこなしてくれる。購入したのは、もう約30年以上前になるが、さすがにブランドチェンジを行おうとかと思うわけだが、様々なブランドを使用しているが、モンブラン以外にしっくりとくるブランドはいまのところ現れていない。だが機能の面で言えば、現在の日本のブランドの方が良いだろう。これらも仕事でよく使うが、家で書物をする場合は、比較的モンブランの出番が多く、重宝しているのが実情である。

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書籍参照:趣味のドイツ・ブランド―日本で買える趣味のドイツ製品50ブランドの完全カタログ (ラピタ・ムック)
The Montblanc Meisterstück Diamond Fountain Pen
How to take care of your Montblanc Fountain Pen
Montblanc Meisterstück – The Art of Writing
リシュモングループ下で新しいモンブランブランドの構築が行われる
長年、高品質な筆記具を製造し続けてきたが、80年代 ダンヒルに買収され、93年 ダンヒルがリシュモングループに買収され、リシュモンの傘下となる。リシュモンの傘下となってからは、ラグジュアリー戦略が取られ、高級筆記具以外のモデルを順次市場に投入され、筆記具は非中核ビジネスという位置づけにまで追いやられてしまう。
時計、フレグランス、革製品などリシュモンのブランド戦略はあたり、2013年度の売上高の6割弱は、腕時計、フレグランス、革製品などが占めるようになる。リシュモンとしては、筆記具をブランドチェンジして、腕時計や革製品に注力したいようであり、長年愛されてきた安価な入門モデルを廃止して、高額モデルに集中している。
これは時代の流れであり、万年筆のような筆記具がとくに必要とされなくなった事も大きく、他のモデルで利益をカバーするのはある意味致し方ないだろう。それでも高級筆記具といえばモンブランである。